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夢道の世界  作者: ジニー
第1章 夢の始まり
13/48

1ー11 「相変わらずの無鉄砲」

桜は(失礼な事に)意外と軽かったため、慎二はあまりみんなと遅れずに走ることが出来た。

「(くそ!)」

ダクは内心、とても悔やんでいた。

なんで自分はおやっさんを助けようとしなかったのか。もしかしたら、彼が犠牲にならなくてもいい方法があったのかもしれない。

(くそ!くそ!)

慎二は悔やみながら、がむしゃらに前へと走った。


「どうなってんだ!?こんなに魔物が多人数で村を襲うなんて……。こんなのおかしいぞ!」

5人は辺りから聞こえる魔物の雄叫びや、人の叫び声、破壊音などが聞こえても、後ろを向かずに、だだがむしゃらに走った。

数分後、ジャミルの家に着いた。

「来た!着いたよ!」


慎二はドアを急いで開き、みんなが入った事を確認すると、すぐさまドアを閉め、内側から施錠した。

「ふう……。ここら辺は中心街の外れだから、しばらくは大丈夫だと思うよ。」

「ハアハア……。畜生!」

ダクは柱に拳を叩きつけた。

「俺が、俺がもっと早く斧を出していれば……」

「ダク、おじさんが死んだのは君のせいじゃない。それに、使い方の知らない物でどうやって戦おうとしたのさ?」

「けどよ!何もしないよりはマシだったろ!?」

「おい、やめろやめろ!」

健二がダクを制止した。

「もう過ぎた事だ。まずは俺達5人が生き残れる事だけを考えよう。あのおっさんの助けを無駄にする気か?」

何故か、今の健二は冷静だった。

「……分かった、そうするよ……。」

ダクはとりあえず椅子に座った。

「なんか健二、すごい落ち着いてない?」

真琴が健二の顔を覗き込むようにして言った。

「昔、家が火事になった事があったからな。状況は全然違うけどさ、災害時はパニックなったり熱くなったりしちゃいけねーって学んだからな。」

「そうなんだ〜。でも、今この状況は災害時……なのかな?」

「んなの俺が知るかよ。」

慎二は壁に寄りかかって俯いている桜の方に近づいた。

「桜、大丈夫?」

「………はい。すみません。でも、もう大丈夫です。」

「そっか。なら良かった。みんな、武器の準備をしよう。」

慎二は壁に立て掛けてある、自分の装備を手に取った。


「そんなに責任を感じているのなら、お前があの3人を、死に物狂いで守れば良い。」


(今は、何をしてでもみんなを守らなくちゃ……!)



「ジャミル。役場まで何分で着くか分かるか?」

「大体15分くらいかな?」

「よし。じゃあどうやって向かう?」

ダクは慎重に、窓から外の様子を眺めている。

「……僕は役場には行かない。」

「は?」

「え?」

ダクは窓から目を離して、慎二の方を向いた。

「……い、今何て言った?」

「ここの憲兵だけじゃ人手不足だ。僕は門の周りで、逃げ遅れた人を助けに行く。まず僕が外に出て魔物を少し離れた所に誘き寄せるから、4人はその隙に逃げて欲しい。」

慎二は装備を装着し終わる。

「な!?」

「ちょ、お前正気かよ!?」

ダクの他に、同じく装備を装着し終わった健二、真琴、桜も驚きの表情である。

「し、慎ちゃん運動オンチだから無理だって!」

「でも、逃げ遅れた人を見殺しには出来ない。」

「おい、ちょっと待てよ、お前……!」

ダクと健二が詰め寄ろうとした時、2人よりも、桜が先に慎二の行く手をふさいだ。

「桜………。」

「行かないでください……。」

「桜、ごめん。僕は……」

「行かないでください北野君っ!!」

桜は慎二の目をしっかりと捉えて言った。

「(桜、完璧北野君って言っちゃってるし……)」

「(しっ!真琴、今は黙っとこう……!)」

健二と真琴は小声で会話していた。

桜は、慎二の肩を掴み、揺さぶった。

「私、嫌なんです!さっき死んだ人が北野君や、他のみんなだと思うと…………本当に……本当に嫌なんです………!」

桜は、目からポロポロと涙が溢れていた。

「だから、だから……。」

「…………っ!」

慎二は一瞬躊躇する。桜が必死に自分の事を止めているのを見て、自分のやろうとしている事は、本当に正しいのかと考えてしまう。

しかし、慎二には子供の頃からの理想がある。

その1歩を今、自分は踏み出そうとしている。


「もう迷わない!」


そう決めたのである。

慎二は、泣き続ける桜の頭をそっと撫でた。

「………え、え?」

桜は、今自分がされている事に、思考が追いついていなかった。

「ありがとう、桜。でも、僕はやらなきゃいけない……いや、やりたいんだ。」

「………で、でもそれじゃあ……」

「僕は、もう、さっきみたいに誰かが悲しむ所を見たくないんだ。もちろん桜の事もね。だから、僕も死なないし、誰も殺させない。僕はみんなにはいつでも笑っていて欲しいんだ。」

