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夢道の世界  作者: ジニー
第2章 別れ道
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2ー14 「属性魔法」

その時だった。

ゴーシュの腕から放たれた火拳がどこからか放たれた火矢とぶつかり、慎二に直撃するギリギリで消える。

「…………っ!………って、あれ?」

慎二は不思議に思って首を傾げていると、真後ろから聞こえた大きな衝撃音と共に、拘束していた岩が崩れ落ちた。

慎二が振り向くと、そこには、第3分隊の3人の姿があった。

「先輩!!」

慎二の声に3人は頷くと、アリアが大きな声で言った。

「ガイア、カリト!ゴーシュを至急拘束!!」

「了解!行け、ガイアっ!」

「任せろ!うぉーーーーーっ!!」

彼女の声に再び頷いたガイアとカリトは、すれ違いざまに慎二に目配せすると、ガイアはゴーシュ目掛けて突っ込むとそのまま押さえ込んで拘束した、



「北野君!」

「桜!………痛っ!?」

桜は慎二の所に着くと、彼の手を強く握りしめた。

「どこか!どこか怪我はありませんかっ!?」

「痛い痛い!強く握りすぎだよ桜………!」

「あ………っ!すみません!」

桜は顔を赤くして、咄嗟に慎二の手を離す。

「アリア先輩!」

「2人共、事情を教えてくれる?」

アリアが弓をおろして2人の元に近づく。

「あの、模擬戦中に彼が暴走しちゃって…………!」

「暴走?………やっぱりあれは二連デュアル魔法ね。」

「そうみたいです…………。」

「全く………。あれは副作用が大きい物だから、例え適性があったとしても無闇に使ったらいけないもののはずなのに………無茶したのね………。」

3人はガイアとカリトに捕らえられているゴーシュを見ている所に、遅れてロマリアが入って来た。

「一体何があったんですか!?」

初めは慌てた様子だったが、慎二達の説明を聞く内に興奮は収まっていった。



「なるほど。そういう事でしたか………。」

話を聞いた後、ロマリアはゴーシュに近づくと、ガイアとカリトに拘束を解かせて手を差し伸べた。

「立てますか?」

「お、俺は何を…………?」

「貴方は魔法を使って暴走したのです。」

「……………!」

「私の記憶だと、確か二連魔法は公式戦以外は校則で禁止されていたはずですよ?」

「……そうだな…………。」

「えっと、ゴーシュ君………でしたっけ?校則違反として貴方には何らかの処罰が下ると思っておいてください。」

「……分かってる…………。」

ロマリアの言葉に、ゴーシュは反論1つせずに頷くと、ロマリアの手をどけて1人で立ち上がると、出口へと歩き出す。

「………ちょっと待ってください…………っ!」

ゴーシュが部屋を出ようとした時、桜が彼を呼び止める。

「人を危険な目に遭わせておいて、何も言わないんですか…………?」

「……あ…………?」

「謝ってください………!………彼に、今すぐ…………!」

桜は俯きながら、静かに帯刀していた剣(訓練用)の柄に手をかける。

「桜………!」

それに気付いた慎二は桜の手を掴んだ事によって、桜は動きを止める。それを見た慎二が静かに息を吐く。


…………しかしその時だった。


「……アヤマッテ…………」

この桜の言葉によって、慎二は一瞬、全身の毛が逆立つ様な感覚に襲われた。

「…桜………!?」

慎二は今まで感じた事の無かった狂気を桜から感じ、思わず掴んでいた手を離した。

その直後、ゴーシュは慎二の方へ振り返ると「すまない………悪かった……」と呟き、訓練ルームを出て行った。


その後、訓練ルームの空気は一気に穏やかになり、平穏を取り戻した。

「ふう、何とか間に合って良かったです。」

ロマリアはホッと胸を撫で下ろす。

「いやいや……先生は間に合って無いでしょ?」

「う…………。」

「お前は一々余計なんだよ、ガイア。」

ゴツン!

