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夢道の世界  作者: ジニー
第1章 夢の始まり
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1ー7 「ランドベルで①」

慎二達はとりあえず、森で知り合った集団の住む村へと向かうべく、彼らに同行していた

「言葉……、通じましたね。」

桜が呟いた。

「通じるっていうか、なんか僕達、いつもと話している言語………違くない?」

「え?………あ!」

桜は気付き、口を手で抑えた。

「確かに言われてみればそうですね。ここに来る時、「あの人」がここの言語を分かるようにしてくれたのですかね?」

「多分そうだと思う。」

「………それより、良くあの人達と話を合わせられましたね。」

「あ、ああ。その事なんだけど……」

慎二は、自分の頭に「ジャミル」という少年の記憶が流れて来た事を、桜に話した。

「……え?それ、どういう事ですか?」

桜は言っている意味が分からず首を傾げた。

「分からない。でも、その記憶のおかげで会話を合わせる事が出来たんだ。……それに相手も、僕の事をその「ジャミル」って人と勘違いしていたみたいだし。」

「へ、変な話ですね……?」

「だよね。」

すると、前を歩いていた少年、「ダク」がこちらを振り返った。

「おい、ジャミル。」

「な、何?」

「明後日、村の集会所で俺達の送迎会やるみたいだから、ちゃんと来いよ?」

「送迎会?何の?」

「はあ?お前冗談だろ!?」

ダクは驚愕のあまり足を止めた。

「明後日、俺達16才の【巣立ち】だろ!?」

「【巣立ち】?……あ〜、そうか!そうだった!うっかりしてたよ!はははっ!」

慎二は笑って誤魔化すと、

「しっかりしろよなー?お前、あんなに昔から「外の世界を見てみたい、冒険に出たい」って散々言ってたのに、もうそんなのよくなったのか?」

「まさか。逆に昔より強くなってるよ。もう楽しみで仕方ないさ!」

「だよな?俺もどきどきが止まらないぜ!」

ダクも笑みを浮かべた。

それを見た慎二は心の中で安堵の息をついた。



しばらくすると茂みから出て、砂利で舗装された道を歩いていた。奥を見ると、家屋や畑などが奥に見えた。

「あれ……ですかね?」

「うん、あれだね。」

「旅人さん、そう言えば俺とジャミルくらいの年ですね?巣立って旅に出たばかりでしょうか?」

「すだって?ああ、えっと〜」

健二は分からず、返答に困っていた。

ツンツン

健二は、膝で慎二を呼んだ。

(おい、慎二。スダッテってなんだ?)

小声で聞いた。

(村によって様々だけど、僕らくらいの年になると親から離れて自分の好きな事が出来るようになるんだ。それをこの世界では「巣立つ」っていうらしいよ。)

