2ー0 「プロローグ」
暗く視界の悪い夜の森は、商人や旅人、ましてや兵士までもを惑わすと言われる。
その中を迷う事なく進む、1台の大型馬車の姿がある。
その荷台部分の中には、武装の準備をする兵士が乗っていた。
ハンクは銃の弾の装填をしながら、馬の手綱を握るセルバフに話しかける。
「流石は【セルバフ】さん、馬車の操縦の腕は一流ですね?」
「うっさい【ハンク】、気が散る!ただでさえ暗いのに……!」
セルバフとハンクはお互いを見やった後、目をそらした。
「それでは隊長。作戦前最後の指示を。」
ガレスの一声にマリスタは頷き、話し始めた。
「依頼の魔物の巣の前から馬車を降り次第、【パルシャ】を先頭に、一気に突っ込む。」
「うん………!」
パルシャはその小さな体とは似合わない大型な盾を後ろに背負って頷く。
「敵と遭遇次第、セルバフとハンク、【スカー】が敵をかく乱。その後は、2人1組に別れて敵を叩く。いいな?」
マリスタに、「了解!」と全員が返事をする。
「ジャミル。今回も部屋の掃除当番よろしくな?」
ハンクが隣に座るジャミルの肩を叩いて言う。
「なっ!?今回は絶対やりませんから!討伐数を稼いでみせますから、今回はハンクさんの番ですよ!?」
「はっはっは!この間の任務、討伐数2体の奴に言われたくないね?」
「あれ、ハンク?あんた前回何体だっけ?」
「4体だけど?」
「はぁ……。それでよく言うよ…………。」
セルバフが呆れてため息をつく。
「桜、今回は負けないからね?」
「へ?わ、私ですか!?」
「あんたこの前40体くらい倒してたよね?」
「そ、そうでしたっけ………?」
「そう。あたしより3体多かったのは覚えてる。」
「は、はあ………?(全く覚えてません!)」
桜は首を傾げた。
「ま、まあ。スカーや隊長・副隊長には敵わないけどね?」
「なーに。俺は最初のかく乱で稼いでるだけだけどね?」
「あんたは特に!」
得意顔のスカーに対し、セルバフが不機嫌そうに馬を走らせる。
「桜、帰ったら何、作る………?」
パルシャが桜の腕をつんつんとつついて尋ねる。
「うーん、そうですねー………?北野………エヘン!…………ジャミル君は何か作りたい物はありますか?」
「ん?僕は〜……パンかな?」
「良いですね!パンにしましょう!」
「パン…………っ!うん!」
パルシャは嬉しそうに頷いた。
「ふー………。この隊の緊張感の無さと言ったら……………。」
「良いじゃないか、ガレス。隊が明るいのは良い事だ。それに皆、やる時はしっかりとやってくれる。」
「まあ、それが唯一の救いですね…………。」
マリスタとガレスは、賑やかな馬車の荷台内の様子を微笑ましく見ていた。
「隊長、着きましたよ!」
セルバフが馬を止めて、荷台の中に呼びかける。
「よし、それでは皆、出撃だ!」
「「「了解っ!!」」」
隊長に続き、慎二を含めた7人は一斉に荷台から飛び降りる。
慎二と桜は深呼吸をして、自身の得物に手をかけた。




