1ー5 「決意」
「なぞの声」は、4人が静かになった所でまた話し出した。
《よし、では話そう。あの時、お前達がいた家に高レベルな雷が落ちた。私がお前達をあの空間から連れ出した。》
4人の頭には「?」が浮かび、首を傾げた。
「あの空間?ど、どゆこと??」
1番ついてこれないのは真琴である。
《ああ、ここはお前達がいた世界とは違う。そして、あの高レベルな落雷は、失われたはずの【過去の世界】とお前達の世界がつながった。あの石の封印が解かれた事によって起きたものだ。》
「石……って、まさか………!」
慎二は心当たりがあり、横の3人から目をそらす。
《あの石は外界と遮断するように保管されていたはずだ。だが、多分何かの拍子に外に出てしまったのだろう。》
「そ、それは………」
「ん、どうした慎二?」
「い、いや。……なんでもないよ…。」
「そうか。」
俯く慎二に、健二が反応した。
桜は腕を組んでしばらく考え込むと、意見をまとめたようで口を開いた。
「それは要するに、あなたは私達を逃がしてくれたわけですね。」
《む………。》
「なぞの声」の声が籠もった。
「え、違うんですか?」
《………それはお前達の想像に任せる。》
「「「「………………。」」」」
完全に照れている。
4人は思ったが、誰も口には出さなかった。
しばらくすると、再び声が聞こえた。
《それでだ。1つ大事な事を話したい。》
「大事な事?」
《ああ。………お前達をあの世界から出した時、またすぐに戻してやろうと思ったのだが……》
「声」は少し間を開けた。そして、
《戻せなかった。あの世界に、あの時代にだ………。》
「「「「……………え?」」」」
重要な事を口にした。
「ちょ、ちょっと待てよ!?て事はつまり……つ!」
「私達、帰れないんですか!?」
「もう私の大好きなスパゲッティ、食べれなくなっちゃうよ〜!!」
「「「嘆く所そこ(なの・かよ・ですか)!?」」」
《……残念ながら、戻れる可能性は低い。》
草原は沈黙に包まれた。
《そこでだ。私に1つ提案がある。》
「提案?」
《ああ、元の世界に戻る為の唯一の方法だ。今戻れなくなっている原因が、過去の世界とお前達の住んでいた世界がなんらかの理由で衝突し、時空が歪んでしまったからなのだ。その歪みの影響で、過去の唯一の遺物であるあの石を座標として、お前達の所に魔力由来の大規模な落雷が発生した。そして、その雷の影響からか、1度あの世界から連れ出した人間を、元いた世界に戻す事が出来なくなってしまったのだ。》
「そんな、無茶苦茶な……。」
4人は彼の言葉に唖然とする。
《………だから、元いた世界で無ければ良い。》
「……え?どういう事ですか?」
桜が問う。
《お前達がそのもう1つの【過去の世界】に行き、時空の歪みを探してもらう。時空の歪みが見つかれば、そこから元の世界に帰れる………かもしれない。》
「ちょっ!まだ帰れる方法残ってるじゃんか〜!」
「そうですね!帰れますよ!」
「スパゲッティ、スパゲッティ!!」
桜、健二、真琴の3人はそれぞれ喜びの声を挙げた。
「それで?」
しかし、慎二は浮かない顔をしていた。
「それはどこにあるの?」
《私にも詳しい事は分からんが、大体の座標は把握する事が出来た。あちらの世界では【ラクナ】と呼ばれる伝説の都市の周辺だ。》
「そこに行くにはどのくらい時間がかかる?」
《……分からん。5年、10年、20年…………。お前達の頑張り次第だ。》
20年と聞いて、先程まで喜んでいた3人の表情が固まった。
「………きっと、そうだろうと思ったよ……。」
慎二が呟いた。
《時間軸が違うから、元の世界に戻れたとしても、過去、未来、どの時代に戻れるかも分からん。》
「……おい、嘘だろ〜………?」
《どうする?それでもお前達が元の世界に戻りたいなら行けば良い。諦めるなら、この空間で寿命が来るまでいる事になる。さあ、選べ。」
4人は顔を見合わせた。どちらを選んだにしろ、後悔が残るような気がする。しかし、
「僕は行く。」
慎二はすぐに手を挙げた。
《良いのか?戻れないかもしれないのだぞ?》
「だけど戻れるかもしれない。」
《ほう………。》
「僕1人で探しに行く!………それで見つけて、3人と一緒に元の世界に帰る。なんとしても……!」
慎二は拳を強く握り締めた。
後ろは振り返らなかった。見たら悔いが残る。
ふと、慎二の横に誰かがついた。
「わ、私も行きます!」
それは桜だった。
「桜!?なんで……?」
「慎二君1人で行かす訳には行けません!だから私も行きます!」
《分かった。後の2人は………》
「俺も行くぞ!俺は待つのが苦手だし、お前達2人だけに任せとく気にもならないからな!」
「私も私も!……良く考えたら、スパゲッティ自分で作れるんじゃないの〜……的な?だから私も行く〜!」
「……ごめん。」
「なんでお前が謝るんだよ慎二?お前のせいじゃないだろ?」
「それは……」
「いいのいいの〜!みんなで行った方が楽しいでしょ!?」
「北野君、「協力」ですよ!」
「……分かった、ありがとうみんな。」
《どうやら4人全員行くようだな。……分かった。では送ろう。》
絶対に戻ってみせると、慎二は思った。
再び目の前が光に包まれ、一瞬で景色が変わった。