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夢道の世界  作者: ジニー
第1章 夢の始まり
16/48

1ー14 「友を越えて……」

「ジャミルっ!!」

ダクは慎二が吹き飛ばされたのを見て、思わず走り出した。しかし、前を見ると、ゴーレムが剣を投げようと振りかぶる。その事に、まだ慎二は気づいていない。

「危ねえっ!」

ダクは慎二を守るように前に立つ。しかし、慎二を守る事は出来たが、自分自身の防御が遅れてしまった。


ズンッ!


致命傷を受けたダクは斧を手から落とし、へなへなと座り込むと、慎二はすぐさまダクの所に駆け寄った。

「ダクっ!」

慎二はそのまま倒れそうになるダクの体を支える。

「しまった……自分の事、何も考えてなかった…………。でも、お前が無事って事は……何とか間に合ったみたい………だな…………?」



「き、貴様ーーーっ!!」

マリスタはゴーレムに向かって剣を薙ぎ払うが、軽々と躱される。

躱したゴーレムは、マリスタに回し蹴りを放った。

マリスタはギリギリ剣で防ぎ切り、間合いを取る。

「はぁ…はぁ…………。………っ!?」

その時、マリスタは立ちくらみの様なものから、剣を地面に立て、膝をついた。

マリスタは頭の傷が思った以上に深く、一向に出血が止まなかった。更に、右手が痺れ始め、剣を持つ手から力が抜けてきていた。

「これは………少しまずいな…………!」

マリスタはなんとか立ち上がるも、思うように動けず、立っているだけで精一杯な状況だった。

そこをゴーレムは見逃さず、次々と連撃を繰り出していき、マリスタは少しずつ押され始める。

「くっ!このままだと………グフッ!?」

ついにマリスタの鳩尾に、ゴーレムの強烈な拳が入った。



「待ってろ、今助ける!」

慎二は手元のポーチから布を取り出し、出血を止めようとする。しかし止めるどころか、さらに血が溢れ出すばかりである。

「くそ!どうすれば………!」

慎二は次に包帯を取り出すが、剣が刺さっている以上、どうやって巻いたらいいのかが分からなかった。

「……もういい…………。」

ダクは何とかしようと奮闘する慎二の手を払った。

「何、言ってるんだよ…………!?僕のせいで、こんな………!」

「だから、いいって………!」

「く…………っ!」

慎二は包帯を持つ手を下ろして俯いた。

「俺はな………」

ダクが微かな声で話し出した。

「お前が………ジャミルじゃないってのは、雰囲気からして会った時からなんとなく分かってた………気がするんだ…………。」

「え…………?」

慎二は顔を上げた。

「でもな、俺が……俺自身がそれを認めなかった………。外見だけじゃなくて、話し方とか、考え方とか、性格も、全て…………。全てが、あいつそのものだったんだよ……………。………ゴホ………!」

