2ー6 「慎二の意気込み」
「どおりゃーーっ!!」
ガイアは大型のスレッジハンマーを豪快にマリスタへと振り下ろす。
それをロマリアは即座に躱すと同時にガイアの横に回り、レイピアの柄でガイアの峰打ちに当てた。
「はぐっ!?」
不意に叩かれたガイアの脇腹は悲鳴をあげ、苦しそうに膝を地面についた。
「これからはもっと、動きの無駄を無くすようにしましょうね。……それよりも、大丈夫ですか?」
「け、結構痛いっすよ……!」
「大変!……少し力を強めたのが失敗でした。しばらく横になって………」
「いや、そこまでじゃないんで……。」
「……そうですか?」
ロマリアはガイアの手を引いて、起き上がらせる。
「あ、ありがとっす……。」
「いいえ。」
「ガイア、痛そうだな……?」
カリトが苦しそうに腹を抱えて戻って来たガイアを、心配そうに見つめる。
「だ、大丈夫だこの程度……!」
「いや、辛そうだぞ?」
「い、いや!?ぜんっぜん大した事ないし!」
ガイアは腹を抑える手を頭の後ろに回して組むと、額に汗をかきながら、無理に口笛を吹き始めた。
「まあ、俺は桜とアリアさんみたいに、寸止めで良かった……。」
「なんで俺だけこんな目に!?」
「それだけお前の動きが隙だらけだったって事だろ?」
「な!?お前も瞬殺だったじゃねえか!?」
「あれは足を滑らせただけだ!」
「関係ねえ、瞬殺の事に変わりはない!」
「何をっ!?」
2人の言い争いに対し、ロマリアはパンと手を叩いて止めた。
「まあまあ、喧嘩なさらずに……。私は2人とも、磨き方次第ではさらに強くなると思いますよ?」
「ほ、ほんとっすか!?」
「痛ってっ!」
ガイアはカリトを突き飛ばして、目を輝かせた。
「………さあ、最後はジャミル君ですね?」
「はい。よろしくお願いします!」
ついに来た。
慎二はやや緊張気味に頭を下げ、木箱から剣を1本取り出した。
「あら、盾は使わないのですね?」
ロマリアは冗談混じりに言う。
「あの時は狭い場所で魔物を相手にするから持って行っただけで、普段は剣1本だけなんです。」
慎二は気合いを込めて剣を引き抜き、力強く構える。
(っ?あの構え方はどこかで………)
ロマリアは慎二の剣の構えに見覚えがあり、数回瞬きを繰り返す。
(誰のだろう?……もしや……………?)
ロマリアの脳裏によぎったもの。それはまさしく、学生時代のマリスタの構えだった。
「そうですか……。なるほど。では、いつでもどうぞ。」
それを確信したロマリアは、何やら嬉しそうに微笑み、剣を構えた。
「行きますよ!?やあっ!」
慎二は剣を前に突き出すと、突進するようにロマリアへと走る。しかし、
コテッ
「うわっ!?」
慎二は途中で足がもつれ、前のめりに倒れこんだ。
ロマリアは戸惑いつつ、慎二に駆け寄った。
「……あ、あのー。大丈夫ですか………?」
「………ぅ……………っ全然………!」
慎二は剣を杖代わりに地面に突き立てて立ちあがると、額を痛そうに抑えた。
その慎二の様子を呆然と見ていたロマリアは自身の頬をパチンと叩いて、剣を構え直した。
「それでは改めて……どうぞ!」
「わ、分かりました!」
慎二も再び構え直すと、ロマリアに向かって、剣を横に薙ぎ払った。
数分後、ロマリア達は分隊室へと戻ってきていた。
「はい!それではこれにて今日は終わります。明日からは全ての講座が終わった後は小隊の訓練があるので、皆さんちゃんと小隊室に来るように。」
「「「「「はい。」」」」」
「それでは、今日はもう解散です。」
「「「「「お疲れ様でした。」」」」」
慎二達5人は、ロマリアに頭を下げた。
「カリト〜!飯だ飯!」
「だから、人の服を引っ張るな!」
ガイアは強引にカリトを引っ張って、部屋を出ようとしていると、それよりも早く、アリアは早々と出ていった。
それを見た桜は、後に続いて廊下を出て、外のアリアに頭を下げて挨拶した。
「アリアさん。お疲れ様でした。」
それを聞いたアリアは、一度ピタリと足を止めるが、またすぐに歩き出した。
挨拶の済んだ桜は分隊室に戻る。すると、ガイアとカリトが桜に驚きの目を向けていた。
