1ー10 「あっという間な昼食」
グロテスクな表現にご注意を………。
「うん、美味い!」
「そっかー、良かったよ!」
「あ〜、これも美味しいよ、健二!」
健二、真琴、ダクは頼んだ鶏肉やらなんやらを、次々と平らげていた。
「す、すごい食欲ですね?昨日もでしたが………。」
少食の桜は、3人の食欲に圧倒されていた。
そんな中、慎二は食事の手が止まっていた。
「あの、北野君。本当に大丈夫ですか?」
「…………」
「北野君。」
桜が慎二の肩をつつくと、慎二は桜に顔を向けた?
「………ん?」
「なんか、先程から元気が無い様に見えるんですけど………」
「ん………いやいや。そんな事ないよ?」
「そうですか………?」
「お前さん達昼からすげえ食べるなー!旅の人かい?」
健二達(主に真琴)の食べっぷりに満足した店主のおじさんが聞いた。
「「はい!」」
健二と真琴は元気に返事をした。
「俺は違うよ……まだな。」
「ダク、最初からお前には聞いてねえぞ?………旅の目的地とかはあるのか?」
「ラクナってとこに行きたいんです。」
健二が元気に答えた。
「げ、ラクナだって!?あの伝説の!?」
店主は驚いて、椅子から立ち上がった。
「確か噂だと、もっともっと東の方にあるんだろ?そこら辺はまだ未開拓な地らしいぞ?」
「はい、分かってます!」
店主は再び椅子に座った。
「そういえば、ジャミル。お前の親もラクナを目指して「た」んだろ?お前さんはどうなんだ?」
「目指してたって、しん………ジャミル。お前の親、家にいなかったけど、今は何してるんだ?」
「ちょ、健二。その事はあまりジャミルの前で言わない方が…………」
ダクが健二の言葉を止めた。
「……ああ、両親は僕が生まれて間もない頃に旅に出て、僕が4つくらいの頃に、2人の旅仲間から手紙が届いてさ。「2人は大きな竜巻に巻き込まれて行方知らず」って書いてあったんだ。」
「そ、そんな……。」
桜は俯いた。すると、他の全員も黙ってしまった。
「ちょっと、そんなしんみりしないでよ。も、もう10年以上前の事なんだし……。」
それに、自分の本当の親じゃないし。とは言わなかった。
「悪いな、ジャミル……。」
健二が頭を下げて謝った。
「そんな、別に謝らなくていいよ(僕に言われてもちょっと困るし………)。………ほ、ほらみんなもっ!楽しい昼食の時間が台無しになっちゃうよ?」
そう言うと、また少しずつそれぞれが食事を進め始めた。
「それで、お前もやっぱりラクナを目指してるのか?」
「あ、それは…………その………」
店主は真剣な目で聞く。しかし、慎二はすぐに返答出来なかった。
慎二が答えられずに、言葉を濁らせていた時、
カンッ!カンッ!カンッ!カン………!!
店内に響き渡るほどの、大きな鐘の音がした。
「なんだなんだ!?」
健二が口に入れようとしていたチキンを皿に置いた。
「警報!?」
「何が起きたんだ!?」
すると、店内に村の憲兵が大急ぎで入って来た。
「お前ら!村に魔物の大群が押し寄せて来た!早く村の役場まで逃げろ!」
「役場って、こっからかなり遠いぞ!?」
ダクが外を指さした。この店は門の近くにあるのに対して、役場は村の1番奥にあるのだ。
「いいから!お前ら外に出ろ!」
店主のおじさんが、フライパンを片手に持って、ダクの手を引いて、外に出るように促した。
それに続くように、慎二達4人や、他の客も外に出た。
辺りを見渡すと、至る所から火があがっていた。家から、沢山人が外に出てきて、一斉に役場を目指して走っていた。
「おいおい……!こりゃあ只事じゃねえぞ!?」
健二がその光景を見て唖然とした。
「ちょちょっ!みんな、あれ!」
真琴が指さした方をみんなが見た。
そこには、人の形をしたものや、狼型、猪型、また、そのどれにも該当しないような謎の生き物が、店の看板などをなぎ倒し、逃げ惑う人々に襲いかかっていた。
「「魔物だ!」」
ダクとジャミルは同時に叫んだ。
「おいダク!今背中に背負ってるさっき買ったそれ、役に立つかもしれないぞ?」
ダクは背中の大斧に手で触れた。
「あ、そうか!………そんじゃ、さっさと逃げようぜっ!?」
「……………」
「ジャミルっ!」
「……助けなきゃ…………っ!」
「はぁっ!?」
「このまま逃げる訳には行かない!僕は今武器を持って来てないから、家に取りに戻る。」
「お前何言ってんだっ!?逃げないのかよ!?俺達みたいな子供じゃ…………」
「ジャミル君、ダク君!お話中に悪いんですけど………」
「もう話してる時間なんてないかもね!」
桜と真琴が門の方を見るのに習って、2人もそちらを向くと、魔物が、こちらに向かって走って来ていた。
「おいおい、こっち来てるじゃねえかよ!」
健二が走る準備をしだした。
「ダク、とりあえず走ろう!」
「おう!なんだかやばそうだ……!」
5人が走り出したその時、
「ガウ……!」
前方の路地から、狼型の魔物が飛び出して来て、こちらを睨みつけ、4足の瞬発的な速さで、こちらへと向かって来た。
5人は足を止めようとしたが間に合わない。
「や、やば!!」
ダクが斧を構えるよりも早く、狼がダク目がけて飛びかかって来た。
「危ない!!」
しかしそれよりも早く、先程の店主のおじさんが前に飛び出した。
そのまま魔物は店主に飛び付き、腕に噛み付いた。
「ぐっ!!」
店主はそのまま倒れて、魔物を引き離そうともがいていた。
「おやっさん!!」
ダクが斧を取ろうするが、その店主はそれを手で制止した。
「お、おやっさん!?」
「俺の事は気にすんなっ!行け!」
「で、でも………!」
「早く行けーーーー!!」
それでもダクは駆け寄ろうとしたため、それを健二は止めて、手を引いて走り出した。
その内、魔物の勢いに負け、店主は喉元に噛みつかれた。
「ぐ、ぐわぁーーーっ!!」
「おやっさん!おやっさーーーーんっ!!」
魔物が喉を勢いよく噛みちぎると同時に、先程まで激しくもがいていた店主の体が止まった。
「うわぁっ……!グロ……。」
「あ、あ………!」
「2人共!」
それを間近で見て動揺して止まっていた真琴の手を慎二が引いて健二の方へと流した。しかし、桜はその場にへなへなと座り込んでしまっていた。
魔物は、後からやって来た魔物と共に、店主の体を喰らいだした。辺りには血しぶきと悲鳴が飛び交っていた。
「い、いや……だめ………っ!」
「桜!桜!」
慎二が肩を揺するも、桜は動かなかった。
「く……仕方ないっ!」
慎二は桜の手を自分の肩に乗せて、勢いよく担いだ。
「え……北野…君?」
「歩けるようになったら言ってよ?」
慎二はそのまま、前を走る3人の元へと向かった。




