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夢道の世界  作者: ジニー
第2章 別れ道
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2ー15 「無謀な提案」

分隊5人の属性が分かってから翌日、慎二はいつもの自身の教室に行くと、突然、教官から特別指導室へ行くように指示された。


慎二は特別指導室の前に立ち、緊張した面立ちで扉を開ける。待っていたのはロマリアだった。

「あ………!早く席に座ってください。待っていましたよ!?」

「え………え!?な、なんでロマリア先生がこんな所にいるんですか!?」

「え、じゃありません!授業の時間が始まっているのですから、早く準備して下さい。」

「あ………はい!」

慎二は訳が分からないまま、彼女に近い真ん中最前列の席に座った。それを見たロマリアは、軽く咳払いをすると、先程よりも少し柔らかな口調で話し始めた。

「いきなりこんな事になって驚きましたよね………?その事は謝らせて下さい。」

「え……いや、そんな…………!」

深々と頭を下げるロマリアに慌てた慎二は、彼女に頭を上げてもらう様に促した。

「あの、それよりも………なんでこうなったのかの経緯が知りたいです。」

「……分かりました。もちろんお話しします。」

慎二の要望にロマリアはぎこちなく頷くと、今朝あった事を話し始めた。

「昨日、貴方は属性玉を使って自身の属性を鑑定した所、何も反応しなかった。他の玉も試したけれど、どれも結果は同じでしたね?」

「はい………。」

「私は、その事を昨晩の会議で報告しました。そして、話し合いの結果…………」

「……結果…………?」

慎二はゴクリと唾を飲んでロマリアを見つめる。彼女は、1度天井を向いて、ふぅ、と息を吐いた。そしてすぐに慎二の方に見つめ直すと、口を尖らせて告げた。

「ジャミル。貴方のランクはDから再び、Fの最下位1500位に戻る事が決まりました。」

「え………!?な、なんで、どうしてですか………?」

「通常、この世界に住む全ての生物には属性、すなわち魔力が宿っています。その魔力が宿っていないという事は、正直に言うと異常です。そして貴方の事を知った上の人は、魔法の使えない貴方を最下位にすると決断しました。」

「そんな…………。」

「その、ごめんなさい!私が貴方の事を変に報告した結果、この様な事に…………!」

「いや、ロマリア先生のせいじゃないですっ!嘘ではないんですから………。」

慎二は力無く肩を落とした。今は自身に属性が無かったという事よりも、せっかく上げた順位が無かった事になってしまうという事実の方が重かった。


それから短い沈黙の後、ロマリアは静かに口を開いた。

「………1つ、提案があります………。」

「提案……ですか?」

顔を上げた慎二に、ロマリアは頷いた。

「実は、貴方のランク降格と同時にある事を提案されました。…………ジャミル?1か月後の「C」ランク戦に参加する気はありますか?」

「Cランクの………!?で、でも自分はFランクに戻ったんじゃ………っ!?」

「はい。通常は不可能ですが、今回は特別に出場が許されました。」

「何の為に…………」

ロマリアは慎二の言葉を遮るよう人差し指を立てた。

「もし、貴方がCランク戦で、ある程度優秀な実績を残す事が出来れば、貴方はCランクに昇格する事が出来ます。」

「え………えっ!?それって…………」

「飛び級出来る可能性があるという事です。」

「ほ、本当ですか!?」

慎二は思わず立ち上がる。絶望に浸っていた今までの表情から一転した。

「もし良い結果を残せればCランク上位に上がれるって事ですよね!?」

これで、さらにSランクに近づく事が出来る!

しかし、喜ぶ慎二とは裏腹に、ロマリアは複雑な顔をしていた。

「た、確かにそうですね………。」

「……ん?どうかしたんですか?」

慎二は目を輝かせて喜んでいたが、ロマリアは未だに深刻な表情だ。

「それだけ聞くと、確かにランクを大きく上げるチャンスの様に思えますが、この話にはまだ続きがありまして………。」

「続き……ですか…………?」




放課後、慎二は桜と共に夕食を作りながら、ロマリアとの会話について話した。

「えっ!?じゃあ北野君、Cランク戦に参加するんですか!?」

桜は驚いて、隣にいる慎二の顔を見た。

「それが1番手っ取り早いと思ってね。」

「そ、そうですか………?まあでも、北野君ならきっと大丈夫です。」

「そうかな?」

「はい!それに、もし駄目だったとしても、またすぐランク戦はありますから。」

「…………………っ!」

すると、桜の言葉に、慎二は野菜を切る手を止めた。

「………ん、どうしたんですか北野君?手でも切りました?」

「…………いや、なんでもない…………。」

「そうですか…………?」

桜は慎二の顔を不安そうに見つめる。

「そ、それよりも、スープの味はどう!?」

慎二の言葉に桜は鍋の火を止めて、味見をすると、すぐに笑顔に戻った。

「はい。今日もうまく出来ました。」

「ナイス!」

「では、私はスープを皆さん所に持っていくので、サラダ、お願いしますね?」

「うん、任せて!」

桜は鍋を持って隣の班員が待つ部屋に行った。1人残った慎二は、朝にロマリアから言われた事を思い返した。



「続き……ですか………?」

「はい。もし、次の試合でCランク上位トップ30に入れなかった場合…………、」

「場合………?」

ロマリアは数秒唇を噛みしめると、声を震わせて告げた。


「………退学処分をとる……………と………。」


「退学ですか………。」

「あ、あの、なので無理に出場する必要はありません。これから良く考えて…………」

「出ます。」

「………え………………?」

あまりの返答の早さに、ロマリアは戸惑った。

「自分、あまり時間は無いんです。来年までにSランクに昇格して、卒業したい…………だから、少しでも Sランクに近づけるんだったら、そのランク戦に参加します!」

ロマリアは慎二の真っ直ぐな瞳を見ると、戸惑いを抑えた。

「飛び級ですか……?………分かりました。貴方がそうしたいのであれば、私にはそれを止める権利はありません。それでは、Cランク戦までのこれから、私が付きっきりで出来る限りの事を教えますので、よろしくお願いしますね?」

「はい!」



時間は今に戻る。

「とは、言ったものの。いざとなると不安だな…………。」

慎二はボウル入った野菜に塩をふりかけながら呟いた。

「まあでも、そんな事言ってられないよね!」

慎二は覚悟を決めるように塩の入った瓶を力強く締め、サラダを隣の部屋へと運んだ。

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