1ー12 「誰かを守りたい気持ち」
「おい、慎二!前にいるぞ!」
健二が指差した方向には、人型の巨体で、両手に剣を持ち、緑のゴツゴツした肌の魔物がいた。
「【オーク】だ!どうすんだよジャミル!?」
慎二は、ふとオークの足にあったものに目がとまると、たちまちに表情が変わる。
「北野君、どうしたんですか?」
リボルバーをグリグリと強く握りしめる慎二に桜が気づく。
「……そんなの決まってる。」
「え?」
「殺るんだ!!」
慎二は1人、オークに向かって走り出した。
「北野君!?」
「無茶だ!」
4人が呼ぶも、慎二は足を止めない。
(落ち着け……。落ち着けばいける!)
慎二は自分の気持ちを落ち着かせながら走る。
リボルバーのトリガーに手をかけた慎二に気付いたオークは、走ってくる慎二を捉え、ついにはお互い、標的に向かって走っていた。
「ガァァァァーーッ!!」
「やぁぁぁぁーーっ!!」
オークが、両方の剣を同時に振り下ろす。
「ふっ!」
すると慎二は、それが分かっていたかの様に、スライディングで躱すと、そのままオークの股をすり抜け、背後に回った。
オークは突然の出来事に敵を見失い、左右を見渡していた。
慎二はそれを逃さずに素早く立ち上がってリボルバーを構えると、
「当たれっ!!」
力任せにトリガーを引いた。
ズガンッ!!
村に1発の銃声が響く。
「ウ……ガ…………。」
オークは体を前に倒した。銃弾は見事、オークの後頭部に命中していた。
「はぁっ、はぁっ……。やった………やった……!」
慎二は、初めて撃った銃の反動で手が震える中、手を挙げて喜んだ。
しかし、
「ガァァ………!」
「ん?」
背後から、おぞましい唸り声が聞こえた。
振り返ると、先程の銃声に気付いたオークが、さらに3体走って来ていた。
「あ!しまった!!」
慎二がリボルバーを構えた時、前に誰かが立ちふさがる。
「ジャミル君、さがれ。」
「え?」
割り込んだのは、昼間の女性、マリスタだった。
「マリスタさん!」
「すぐに終わらせる……!」
マリスタは鞘から剣を抜く。すると、剣が青色に光り出した。
それと同時にマリスタも敵に向かって走り出した。
「ウガァァーーッ!!」
「はあっ!」
3体のオークが、マリスタを斬ろうと剣を振り下ろす。それをマリスタは軽々と躱し、すれ違い様に剣で、オークの腹や胸を斬り裂いた。
そして、致命傷を負ったオーク3体だけが地面に倒れる。マリスタは一切の無傷である。
「ふぅ………。」
マリスタが剣に付いた血を払うと、同時に剣の青い光りが消える。
「北野君っ!!」
桜達が遅れてやって来た。
「ちょっと!なんで勝手に1人で凸っちゃうのさ!?」
真琴が怒っているのか驚いているのかわからない表情で言った。
「そうだぜ!危ないだろ!?」
慎二は俯いた。
「ジャミル、少しは状況を考えろよ!?」
「人が殺されてたんだ………。」
「え?」
慎二が1体目のゴーレムが倒れている地面を指差して言うと、ダクが彼の指さす方を見た。それを見て、ダクも思わず固まった。
「………っ!」
そこには、子供とその母親であろう親子と、それを守ろうとしたのであろう憲兵の、無残に斬り捨てられた死体があった。
「あまり見ないで。みんなが気づくよ………?。」
「………そうか、悪い。」
ダクはすぐにそれから目を離した。
「みんな。」
先程まで黙っていたマリスタが口を開けた。
「なぜ君達はこんな所にいる?早く役場へ逃げるんだ!」
「それは、逃げ遅れた人を助けようとして……」
「だめだ。」
「いや、でも………」
「ここの憲兵じゃ人手不足だってダクが言ってたよ?」
「だから俺らにも出来る事があるんじゃないかと思って……」
「本気で言っているのか…………?これは遊びでも訓練でもないんだぞ………っ!?」
「私達だって分かってます。みんなで協力すれば、きっと…………」
「だめだっ!!」
マリスタは5人の言葉をかき消す様に、大きな声で言った。
「「「「「…………………っ!」」」」」
5人はそれを聞いて、下を向いて黙った。
「良いか?これは人と魔物の殺し合いだ。子供が来ていい所ではない。分かったか?分かったなら、早く役場に………」
「嫌です……!!」
慎二が顔あげて言った
「え……?」
「なんでそんな事を言うんですか!?」
「な!?」
マリスタは、慎二の強硬な姿勢に少し驚く。
「確かに、貴女は軍人で強くて、僕達には考えられない、色んな修羅場をくぐり抜けてきたのかもしれない。……けど、誰かを守りたいって気持ちは、子供も大人も変わらないと思うんです!」
「おい!やめろジャミル!」
ダクがやめさせようと、慎二の肩に手を置くが、慎二はその手を払いのけた。
「貴女もここにいるって事は、僕らと目的は同じって事ですよね!?………お願いです!僕らも連れてってください!!」
マリスタは慎二の真っ直ぐな目を見た。
その目を見て、士官学校時代に言われた言葉を自然に思い出した。
「マリスタの目って、いつも真っ直ぐで綺麗な目をしていますね。」
普段自分が鏡で見ていても理解出来なかったそれが、今、慎二を見て彼女は分かった気がした。
(彼は、私と…………)
マリスタは腕を組んで考えた。
「マリスタさん!」
慎二の真剣な声が耳に入った。
そして、思わずふふっと笑い、答えを言った。
「……分かった。君達の同行を許そう。」
マリスタの答えに慎二は喜び、慎二を除く4人は驚いた。
「ただし!」
マリスタは慎二の口に、人差し指を置いた。
「5人は私の傍を離れずに、出来る限り無茶は避けて欲しい。良いな?」
「「「「「はい!」」」」」
マリスタは人差し指をどけた。
「では、行こうか。」
「あ、あの!」
「ん、なんだいジャミル君?」
「その……ありがとうございます!」
慎二が頭を下げると、マリスタは慎二の頭をすぐに上げさせた。そして、左肩に手を置いた。
「?」
「君を見て、4年前の自分を思い出したんだ。まだ見習いだった頃の自分をね?少し前の事なのに、とても懐かしく感じるよ……!」
マリスタは慎二を見て、軽く微笑んだ。
それを見た慎二は、何故か最後、少し気恥かしくなってしまい、目を逸らした。
「さあ、行こうか?「北野 慎二」君?」
「っ!はいっ!!」
慎二はそれを聞いて、一瞬驚いた後、笑顔で返事した。
あくまで、私は不定期に投稿しています。1週間以上投稿出来ない時もあるかもしれませんが、ご了承ください。
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