57.「君が好き」、「ふたりの道」、「不実」
「君が好き」
きみが好きなものは何?
花の香りのする春の風?
日差しが眩しい夏の空?
燦々とした秋の海?
それとも雪に静まる冬の街?
きみが好きなものは何?
きみの好きなものが知りたい
きみを知りたい
狂おしいこの気持ちに応えて
ーーー
「ふたりの道」
車は初秋の高原を走っていく
開けた窓からは涼しい風が舞い込む
助手席で はしゃぐきみを
見れない悲しきドライバー
立ち寄ったカフェはまるで貸し切りさ
季節はずれのソフトクリームを
食べるきみは満足そう
ぼくは向かいの席で
コーヒーをゆっくり飲むよ
奇跡さ こうしてきみと過ごしている
何気ない時間だって
あとから黄金の思い出になるんだ
走り出した車は
ススキを分けるゆるい坂道を下る
うねる金の海だね
これからもふたりは一緒に
心を震わせていこう
この道は未来に続いている
ーーー
「不実」
そんな大事な言葉をきみは誰にでも言うの
信じてきたぼくが道化師なのかい
初めてきみが見せた眼差し
ぼくの足元が音を立てて崩れた
別れの言葉さえその唇は告げずに
ぼくをただ無言で立ち去らせようとする
計算どおりかい 満足したかい
これからもきみは
タロットカードをめくるように
男たちの運命をもてあそんで楽しむ
さよなら 哀しい人
さよなら 寂しい人
もう 二度と会わない人