「え?あ、あのどうしましたか!?」
「いや、桜凄えなーって思って…………。」
「凄い?私が?」
「アリアさんはあまり人と話したくないのか、基本、本当に必要な時しか話さないからな?そんなアリアさんに話しかけるなんて、度胸あると思ってな。」
「そ、そうだったんですか?」
「ああ。お前今日話したか?」
「いや全く。お前はどうだった?」
「1回だけ。[必要ない]って言われた。」
「それもはや会話になってないんじゃ………」
慎二が呆れ顔で突っ込みを入れる。
「そんなに話さない方ですか!?……私以上ですね………。」
「そう言えば、桜はあの時も、結構アリアと話してたよね?(話の内容は伏せるけど………。)」
「あ、はい……。」
「えーーー?いいなーー!」
ガイアが羨ましそうに言った。
「俺、隊一緒になってから毎日挨拶してるけどずっと無視られてるからな〜。」
ガイアが弱々しく溜息をつく。
そこにロマリアが割って入った。
「なら、これから少しずつ絆を深めていけば良いじゃないですか?」
「ロマリアさん。」
「ほら、明日から本格的に学校が始まります。早く休みなさい。」
「はーい。行こうぜカリト!」
「だから引っ張るなーーー!…………ロマリア先生、お疲れ様でした。」
ガイアとカリトも部屋を出ていった。
「それじゃあ僕達も寮に………って、あ………っ!?」
「ど、どうしました?」
「桜、僕達、寮の申請ってしたっけ………?」
「……は!わ、忘れてました………っ!!」
「ど、どうしよ!?」
慎二と桜は顔を見合わせ、慌てふためく。
「とりあえずあの人……ルナールさんに相談しないと!」
「そうですね!………と言う事はもしかして、またあの部屋………?」
「そ、それは流石に…………ありえる………っ!」
「い、嫌ですよあの部屋!腰を悪くします…………っ!」
「そんな事言われても…………」
「あのーー?」
2人が話し合う中、ロマリアは手を挙げて、1つの提案をした。
「私の部屋の隣に2部屋空いてるので、良かったら使いませんか?」
「「え?」」
慎二と桜はロマリアの言葉を聞くと、同時に彼女の方を見た。
「ほ、本当ですか!?」
「え、ええ。確か空いてた筈です。その部屋の使用や、寮の申請については私が伝えておきますので、今日はそこに…………え?」
慎二と桜は、それぞれロマリアの手を両手でガシッと握った。
「「ありがとうございますっ!!」」
「は、はい………?」
どれだけ前の部屋は酷かったのかな?と、ロマリアは頭を巡らせる。
数時間後、慎二は自分の部屋のベッドにバンっと倒れ込んだ。
「や、やっと休める〜!」
ここ数日まともに休めなかった慎二はぐったりとして、布団に潜り込んだ。
バンッ
隣の部屋からも、ベッドに倒れこむ音が微かに聞こえた。多分桜だろう。
「……………。」
慎二は部屋の天井をじっと見つめる。
結局あの時、慎二は手も足も出ず、ロマリアに負けた。
「はぁ!はぁ………っ!」
「貴方、筋は悪くない。でも、その1つ1つの動作が遅いです。」
「遅い…………?」
「はい。ですからまずは、基本の速度を上げると同時に、持久力を上げる訓練もしましょうね?」
「は、はい………っ!」
《無理もない。今までお前は戦いとは無縁の生活をしていたのだからな。》
ドラークは慎二に慰めの言葉を送る。
「別に僕は何にも言ってないんだけど……。」
《逆に、お前はこれまでよく持ったと思うぞ?》
「……それは褒め言葉として受け取って良いの?」
《当然だ。だがまあ…………これからだがな?》
「うん………!」
慎二は今日あった事やドラークの言葉を受け止めて、ゆっくりと目を閉じる。
(僕は絶対に強くなる。強くなって、マリスタさんを支えられるくらい………いや、桜や、健二、真琴を守れるようになるんだ………っ!………でも、その為には一体何をすれば………………。……っそうだ!良い事思いついたぞ…………っ!!)
慎二は良い考えがひらめいたのか、楽しそうに微笑んで、ゆっくり夢の中へと入っていった。




