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夢道の世界  作者: ジニー
第2章 別れ道
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2ー9 「慎二 奮闘」

慎二は流しで布切れを濡らすと、廊下の床磨きを始めた。

小学生の頃から続けている、走りながやるあの雑巾がけの要領で、勢いよく廊下を駆け回る。


数分後、ようやく全てをかけ終えた慎二は、息を吐き、額の汗を拭った。

「ふぅ〜。結構広かったな。我ながらよくやった!」

と、自身を褒め称えていたのも束の間、


「うわっ!?」


「きゃっ!?」


「なんで床が濡れてんだよ〜!?」


あちこちで悲鳴やら怒号やらが聞こえ始めた。

「ん?……………あっ!乾拭きするの忘れてた〜!」

慎二は転んだ人に頭を下げた後、急いで乾拭きを行った。



床磨きを終えた慎二は、次に窓拭きを始める。床磨きに比べてあまり体力を使わない為、案外楽に進んでいく。

しかし、粗方拭き終わった後、ある事に気が付いた。

「これって、外側も拭くのだろうか…………?」



結局、慎二は自身をロープで校舎の外壁のくぼみに固定しながら、恐る恐る外側も拭く事にした。

この学校は街の高い場所にあるため、3階でもかなりの高さに思えた。

「下を見ない下を見ない……………!」

慎二はそう自分に言い聞かせながら無事に終わらせた。終わった後は殆ど放心状態である。



そうして、順調(?)に掃除を終わらせた慎二は、分隊室の扉を開けて中に入る。

「ロマリアさん、掃除終わりましたよ〜。」

「え?」

分隊室に戻ると、ロマリアは手に持った木箱を眺めていた。

「その木箱…………」

慎二が木箱を指をさす。

「あ、これは………その……………」

ロマリアはドキッと体を揺らし、大きく目を開いて、手に持つ木箱に目をやる。それから目をパチクリさせた後、大きく深呼吸をして、慎二の所に歩いた。

「………ごめんなさいジャミル。これ、先程返し忘れてしまいましたね。」

ロマリアは慎二に木箱を渡した。

「とても良い味でした。お陰で今日は快調です。ありがとうございます。」

「いえ。それよりも、ロマリアさんのお口に合って良かったです。また作りますね。」

「はい、ぜひ。………意外と掃除、早く終わりましたね?」

ロマリアは壁に掛けてある時計を見る。

「ここに来るまで、ずっと家の掃除は僕がやっていたので、大体の段取りは分かったんです。(まあ、違う部分もありましたけど…………。)」

「なるほど…………。それでは、暫くの間、毎日お願いします。」

「はい!……………え、毎日ですか………っ!?」

毎日という言葉に、慎二は思わず目を丸くする

「はい。」

「りょ、了解です…………。」

笑顔で言われたら断る事は出来ない。慎二は不服ながらも頷いた。

「それでは次の「訓練」に行きますよ。………あ、もちろん。ここから先にやる事も全て、毎日やる事。」

「………は、はいっ!」

慎二は覚悟を決めた。




「……………それで、その後は街で奉仕活動の数々を…………やっぱり!あの時見かけたのは北野君だったんですね?」

「み、見たんだ……………。」

初日の訓練を終えた慎二と桜は、慎二の部屋で夕食を食べていた。

「ところでさ、桜のレポートってどんな事書いたの?」

「街に来たばかりなので、とりあえず街の印象などを書きました。」

「他には何かしなかったの?」

「ええ。訓練はそれだけですね。それが、何か?」

慎二は最後のスープを飲んだ後、スプーンを置いて言った。

「本当に大丈夫かな〜?」

「何がですか?」

「なんかロクな訓練をしていない気が……………」

「……確かに、そうですね?」

「しかも、なんか僕だけ別の意味でもの凄いハードな気がするし……………」

慎二は肩をガクリと落とす。

「そ、そんな事無いですよ!多分先生には、先生なりの考えがあるんだと思います!」

「そ、そうかな?」

「きっとそうですよ。やる事は違いますけど、お互い、頑張りましょう!」

「う、うん…………?」

慎二は桜の顔を見ると、首を傾げて頷く。それを見た桜も、慎二と同じ方向に首を傾げた。

「ん、どうかしました?」

「いや。桜、変わったなって思って。」

「え?」

桜は少し驚いたのか、口元に手を当てる。

「この世界に来る前はさ、僕といる時、なんかやたらと緊張しておどおどしてたけど、今は何というか…………すごく頼もしい。」

真顔で答える慎二に対して、桜は顔を真っ赤にして立ち上がった。