ダクは口から血を吐き出し、ゲホゲホと咳き込み始めた。

「もう良い!これ以上喋ったらもう………っ!」

「最後に……1つ聞きたい…………。」

「……っ!?な、何……………?」

ダクの「最後に」という言葉を聞き、涙が込み上げる。

「あいつと同じ様に、俺は、お前の友達か………」

ダクが慎二の前に、血だらけの手を挙げた。それを慎二は力強く握って返答した。

「な、何、言ってるんだよ?さっき言ったよ!?ジャミルも、僕も、それに桜、健二、真琴だって、みんな友達だよ!?だから、だから僕はね……!?僕は…………」

慎二がまだ話している最中、ダクの手が慎二の手から落ち、先程まで動いていた心臓の動きが止まった。

慎二の体から血の気が引いていく。

「ダク………?ねえ、起きてよ………!?ねえ、ねえってばっ!!」

慎二はダクの肩を揺すったり、呼吸を確認したりしたが、何の反応も無かった。

「くっそーーーーっ!!」

慎二は、地面に拳を叩きつけた。

「僕のせいだ!僕が自分勝手にしないで、もっと周りを見ていればダクは、ダクは…………!」





「全く………お前も後もう少しで死ぬ所だったのだぞ?」

あの草原でまた、ドラークが話しかけて来た。

「なんで………なんでもっと早く言ってくれなかったのさ………!?」

「私は何回もお前に話しかけた。だが、お前がそれに応じなかっただろう?違うか?」

ドラークは淡々とした話し方で言った。

「何回も………?」

「ああ、何回もだ。多分お前は葛藤に駆られて、周りの音など何も聞こえていなかったのだろう?」

「そ、そんな………。」

慎二は膝をついた。

「やっぱり、やっぱり僕は駄目な奴だ………。」

「何…………?」

「何をしたって失敗ばっか。すぐに自分の感情に揺さぶられて他人に迷惑ばっかりかける。どうしようもない奴だよ……………。」

慎二の目から涙が落ちる。自分の不甲斐なさを悔やむ様に、ポロポロと涙が溢れる。

「…………だったらどうする?」

ふと、ドラークが口を開いた。

「確かにお前は阿保だ。先程までの様に、お前は他の奴らとは違ってロクに戦えないのにも関わらず、只々前に突っ走る阿保の極みだ。………だがな、お前はお前で、他の奴には持ってないものを持っている。」

「え………?」

「1つは思いやりだ。自分の事ではなく誰かを。ましてや、前まで全く知り合いでも何でも無かった他人の事に対して、笑ったり、怒ったり、悲しんだりする事が出来る。」

「…………っ!」

「もう1つは、機転が利く事だ。先程、オーク相手に対して、隙をついた攻撃をしただろう?あんな事、常人なら到底真似出来ん。」

「ドラーク………。」

「お前は決して駄目な奴ではない。だが、もう少し周りを見ろ。あの若造が死んだのは確かにお前のせいだ。なら、次こういう事があった時、仲間を絶対に守ると覚悟を決めろ。………お前が守りたいものはなんだ?お前のやりたい事はなんだ?お前は何になりたい?」

「僕は…………」

ドラークの言葉に慎二が戸惑っていると、またあの事を思い出した。


[僕はよく、あの夢を見る。]


「なんだ………そんなの………もう決まってたんだった…………。」

慎二は、ゆっくり立ち上がると、ドラークに告げた。

「………僕は守りたい!僕の大切な人の笑顔を!そして、みんなを元の世界に帰したい……!」

「………そうか。なら、お前はそれに全力を尽くせ。」

「で、でもどうやって!?僕には皆みたいな技は使えないし………」

「先程から言っているだろう?だったらどうする、と。」

「ど、どうするって言われても………」

「皆と同じ事をやろうとするから出来ない。自分のやりたい様にやれ。自分で自分の限界を決めるな。」

ドラークは大きな爪の甲で、グイッと慎二を押した。

「け、けど………」

「自身の肉体構造だけに捉われるな。自分の思う様に動けばいい。ほら、仲間達が待っているぞ?」

「ちょ、ちょっと………!ドラーク…………!!」

ドラークは慎二との会話を強制的に終わらせた。






慎二は拳をを地面に叩きつける瞬間に目が覚め、寸前の所で拳を止めた。


「ぐわぁっ!!」

マリスタがゴーレムに蹴り飛ばされ、地面に転がって倒れる。その衝撃で、損傷に耐えられなくなった全身の鎧がバラバラに吹き飛んだ。

さらに、

「やべえ………っ!」

「健二君!」

「まずいぞこれ!?」

「なんか、敵が群がりすぎじゃない!?」

後ろから聞こえた桜達の声で慎二は振り返った。そこには、多くの魔物に囲まれた桜、健二、真琴の姿が見えた。



マリスタ側と桜達側、両側共危機的状況だった。

「みんな!………どうすれば良い…………っ!?」

慎二は頭を押さえながら必死に考える。そして、


自身の肉体構造だけに捉われるな。自分の思う様に動けばいい。


というドラークの言葉を思い出す。

「僕は両方とも助けたい…………!それなら………!」

慎二は足元に落ちていた、ダクの斧を手に持つ。

「自分の思う様に、自分の思う様に………!僕はみんなを…………っ!!」

慎二は斧を強く握り、横に振りかぶる。その時、

ブウンッ!

