2ー1 「ヨルダム士官学校」
帝国軍に入軍する事を決意した慎二と桜の2人は、マリスタ達と共に、士官学校を目指していた。
「慎二君、桜君、前を見たまえ。あれが東方で1番大きな街、ヨルダムだ。」
隣で馬を走らせるマリスタが、前方を指差す。
「「わぁ…………っ!」」
慎二と桜は思わず感嘆した。
森を抜けると、そこには石造りの城壁があった。その大きさは、村の簡易な木造の門とは大違いである。
街に入った一行は、中心部にある士官学校の校門の前に着く。
「中尉の母校ですね。」
「そうだな。ガレス、少し頼むぞ。」
「了解です。」
「慎二君、桜君、私について来てくれ。」
ガレス達には外で待ってもらい、マリスタ、慎二、桜は校内に入った。
学校のロビーはホテル並の広さで、様々な装飾が施されている。
「うわっ!」
「ひ、広い……………っ!」
「懐かしい。入学して来た頃を思い出すな……。」
マリスタ達がロビーを見渡しながら待っていると、1人の男の人が階段から降りて来て、3人に礼をした。
「ようこそヨルダム士官学校へ………って、先輩!?」
その男は、マリスタを見た途端目を丸くして驚いた。
「久しいな、【ルナール】。現役交流戦以来か。元気そうでなによりだよ。」
「どうしたんすか!?なんでこんな所に!?」
「この子達の入学手続きの為さ。」
マリスタは慎二と桜の肩に手を乗せる。
「ジャミル君と桜君だ。」
「は、はぁ………?」
「確か入学試験は明日だろう?出来るか?」
「まあ、出来ない事はないですけど…………」
「なら頼むぞ?」
「りょ、了解っす…………!」
マリスタ達はルナールに事務室の様な部屋に入り、書類を書き始めた。が…………
「…………………。」
名前を書いた所から、桜のペンの動きが止まった。
「っ?どうしたの桜?」
スラスラと書き終えた慎二は、隣で固まる桜の肩を叩く。
「(私、出身地域とか全然分からないんですけど、どうすればいいんでしょう?)」
桜は小声で慎二に告げた。
「あ、そっか!」
「どうした、ジャミル君?」
突然慎二が大きな声を出したため、マリスタが反応した。
「い、いえ!なんでもないです、すいません!」
慎二は口を押さえて謝ると、そのまま桜の方に向き直る。
「(どうしましょう、北野君!)」
「(え!?いや〜そればっかりは………)」
慎二が頭を捻らせていると、心の中で声が聞こえた。
【ナルヌ地方のイースト・アワーだ。】
「(ナルヌ地方のイースト・アワー……。)」
「(え?)」
「(多分地域はナルヌで、村はイースト・アワーでいいと思うよ。)」
「サンキュードラーク!」と、慎二は心の中でお礼をした。
「(あ、ありがとうございます…………って、なんで分かったんですか!?)」
「(な、なんとなく、家の本に書いてあった気がして………いいから、早くそれ書いちゃって!)」
「(わ、分かりました………!)」
桜は半信半疑ながらも、それを基にして、なんとか2人共書き終える事が出来た。
マリスタとルナールは2人の書類を念入りにチェックする。そしてオッケーが出たため、2人は無事に入学試験の参加資格を貰うことが出来た。
その後、4人はロビーへと戻る。
「良かったなジャミル君。」
「まだですよ。合格するかどうか分からないのに…………。」
「私は2人共受かると思ってるよ。余裕でね。」
「ぷ、プレッシャーかけないで下さいよ〜!」
「はははっ!2人なら大丈夫だ!それでは、私はもう行くとしよう。」
「え、もう行くんですか!?」
慎二と桜は唐突な別れに慌てる。
「心配しなくていい。今日はここが部屋を1つ貸してくださるそうだ。」
「い、いやいや!そういう問題じゃなくてですね!?なんか、その……早いというか………突然というか…………」
「出会いや別れは突然やって来るものだ。………それに、これは永久の別れではないだろう?」
「は、はい………。」
「はは………っ!相変わらず先輩は先輩っすね!」
ルナールが腹を押さえて笑う。
「君もな。」
マリスタはルナールに軽く礼をして、玄関の扉を開ける。
「あ、そうだ。ジャミル君、桜君。」
すると、マリスタは何かを思い出した様に2人の方に振り返った。
「もしここから先、どうしようもなく辛い壁にぶつかった時、あの村であった事、君達が入軍しようと思った時の事、そして、仲間達の事を思い出すんだ。そうすれば、大抵の事は乗り越えられる。」
「マリスタさん…………!」
「私は東地区の帝国軍基地にいる。待っているぞ!」
「「はい!」」
「よし!ではさらばだ。」
マリスタは扉を閉めた。
「やっぱりかっこいいな〜先輩は〜っ!」
「「…………………。」」
ルナールの興奮具合に、少し引き気味の慎二と桜であった。
「あ、中尉が出てこられた。」
待機していたガレスが、出て来たマリスタに敬礼をする。
「ご苦労。待たせたな。」
「いえいえ。では基地に帰りましょう。」
「ああ。」
マリスタが自分の馬に乗ろうとした時、校舎から1つの目線を感じて振り返る。
すると、中の部屋から、こちらに手を振る1人の女性を見つける。そして、マリスタも手を振り返した。
(良かった。彼女も元気そうだな………。)
マリスタは1人そう呟くと、馬にまたがり、ガレス達共に、ヨルダムの街を後にした。




