2ー18 「ランク戦前日」
ロマリアとの特訓開始から数週間経ち、いよいよランク戦を明日に控える事となった。
慎二は以前と比べて、連続して剣を打ち合えるようになっていた。
「はぁ……!はぁ……………!け、結局……今日もロマリア先生から1本もとれなかった………っ!」
剣の鍛練が終わり、慎二はヘトヘトになって地面に倒れこんだ。
「体力面にはまだ不安がありますが、最初の頃と比べれば、大分動ける様になったと思いますよ。」
自分を見下ろしながらのロマリアの言葉に反応して、慎二は上体を起こした。
「本当ですか!?」
「はい。今の貴方の戦闘技術なら、昨日の打ち合わせ通りに動けば、明日のランク戦は大丈夫でしょう。」
「やった………」
「ただし!」
喜んで立ち上がる慎二に対し、ロマリアは彼の顔の前で人差し指を立てて言った。
「魔法が使えたら、もっと安心出来たのですが………ね……。」
「う……。」
彼女の言葉に、慎二は声を濁らせる。ドラークの言葉通り、結局、慎二は魔法を習得する事が出来なかったのだ。
「しかし、今更くよくよしていても仕方がありません。出来る事はやりました。今日はもう学舎に戻りましょう。」
「は、はい!」
午後は、今までやって来た事の振り返りや、明日の注意事項などの確認、そして、個人ランク戦後の、分隊ランク戦の訓練などであっという間に過ぎていった。
そして夕食後の夜、慎二と桜はいつもの様に、慎二の部屋で、今日あった事を話していた。
「いよいよ明日ですね!」
「う、うん……。」
「や、やっぱり不安ですか?」
「うん……正直ね…………。」
やっぱりドラークの言う通り、普通に魔法を使おうとしても、全く上手く行かなかった。
「(困った………これは困った…………。)」
慎二は額を手で押さえて俯いた。
正直、しっかり訓練すれば出来るようになると思っていた自分が情けない。一体どうすればいいのか。
頭の中はその事だけで一杯となり、彼は思わずため息を吐いた。
それを見た桜は、机の上に、1枚の紙を置いた。
「北野君、これ、見てください。」
「ん……?」
慎二は机の上の紙を見る。どうやらそれは、手紙のようだった。
「え、これってっ!?」
送り主の名前を見て、慎二は咄嗟に紙を手に取った。それを見た桜は笑顔で頷いた。
「はい。健二さんと真琴さんからです。今日の朝に届いたんですよ!」
「桜はもう読んだの?」
「はい。北野君も読んでください。」
「……分かった。」
{慎二、桜。元気でやってるか?お前達2人は、東地方の士官学校で頑張っているみたいだが、俺達はあの後、世界の西側にある、王都【ザンクティア】方面に行く事にしたんだ。仕事探しと同時に、【ラクナ】の事について調べる為にな。実際、ラクナの方は、中々情報が集まらないんだが、仕事の方は、冒険者の助っ人として依頼をこなして、割と上手くいってる。……真琴が何かやらかさなきゃの話だけど………。
慎二。この前は、喧嘩別れみたいになっちまって、すまん!あの時、お前は俺達の事を思って、色々考えちまってたんだろ?………でもよ、もう少し、俺らの事を頼って欲しい。この紙の裏に、俺達のギルド登録ナンバーを書いておくから、何かあったら、すぐに俺達に手紙かなんかで報告してくれ。いつでも駆けつける。
桜、そこの堅物を頼む。そいつの面倒を見れるのはお前だけだ。
最後に。2人とも、4人で元の世界に戻るまで、絶対に死ぬんじゃねえぞ!?夏祭りに行く約束、忘れんなよ!?}
慎二は手紙を読み終わると、無言で折り畳み、机の上に置いた。
しばらくして、先に口を開いたのは桜だった。
「2人が元気そうで良かったですね。」
「……うん…………。」
夏祭り。
この世界に来る前、4人が夏休みの予定で挙げたものである。
「すっかり忘れてた。………夏祭り、行こうとしてたんだったな………。」
「はい。」
「行けるといいな………!」
「約束……しましたもんね。」
その瞬間、慎二はある事を思いつき、椅子から立ち上がった。
「ごめん、桜。ちょっと出てくる。」
そう言うと、慎二は急ぎ足で部屋を出て行った。
「北野君!?ちょっと………はぁ…………。」
桜は、「まだ真琴さんの手紙が残っていたのに」と、1人呟き、その手紙を仕舞った。




