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第11話 意外な闖入者

 まずじっとしていても、結論は出ない。再捜索だ。今度は二水に曽祖父の書斎、僕は土蔵を捜すことにした。こちらは望み薄だ。重たい二重扉の蔵は江戸時代のものだが、秀平家自身が由緒ある家らしく、曽祖父も(はばか)ってあまり自身もここへは立ち入らないようにしていた。

 それでも几帳面に、当時の手紙のやりとりなどもちゃんと遺してある。秀平の跡取りになるはずだった曾祖母の兄が死に、相続手続きなどの一切を、曾祖父がやったそうな。

 当時の曽祖父は、旧姓だ。岸天馬(きしてんま)、戦死した秀平家の跡取りだった人は関東軍だったと言うことだが(謄本記録では戦死の報告がなされている)、もしかしたら本当は当時の馬賊仲間だったのかも知れない。

(もしかしたら、他にも馬賊仲間がこの町にいたのか…?)

 ふと黒崎さんのお祖父さんが思い浮かんだが、いやまさかそんな偶然あるはずはない。僕が手紙の箱を戻そうとした時だ。棚の奥にあった楽器のケースのようなものが、僕の目についた。黒い革張りの、見たこともないものだ。僕は思わず手を伸ばして、それを引きずり出した。

 見れば見るほど不思議だった。ここにあるものはどれも古臭い綿埃(わたぼこり)を被っているのだが、それだけ奇妙に真新しい。しかも小さな鍵穴付のケースには鍵が掛かっていなかった。中身は空っぽだったが確かに拳銃を入れようと思えば、入れられるサイズではあった。そしてもう一つ、驚くべきことがあった。

 ケースを引きだした拍子についたのか、僕の手のひらに一筋、髪の毛が引っかかっていたのだ。とってみると、やたらと長い。キューティクルのある若い女性の黒髪に見えた。

(この家に、若い女の人はいないぞ…?)

 二水の毛は、こんなに長くはない。あいつ以外に、若い女性がここへ入ったことなど、皆無に違いない。そのはずなのに。

「ひゃっ!ひゃっ、ひゃああああ!何するですかあっ?」

 悲鳴が上がった。二水の声だ。僕は手近にあったスコップを掴むと、息せき切って外に出た。髪の長い女と、二水が揉み合っている。その手に握られたものを見て、僕は心臓が止まりそうになった。黒光りする自動拳銃。まさにあの手提からなくなった、モーゼルC九六だ。

「やめろッ!」

 柔道をやった経験が、どうにか役に立った。お腹に力を入れて一喝、その大声で振り向いた女の銃を持った方の手首をひねり上げ、僕は体重をかけて組み伏せた。

「二水、銃を持って離れるんだ!」

 女が取り落した銃を、二水に拾わせる。僕は根気よく力を加減して、相手が冷静になるのを待った。向こうもパニックを起こしたのか、獣のように、荒い息を吐きながら、金切声で必死に叫んでいる。

「どいてッ…お願いッ…邪魔しないでっ!邪魔しないでよッ!」

(誰だ…?)

 不思議に、聞いたことのある声だった。

(えっ)

 どうにかこっちも冷静になろうと気を落ちつけながら僕は長い髪に覆われたその風貌を、確かめた。

「黒崎さんッ…!?」

 まさか彼女だと分かって僕は一瞬、力が抜けそうになった。


 さすがに警察沙汰には、出来なかった。僕は、武下さんに来てもらった。先生を通して、詳しい事情を聴いてもらうのだ。

「あの家に拳銃があることは、知っていました」

 まだ顔は泣き腫らしていたが黒崎さんは、あっさりとそれを認めた。僕たちの話を聞き、車で尾行してきたのだと言う。

「最初からあの銃が欲しかったので、秀平さんたちに接触しました」

「なんでまた、こんな拳銃なんか手に入れようとしたんですか…」

 その問いに、黒崎さんはえづきそうになりながら答えた。

「自分の身を、守るためです」


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