「北野君……。」

「だから行かせて。お願いだ………!」

慎二は台所に行き、鍋の蓋を盾のようにして左手に持ち、右手でリボルバーを構えた。

そして、玄関のドアを開けようと思った時、誰かが、慎二の左手を掴んだ。

「………え?」

振り向くと、手を握っていたのは桜だと分かった。

「私も……私も一緒に行きます!」

「駄目だよ。」

「なぜですか!?」

「あそこに戻るのは危険だ。死んじゃうかもしれないんだ。」

「分かってます!でも、それは北野君も同じ事だと思います!」

「……っ!?そ、それは………。」

「だから私も行きます。幼馴染みを1人にしてはおけませんしね。」

桜はニコッと笑顔を見せた。

「……っ!」

桜の後ろの3人も、玄関にやって来た。

「俺達を置いていくなよ?」

「プッ!何そのベタな台詞〜っ!?」

「うっせぇなっ!真琴!!」

「健二、真琴、ダク……。」

「まあ俺もさ、誰かを見殺しにするのは嫌いなんでね。」

健二が首を回しながら言った。

「案外、みんなで行ったらワンチャンスあるかもだし………ね?」

真琴はこの状況下でも、変わらず笑顔のままだった。

「お前のお人好しと無鉄砲さは、相変わらず変わんねーよなぁ〜?いつもは周りで呆れて見てたけどよ、今日は俺もそれに付き合ってやる……!」

「ダク………!」

ダクはグッと親指を立てた。

4人は覚悟を決めている様だった。

(仕方がない。なら、より一層頑張らなければ……!)

「みんな、ありがとう………!」

慎二は本当に嬉しかった。


「……それじゃあ、外に出るよ?」

慎二がドアノブに手をかけると、4人は、コクッと頷いた。

慎二は勢い良くドアを開け、外に飛び出して、リボルバーを構えた。

「よし、付近にはいないみたいだ。じゃあさっきのとこまで戻ろう。」

「「「「オーケー!!」」」」

5人は再び走った。


「ところで健二、なんで桜はジャミルの事を「キタノ君」って呼んでるんだ?」

走っている最中、あの時、ダクが疑問に思った事を聞いた。

「あー……、それは……あのな………?」

健二が言葉を詰まらせていると、「やっぱりか〜!」と、ダクは頷いた。

「あいつは外見も性格もジャミルそっくりだけど、本当はジャミルじゃないんだろ?」

「え!?いや〜………」

「お前達3人のあいつに対する接し方を見れば分かる。あいつはお前達の昔からの友達だってな。……ってことだから、あいつはもう………」

「それは違うよ、ダク。」

前を走る慎二が彼の言葉を遮る様にして言った。

「ジャミルは死んでない。なんでかは分からないけど、ジャミルの意識はちゃんと僕の中にある。彼はきっと僕に、「僕の親友をよろしく」って言ってる。だからダクも、僕の大切な友達だ。」

そんな事言ってる訳がない。そもそも、記憶にはあっても、彼がどんな性格だったのかなんて全然分からなかった。

「ジャミル、あいつ………」

しかしその慎二の言葉に対し、ダクは笑っていた。

「じゃあ、これからお前の事は、「慎二」で良いのか?」

「いや、呼びやすい呼び方で構わないよ。」

「……分かった。じゃあ改めてよろしくな、「ジャミル」!」

「………うん!こちらこそよろしく、ダク!」


《悪い、言い忘れてた。》

心の中で、ドラークが話しかけた。

「何を?」

《私とお前が契約する為には、ここの世界の肉体を使う必要があった。だから、崖からの落下で死んでいたお前そっくりの男の身体にお前と私の魂を移したのだった。》

「え、そうだったの?……そうか、だからジャミルの記憶が………でも、じゃあ僕の身体は?」

《安心しろ。あの空間に置いてきてある。元の世界に戻る時に、魂を入れ替えてやるつもりだ》

「……なんだ、そうだったのか。もっと早く言ってよ?」

《悪いな。完全に忘れていた……。》

意外と、ドラークは真面目なのだと、慎二は思った。

「………分かった。良いよ。それでさ、ドラーク?僕は、どうにかあの3人を守ろうと思う。」

《………そうか。なら話は終わりだ。》


そうして、彼らは迷う事なく村の門を目指して走り出す。この先にどんな現実が待っているのかも知らずに…………。

実を言うと、1週間前くらいまでは小説投稿に飽き気味だったのですが(笑)、再び火が点いたような気がします^_^

これからもよろしくお願いします!

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