斧と共に、慎二の体が虹色に光る。

「桜っ!みんなっ!伏せてーーーっ!!」

「北野君!?………わ、分かりました!」

「お、おうっ!」

「アイサーーっ!」

声が届いたらしく、3人はすぐさま伏せた。

「いっけーーーっ!!!」

慎二は大きな斧を、横向きに力強く投げた。

投げた斧は落下する事無く飛んで行く。そして、桜達の周りにいる魔物をなぎ倒して、最終的には近くの家屋の壁に刃が突き刺さった。

桜達を襲っていた魔物は半分以下になり、残った魔物は混乱している様だった。

桜達は上体を起こすと同時に、歓喜の声をあげた。

「すごいぞ慎二!」

「グッジョ〜ブ!!」

「流石です………って、え!?今、この斧を投げたんですか!?」


「な、なんだこれ!?」

その時、慎二は光り輝く自身の体に驚いていた。

「力が、全身から溢れている………?………いや、今はそんなのどうだっていい!次は………!」



「こ、ここまでか…………っ!?」

マリスタは体を起こそうとするが、身体中が痛み起き上がれなかった。

ゴーレムは少しずつマリスタへと近づく。

「……無念………っ!」

マリスタが覚悟を決めて目をつぶった時、体がぐわっと持ち上がった。

目を開けると、慎二が自分を抱えて、数メートル後ろに後退させていた。

「し、慎二君………?」

「大丈夫ですかマリスタさん?ここにいてくださいね?」

慎二はマリスタを丁寧に建物の壁に寄りかからせる。

「これ、少しお借りします!」

慎二はマリスタの剣を預かると数歩前に出て、ゴーレムと対峙した。

それから、慎二は横に倒れるダクに目を向ける。

「もう誰も……誰1人死なせるもんか!!」

慎二が剣を構える。すると、剣と体がさらに強く虹色に光りだした。

「っ!?」

それを見たマリスタは、体を小刻みに震わせる。

「虹色の………騎士…………?」



ゴーレムは、剣を構える慎二を見て、首をゴキゴキと左右に捻る。そして、

「ヒトノコゼンイン…………マッサツ……スル…………。」

そう小さく呟くと慎二に突撃し、前蹴りを放つ。

慎二はそれを横に受け流し、ゴーレムの背後に回って剣を振り下ろした。ゴーレムは瞬時に反応して振り返り、腕をクロスにさせて、剣を受け止める。

バチバチと音を鳴らす、慎二の剣とゴーレムの腕。

「ふぅ………っ!」

慎二は腕に力を込め、振り下ろす力を強めていく。

「っ!????」

ゴーレムはその力に耐えれなくなり、片膝をついた。剣を守る腕にビキビキとヒビが入っていくのが分かった。

「そこだ!」

慎二はそれを見逃さず、ゴーレムの脛を力強く蹴り、体勢を崩させる。そして、剣を構え直して横に薙ぎ払った。

しかしゴーレムはその一瞬で体勢を立て直し、慎二の攻撃を躱して後ろに引き退がった。

(やはり速い!通常の攻撃もあの速さから来てるものなのか………?)

慎二はゴーレムの動きを観察して驚く。

「ヒトノコ……マッサツ…スル……!」

ゴーレムはヒビの入った腕を一瞬で修復し終えた。

(それに、あの再生能力………一太刀入れただけじゃ無理か…………なら!)