「痛ってっ!?カリト〜、げんこつは勘弁してくれよ〜!」

「威力は3割程度の筈だぞ?」

「何割でも痛ぇもんは痛ぇんだよー………!オラっ!お返しだっ!!」

「痛った!?お前いい加減にしろ!」

いつもの様にじゃれ合う(?)2人を見て、ロマリアはプッと吹き出した。

それを慎二・桜・アリアの3人は遠目から見つめる。

「あの2人、相変わらず賑やかね。」

「アリアさん。」

「何?ジャミル?」

「さっきはありがとうございます!本当に助かりました!」

「べ、別に………ただ分隊長としての仕事をしたまでよ…………。」

慎二はアリアに頭を下げると、アリアは顔を赤くして、慎二から目を逸らした。


それから、慎二と桜は、すぐにロマリアを含む複数の教官から軽い事情聴取を受ける事になった。




全てが終わって部屋に戻った時、既に太陽は落ちかけていた。

「北野君………?」

「何?」

「す、すみませんでした………っ!」

桜は慎二の部屋に入るなり、勢いよく頭を下げた。

「え………?」

訳が分からず、目をパチクリさせる慎二。

「あの時、私もっと早く動けた筈なのに、危なくなってもただ呆然と見ていたんです!」

「別にそんな事無いと思うけど……。結構早くに声かけてくれたじゃん。あの時は本当に助かったよ〜!」

「で、ですが…………?」

「それは桜が謝る事じゃないから大丈夫だよ?」

「は、はい。分かりました………。」

桜は返事と同時にちょこんと頷く。先程までのおぞましい気配は嘘の様に消えていた。

あれは一体何だったのだろう?それに、何であんなに怒っていたのだろうか? 慎二は夜中じゅうずっと考えた。



翌日、ロマリアにより分隊室に呼び出された慎二達5人は、いつもの配置(席)で腰を下ろすと、ロマリアは何かを手に椅子に座った。

「昨日の事もあってたので、念の為再度確認する事にしました。」

「先生、それって属性玉ですか?」

「そうです。」

「属性玉………?属性玉って何ですか?」

「桜はこれを見るのは初めてですか?これは、触れる事で、自分の中に流れている魔力の属性、及び特性を知ることが出来る玉です。………せっかくの機会です。魔力について少し復習しましょうか。」



ロマリアが言った、魔力についての定義をまとめるとこうなる。

今も昔も変わらず、この世界のあらゆる物には、目には見えない魔力という物が流れており、それが複数の線の様になって物体同士を繋ぎ合っているらしい。そのそれぞれの物質の中に流れる魔力を凝縮・放出し、1つの個体へと変換させて応用する技術を、人々は魔法・魔術などと呼んでいる。



「…………そして、その魔力には赤、青、緑、茶、黄、紫と、6つの色の属性があります。殆どの人は生まれつき、最初の赤、青、緑、茶の4つの属性のいずれかの1種類の魔力が流れています。」

「なるほど。………じゃあ、ゴーシュ君が使っていた、その………二連魔法デュアルとは?」

「その事なんです。珍しいケースですが、多分、彼は身体に、2種類の属性の魔力が流れているのだと思います。」

「2種類?」

「はい。まあ2種類と言っても、両方が同じ程度身体に流れているという事ではないでしょう。確か、彼は最初、赤の属性を使っていたのですよね?きっと、彼の大部分に流れているのは赤属性で、茶の属性は赤よりも少ないのだと思います。」

「え、属性って均等に流れてる訳ではないんすかっ!?」

「この事は、多くの人に結構勘違いされやすいんです。……二連魔法と言うのは、その2種類の属性の力を同じ比率で同時に変換させる必要があるため、かなり制御の難しい魔法です。これを誤って使うと、片方が暴走して、最悪の場合、身体が断裂して死に至ります。また、無理に変換させようとして、威力の加減を誤ってしまう事などが多々ある事から、校則で厳しく取り締まられているんですよ?」

「なるほどな〜。俺には関係無いから知らんかったわ。」

「全くお前って奴は………。無いと言い切れはしないぞ?」

カリトがガイアに吐いた言葉に対し、ロマリアは大きく頷いた。

「その通りです。属性というのは、成長期になると著しく成熟します。だから、今まで1つの属性だけだと思っていた人も、いつの間にか2つの属性が使える様になっていた、というケースもあるんです。」