なるほど、と健二は納得した。

「ジャミル、どうした?」

「い、いや。何でもないよ。」

慎二は言い終わるとそっぽを向いた。

「そ、そうです。俺ら、巣立った(?)ばかりだから良く分からなくて、もう大変で……」

「そうか、やっぱり村の外に出ると苦労が多いんだな、ジャミル?」

「そ、そうだね………。」

「と、行ってるうちに着いたな。旅の方々、ここが【イースト・ビギニング】の外れにある俺たちの村、【ランドベル】です。」


ランドベル

高々な山岳に囲まれたそこは、民家や畑などが広がる、いかにも「村」という感じである。



「じゃあダク、ジャミル。俺達は役場に報告に行ってくるから、お前達はここで解散だ。」

「分かりました、おやっさん!」

ダクは村役場に向かう大人達に手を振った。

「さてまだ昼過ぎですが、旅人さん達は、今日この村に留まりますか?」

健二、桜、真琴の3人は目を合わせ、ダクに向き直った。

「あのー……。」

「はい、何でしょう。」

「私達の事は「旅人さん」じゃなくて名前で呼んでほしいな〜。私は真琴。呼びにくかったら呼びやすいように呼んでいいよ。それで、私の右にいるのが健二で、左が桜ね。」

「は、はあ。分かりました。」

「俺ら同年代なんだし、敬語もやめようぜ?」

「そうですね。……って、私は普段から敬語なのでで変わりませんが・・・。」

「あ、おう!3人共よろしくな。……それで、健二達は宿屋で泊まるのか?」

「そ、そうだな〜……。」

健二が腕を組んで、考え始めた。

「……もしかして、泊まる金が無いとか。」

その事で、桜は首を振った。

「いや、そういう事ではないんですけどね?何というか、その・・・」

「うーん。俺ん家は鍛冶場だから狭苦しいしな……。」

そこで、慎二は手を挙げた。

「それじゃあ、僕の家なら何とかなるかも。部屋も何室か空いてるし。」

ダクがその意見に手を叩いて賛成した。

「そうだな。お前が構わないなら泊めてやれよ。もうすぐ俺達出てくんだし、あそこ空き家にするんだろ?」

「うん、そうだと思う。」

「じゃ、俺達はそうさせてもらおうかな。……じゃあ、しん………じゃなくてジャミル、いきなりで悪いが、よろしくな?」

「……分かった。」

4人にしては何とも違和感のある会話である。

「じゃあ、俺帰るわ。夕飯時になったら店に健二達も連れて来いよ?」

「分かってるよ、また後で。……じゃあ、行こうか、健二君……。」

「お、お世話になりまーす…………。」

4人は複雑な心境で、ジャミルの家へと向かった。



家は3階建てと、そこそこの大きさだった。

慎二はドアを開けた。

「お邪魔します……じゃなくてただいま?……あ、空き部屋見てくるね〜。あははー……。」

慎二は階段で2階へ上がっていった。

「あー……。俺、調子狂って来た。」

先程から慎二の1つ1つの戸惑い具合に、健二は肩を落とした。

「私も。なんか知らない人と一緒に歩いているみたいな感じ〜。」

「村に来れたのは北野君のおかげなんですから、新谷君も真琴さんもそんな事言わないでください。」

「ま、そうだけどよ〜……。」

「そういう事です。」

桜が頑としてフォローしていると、慎二が

「に、荷物だけど、部屋に置いていいよ。……待って、良いのかな?勝手に部屋使っちゃって。」

慎二は、北野 慎二としての心にジャミルとしての記憶がぶつかり、頭がごちゃごちゃになってるらしかった。

「……確かにそういう事だな。」

健二がため息をついた。



2階の部屋に荷物を置き終わった健二達は、1階に降りて来ていた。

「それはそれとしてさ、これからどうするよ。」

健二が椅子に腰を下ろして言った。

「何もやる事ないよ〜、暇だよ〜。」

真琴がテーブルをバタバタ叩いていた。

「桜、慎二はどうした?」

「北野君はまだジャミルさんの部屋にいるみたいです。ちょっと呼んできますね。」

桜は2階に上がって、慎二のいる部屋の扉を3回ノックした。

「北野君。みんな待っていま……」

桜がそう言いかけた時、

「うわっ!」

部屋で慎二の叫び声が聞こえた。

「っ!北野君!?」

その声を聞いた桜は、思わずドアノブを回して、部屋に駆け込んだ。

すると、大きな本棚が桜の前にゆっくりと倒れてきていた。

「え!?あっちょっと!きゃっ!」

「危ない!」

すかさず慎二が倒れる本棚を受け止めた。その拍子で、棚からは多くの本が抜け出し、床にゴトゴトと落ちる。

「ふー……。間に合った。」

「な……、どうしたんですか北野君!?」

「この世界の地図なんかがあるかなって思って、本棚の中を探してたんだ。」

慎二は落ちた本を拾いながら言った。

「それで棚の1番上にそれらしき物を見つけたから、引っ張り出そうとしたんだけど………」

「棚ごと動いたわけですか?」

「そうだね。……ごめん。」

「いえ、私も家でよくそういう事になるので、こういうのは馴れてます。」

「そうなんだ。……あ、多分これこれ。」

慎二は落ちていた1冊の本を手に取った。

「見つかりましたか。では下に戻りましょ………、きゃあ!」

「え!?どわっ!」

ドアに向かって振り返ろうとした拍子に、落ちていた本で、桜が足を滑らせた。

そして、本に夢中で無防備だった慎二にぶつかり、ドミノの様に、2人は床に倒れ込んだ。

「いたたた………」

「・・・桜、怪我はない?」

「はい、大丈夫です……。」

「今日は散々だね、僕達……。」

「はい。全くです………。」

すると廊下から、バタバタと走る音が聞こえた。

「ちょっとちょっと!すっごい大きな音聞こえたけど大丈夫!?」

「おい!慎二、桜。大丈夫か!?」

慌てた様子の健二と真琴が、すごい勢いで部屋に飛び込んで来た。すると、


「「え?」」


入って来た2人は、目を丸くして、「何してるの?」という感じでこちらを見た。

「桜……、そろそろ体を起こしてくれると嬉しいんだけど・・・。」

「はい?………て、はわぁ!?」

桜は今自分が慎二に乗っかかって寝ていた事に気がつき、バッタの様に飛び上がって離れた。

「ご、ごめんなさい!!わ、私っ、そんな事になっていたの気が付かなくて……!」

「いや、怪我がないなら良いよ。」

「は、はい………。」

桜は顔を、真っ赤にしてもじもじしていた。

「おふたりさんははここでなーにしてたの?」

真琴が意地悪そうな目でニヤニヤしていた。

「いや、ただ転んだだけだけど。」

慎二は冷静に答えた。

「まあ、俺は2人が昔からそういう関係だと思ってたけどよ。」

何故か得意げな健二。

「じゃあ下で待ってるからごゆっくり〜。」

健二と真琴は口笛を吹いて、下に戻っていった。

「そういう関係?ごゆっくり?2人共、何言ってるか分からないんだけどー?ほら桜、行くよ?」

慎二も地図を持って部屋を出て、下へと降りた。

「………。…ふー………。ふっ!」

1人部屋に残った桜は、深呼吸をして、頰を両手でパチンと叩いた。

「し、しっかりしなきゃ……!」

桜は気持ちを落ち着けながらも、冷め切らない頰を気にしながら、1階へと下る。


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