慎二はさらに腕の力を強める………かと思いきや、逆に力を抜いて、発光状態から元に戻った。

ゴーレムはそのチャンスを見逃さず、慎二に高速で近づき、拳を下から上へ振り上げ、慎二の剣を上にはじき飛ばした。そして、力いっぱいのパンチを慎二に放とうとした。

ゴーレムはふと慎二の顔を見る。そこには彼の想像していた、人間の焦りと絶望の表情とは違って、余裕のある表情を浮かべていた。

「もらった!」

慎二は一瞬で全身に力を込めて発光状態になった。それから慎二は跳躍してパンチを躱し、はじき飛ばされた剣を取ると、上から下へ向かって振り下ろす。

「やぁぁぁぁーーっ!!」

攻撃が外れた反動でバランスの崩れたゴーレムは動けず、体が半分に割れる。

「まだぁっ!」

それから慎二は高速で、次から次へとゴーレムの体を斬り刻んだ。

バラバラになったゴーレムの体は元の形に戻るため破片を集めようとするが、再生が追いつかず結局破片はバラバラと地面に崩れ落ち、ピクリとも動かなくなった。



「ふう〜!やったの………か?」

ピクリとも動かないゴーレムの体の破片を見た慎二は、不思議ながらも、自身の発光状態を解いた。

「この力は……一体……?」

《力の共鳴……………》

「え?」

《いや、何でもない……………。それよりも慎二。その力は強大だ。いつでも使えると思って、油断するなよ?》

「そ、そうだね………。」

ドラークが何か言いかけていた事が少し気になったが、今は置いておこう。と、慎二は思った。



慎二はマリスタの所に行き、剣を返した。

「剣、ありがとうございます………。」

「あ、ああ………。」

マリスタは驚きと動揺の中、剣を受け取った。

そのまま、慎二はダクの死体まで歩いて行き、ゆっくりと、腹に刺さる剣を抜いた。

「ごめん………。でも、僕はもう大切な人を誰も死なせない。だから、出来たら見ていてくれると嬉しい。ジャミルと一緒に………。」

死体の前で手を合わせる。

慎二は自分の剣を鞘に収めて、道に落ちた拳銃も拾った。

周りの魔物を粗方倒し終えた桜達も、ダクの所に集まった。

慎二がダクの死体を背負った。

「さあ、僕らも役場に戻ろう………。」

慎二が歩き出そうとした時、

「マリスタ中尉ーーーっ!」

1騎の馬が壊れた村の門を飛び越えて入って来た。マリスタの前に来ると、急いで馬から飛び降りた。

「ご無事でしたか!?頭から血が………、鎧はどうしたんですか!?」

「ガレス准尉!何故貴殿1人が此処に?」

「この村の役場に旅団を泊めれるかを聞きに行ったきり、何時間待っても一向に戻って来なかったため、何かあったのかと単身で村に近付くと煙が上がっていたもので、大急ぎでやって来たのです!数分後には残りの兵もやって来ますよ!」

「そうか、それは助かる………。見ての通り、装備は重度の損傷により大破したんだ。これは、また新しいのが必要になるな………。」

「中尉の装備を破壊するなんて………どんなのと戦っていたのですか?」

「『これら』だ………。」

マリスタは周囲に目を泳がす。ガレスは周りを見回すと、そこには崩れ落ちた家屋や人・魔物の死体が至る所に転がっていた。

「な、なんと………!」

ガレスは唖然とした。

「それより、私は彼らと共に奥にある村の役場に向かう。ガレスは後から来る中隊と共に、村の復興作業の指揮を執って欲しい。まだこの周辺に魔物が数体いるから注意してくれ。」

「はい、お任せ下さい!」

ガレスは敬礼した。

「頼んだぞ!………それでは、我々はもう行こう。」

マリスタも敬礼を返すと慎二達の方を向いて、役場に向かって歩き出した。

「あ………?(これは、ダクの………)」

健二は歩きざまに、壁に刺さったダクの斧を引き抜き、両手で大事に握った。


何時間経ったのか。気付けばもう陽は暮れようとしていた。


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