「え………えっ!?じゃあこれから2属性になる事も………」

「充分考えられますね。」

「へ〜!じゃあ俺も新しいのが使える様になってたりして…………!」

「まあ淡い期待だけどな。一体その確率が何パーセントだと思ってるんだ?」

「それでも無いとは言い切れません。それを、今から皆さんと一緒に確かめる為に、属性玉これを持って来たという訳です。」

「しかしロマリア先生?それは貴重な物で、下手に持って来ては行けないのでは………」

「安心してくださいカリトさん。これは学校側から頼まれてる事でもあるので、分隊に入ると、ほとんどの隊が使いますよ?」

「なるほど。」

「なら、早速試してみましょう。では、まずは私から…………」

「え、先生もやるんですか?」

「へ?」

腕まくりをしてやる気満々のロマリアを、慎二は疑問に思った。

「だって、これは成長期の人がやるものなんじゃ…………」

それを聞いたロマリアは、顔を真っ赤にして机を叩いた。

「なっ!?わ、私だってまだ22なんですからね!?」

その言葉にガイアは思わず呟いた。

「え、先生って22だったの!?意外と若………」

「ガイア"くん"、今何か………?」

「い、いえ!何も言ってないっす………っ!!」

「そうですか。」

ガイアは必死に頭を縦に振ると、ロマリアは彼から視線を外した。

ガイアはその瞬間に噴き出た額の汗を拭った。



「では、気を取り直して行きましょう!」

そう言うと、ロマリアは属性玉の上に手を置いた。

すると、それに属性玉が反応したのか、透明な水晶体の中心が曇り始めた。

すると徐々に色彩が表れ始め、最終的に緑色へと染まった。

「おー………!」

「綺麗………!」

「ジャミル、桜も。顔が近い………。」

「「あ、すみません………!」」

2人はパッと属性玉から顔を離した。

それからロマリアは属性玉を指さす。

「私の場合は緑。なので使えるのは1属性だけという事になりますね。」

「なるほど、こうやって分かるんですね?」

アリアはその桜の反応に目をパチクリさせた。

「桜、これは常識ではないかしら?」

「すみません。かなりの遠方から出て来たもので〜。あはは…………。」

「そう………。それは仕方ないわ……ね………?」

彼女、筆記試験に基礎知識問題が出ていたらどうなっていたのだろうかと、アリアは心配に思った。

「それでは順番に確認して頂きましょうか?最初はアリアからで。」

アリアは無言で属性玉に手を置く。属性玉は赤色に変わった。

「次は俺か?」

カリトが手を置くと、属性玉は青色に変わった。

「頼む………!」

その願いも儚く、ガイアの触った属性玉は茶色1色にしか変わらなかった。

「次は桜の番です。」

「はい!では……………」

桜は緊張した顔で属性玉に手を置いた。すると、属性玉の色彩の流れが急に激しくなり始めた、すると、段々と流れが安定し始め、やがて止まって色が表れた。

「まあ、これは…………!」

ロマリアは口に手を当てながら驚いた。

桜の触れた属性玉は一見青く見えるが、反対側の4分の1程度が赤色に染まっていたのだった。

「ロマリア先生?これって………!」

「これです………!これが2属性ですよ〜!」

ロマリアが目を輝かせながら叫ぶと、慎二・ガイア・カリトの3人は桜の近くに寄った。

「すっげー………っ!俺初めて見た!!」

「俺もだ………!」

「凄い………凄いよこれ…………!」

3人は興奮気味に眺めていたため、桜は少し恥ずかしくなって頰を赤らめた。それから桜は、遠巻きからこちらを見つめるアリアの姿が目に入った。

「(アリアさん………?)」

「こらこら、そろそろ離れて差し上げたら?桜が困ってますよ?」

ロマリアが注意すると、男3人は行儀良く元の位置に戻った。

「じゃあ、最後はジャミルですね?」

「あ、そうだった………!」

桜のを見て自身のをすっかり忘れていた慎二は思い出してロマリアの所に行った。

「さあ、手を置いてください。」

「はい。」

《そうだ、慎二。忘れていたが……。…あ………。》

心の中から声が聞こえた気がしたが、それは気にせず、慎二は緊張と期待で胸を膨らませ、勢いよく手を玉の上に乗せた。


「……………ぅん………………?」


そこで、慎二は自身の驚愕的な真実を知る事となった。



属性計測から数時間後の夜、

ロマリアは机に向かい、今日の計測結果を上に報告する為、記載書の記入を行なっていた。

「ふぅ。4人の分はなんとか終わりましたか。……問題は彼ですね………。」

ロマリアは記載書にジャミルの名前を書いた。

「あんな事例は今まで見た事も聞いた事も無いですからね…………。はぁ………。一体上に何と報告したらいいのでしょうか…………?」

ロマリアは重いため息を吐くと、彼の属性欄に「無し」と記入した。




「ドラーク、属性無しってどういう事なのさ!?」

慎二は自身の意識の中のドラークを問い詰めた。

「それは、お前の外殻である、ジャミルの体が死んでいるせいだ。」

「え………?」

「お前は死んだジャミルの体の中に、ただ魂を移しているだけだ。基本、死人の中には魔力など宿らん。」

「そういう事か…………。でも待って。そうだ!僕にはあれがあるじゃん!」

慎二は何かを思い出したのか、ドラークの体の鱗をつつき始めた。

「あれとは何だ?」

「あの技だよ!体とか物が虹色に光る奴!」

「ああ、あれの事か。」

「戦う時はずっとあれを発動させておけば、どんな敵だってイチコロじゃない?」

「あれをずっと発動しておく?愚か者が。そんな事をしたら即死ぬぞ?あれは持って5分程度だと思え。」

「え?」

「言っただろう?いつでも使えると思うなと。それに、あの力はお前だけの力ではないからな?」

「じゃあ、あれはドラークの?」

「………違うな。」

「じゃあ何なの?」

「それは追々だ………。」

ドラークは体を叩くなと言わんばかりに体をズラして、慎二から数メートル距離を取った。

「む…………。じゃあ、これからどうやって戦えばいいのだろうか………?」

「基本の戦闘能力を上げるしかないと思うが。」

「だよね〜?はぁ…………。」

「苦労をかけるな………許せ……。」

「……分かった…………。」

それから2人(正確には1人と1体)は、草原の奥にある、遥か彼方の地平線を眺め続けた。

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