「た、頼もしい!?私が!?」

「うん。少しずつだけど、僕だけじゃなくて、他の人ともうまくやれてる気がする。」

「そ、そうですか…………?」

「そうだよ。なんかあったの?」

「っ!?そ、それは…………」

桜はもじもじしながら、再び椅子に座り直し、以前の様なか細い声で話し出した。

「なんか北野君………この世界に来てから…………ずっと元気なかったから…………。」

「え?僕が?」

「最初の森の中からずっと、私達の前では全然笑ってくれなくて…………正直に言うと、少し怖かったです…………。」

「う、うん………。」

慎二には思い当たる節がある。あの時は自分の犯した罪に囚われた焦りから、心に余裕なんてものは一切無かったのだった。

「だからそんな中、私が少しでもみんなの役に立てたらと思って、その…………自分なりに考えてみたんです。……まずは自分から変えていこうって…………。」

「え……………っ?」

「やっぱり、変ですよねっ…………?明日からは、いつもの私に戻り…………」

「あ、いや…………」

「?」

「僕は今の桜の方が良いと思うよ?前よりも話しやすいし。」

「そ、そうですか………!?そ、それじゃあ、これからもこのままでいきますね?」

「うん。…………そうだ!それでさ、桜?」

「はい?」

「なんで桜は…………」


トントンッ


慎二が何かを言いかけたその時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「ちょっとごめん。」

慎二がドアを開けると、外には何かを腕に抱えるロマリアが立っていた。

「こんばんは、ジャミル、サクラ。」

「ロマリアさん。どうしたんですか?」

「これ。」

部屋に入るなり、ロマリアは2人にそれぞれに腕の物を渡した。

「あ、制服ができたんですね!」

「そう。サイズの変更があったら知りたいから、是非今着てみて。」

「はい。」

「え?」

「エヘン!」

慎二が早速服を脱ごうとしたため、桜が咄嗟に咳払いをして止めた。

「………で、では、私は自分の部屋に戻ってますので、着替えたら2人共、私の部屋に来てください。」




「ジャミルです。」

「どうぞ。」

「失礼します。」

慎二はロマリアの部屋に入り、自身の制服姿を見せる。

制服は帝国軍の正装の色違いで、軍人は男が黒、女が紫に対し、学生は男が茶、女が赤である。

慎二は上下茶色のスーツの様に見えるが、あまり動きにくさを感じさせないデザインである。

ロマリアは確認し終えると、慎二にコクンと1回頷いた。

「うん。サイズは問題なさそうですね。」

コンコン

「どうぞ。」

部屋のノックに返事をすると、次に桜が入って来た。

「桜です。」

桜はやはり赤色だったが、下のスカートは白だった。

「ロマリア先生…………?スカートが少し短いみたいです……………。」

桜はスカートの襟を抑えながら、恥ずかしそうに細々と告げる。

「いいえ。皆それくらいの長さです。問題ありませんよ。」

「なっ!?(なんて破廉恥はれんちな…………っ!)」

桜は諦めて、スカートの襟から手を離した。

「よしよし。やっと士官学生らしくなりましたね。…………そうそう!2人共、これを。」

ロマリアはそれぞれに、色の違うバッチを手渡した。

「これは…………?」

「そのバッチはここの学生である証と同時に、現在の自分のランクを色で表しています。これを必ず、制服のどこかしらに付けておいてください。」

慎二は左の上腕部に、桜は左胸に付ける。慎二は灰色、桜は虹色である。

「うん。2人共、ようやく士官学生っぽくなりましたね。」

2人の格好を見たロマリアは満足そうに頷く。

「では授業や実技の講習の時は、指定がない限りその服装でお願いしますね。」

「「はい。」」



慎二は自分の部屋に戻ると、制服をハンガーに掛けて、布団へと倒れた。


(………まずは自分から変えようと思って………………)


「変われるかな?僕も………。」

〈不安か?〉

「不安………たしかにそうかも。」

〈あまり深く考えるな。あの女が出来たのなら、お前にだって出来る筈だ。〉

「…………。」

ドラークは確かにそう言うが、それでも不安である事に変わりはない。これからどうしていけば良いのだろうか…………

(………いや、考えても仕方ない。また悪い癖だ………)

「そうだよね。僕にだってきっと出来るよね?」

慎二はこれからの自分自身の成長を期待すると、自然と笑顔になった。

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