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ネイチュの詩(詩)・その1  作者: ネイチュ
77/101

77.「伝言」、「夜」、「シメール」

「伝言」


「正午にいつも場所で」

 と書かれた初めてのメモを

 ずっと財布に入れている

 あなたの手書きのメモは

 全部 箱に入れて取ってある

 ずっと隠していたのに

 ある時 箱を開けたら

「ありがとう」

 と書いたメモがあった

 文字が滲んで見えた


 ーーー


「夜」


 夜の都会をドライブして

 立ち寄ったいつもの喫茶店

 薄暗い店内で

 ザッハトルテとウィンナーコーヒーを頼めば

 自分が何者なのか分からなくなる


 ーーー


「シメール」


 放課後でも授業中でも

 ノートにイラストや小説を書いていた

 親友の描くマンガは 

 繊細な絵と人物、物語が忘れがたく

 当人が「手慰みだから捨てる」と言うのを説得し

 なんとか譲ってもらった

 今宵、久しぶりに読み返すと

 思ったよりも沢山のシリーズがあったため

 本当は彼女も気に入って描いていたんだろう

 褪せぬ愛情を青春とともに思い出した


 大人になって偶然 街で出合ったとき

 私は彼と一緒だった

 なんとなくよそよそしい態度の彼女に

 傷つく感じがしたので

 彼の陰から話をした

 それが逆に彼女を傷つけたようだ

 あとから彼女が失恋したばかりだったと聞いた


 それきり 彼女とは会っていない

 私がもう彼女を傷つける存在に

 なってしまったのだろう

 年賀状も途絶えた

 ふたつに切れた無地のルーズリーフに

 描かれたマンガ

 繊細な彼女の気持ちが手元に残っている



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