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ネイチュの詩(詩)・その1  作者: ネイチュ
69/101

69.「蓋を開くもの」、「性(さが)」、「遥か彼方」

「蓋を開くもの」


 荒野は日照りでひび割れていたから

 おれたちギャングの心も干上がっていた


 誰かが死んだとき

 おれたちの心にあるのは怒りで

 悲しみではなかった


 怒りは何かにぶつけられたが

 悲しみはそういう訳にはいかない


 厄介な感情に蓋をして生きるのは

 賢い生き方だ


 だが ボスが仲間にいれている

 銃も持てないような弱虫の少年は

 何かにつけて泣いては

 仲間をいらつかせている


 ボスはあいつをそばに置くことで

 悲しみの蓋を開けたいと

 願っているんだろうか


 雨が降ってきた


 ーーー


(さが)


 貴女を愛し

 貴女を守り

 貴女を裏切って生きてきた


 貴女を恐れ

 貴女を拒み

 貴女を過去に置き去りにしてきた


 寄り添う幻を消すために荒野を行く

 語るものなき伝説を作る


 眠れぬ夜に咲く花

 手を伸ばす哀しい性


 触れられぬ花びらが落ちれば

 月が揺れる水面に映る影


 ーーー


「遥か彼方」


 消えない異国の匂いがもたらす予感

 その両腕は私をかの地へ連れ去ろうとする

 私は弟を呼ぶ

 弟は返事をしない

 光の当たる場所には

 一輪のバラが置かれている


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