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66.「人生」、「コスモス」、「噂」
「人生」
人生を宿命だと思っていた
時間がすぎるほど
変えられない過去が積まれていく
それを闇と感じていた
だが 目を凝らしてみると
小さな星のようにきらめいた瞬間が
確かにあった
路傍に咲いたすみれを見つけたとき
ウィーンでクリムトを見たとき
心が震えたとき
その体験が星になる
その星を貯めていくことが
人生なのだ
ーーー
「コスモス」
直線の道の両脇でコスモスが揺れる
きみが唇を噛むからアクセルを踏み込んだ
彼女を取り合う仲だけれど
卑怯な真似はしたくない
だから パンクした自転車を押すきみを
見過ごすことはできなかった
負い目に思うかい?
誰のせいでもないよ
ーーー
「噂」
噂なんて信じていなかったけれど
あなたは私の瞳を見ようとしない
落ち葉が積もる公園で足を止めた
暮れていく空が恋の終わりを告げる
ねえ 今度の人と別れたりしないで
私と同じ悲しみを味わわせないで
私のことは忘れていいから




