1ー9 「責任と出会い」
眠りについてから気が付けば、慎二はまたあの草原にいた。
「またここ?なんで……?」
「私が呼んだからだ。」
慎二は後ろから聞こえた声で振り返った。
「っ!」
慎二は2、3歩後退した。そこには大きな竜が立っていた。
「驚かせてすまない。私はあの時の「声」と言えば分かるか?」
「そ、そうだったんだ……。もしかして、あの時村の方角を教えてくれたのは、あの……」
「私の名前は【ドラーク】だ。そう。あの時言ったのは私だ。この世界に来る時、4人の中の1人、お前とだけ契約した。できる限りは面倒を見てやる。」
「なんで僕なの?」
「お前が1番口が堅そうだからだ。それに………」
「それに?」
「お前を1番助けるべきだと思ったからだ。」
「そ、そうですか……。」
運動能力的に、まあ確かにその通りだと、慎二は渋々納得した。
「先程口が堅そうと言ったが、私の存在は他の奴には内緒にしろ。あの3人にもだ。頼んだぞ。」
「は、はあ。」
「今日はそれを伝えたかっただけだ。じゃあな。」
ドラークは後ろに身体を向け、後ろに戻って行こうとした。
「ちょっと待って。」
慎二はそれを制止した。
「……どうした?」
「1つ聞きたいことがあるんだけど……。」
「なんだ?」
「この世界に来た理由は、全部僕のせいなんでしょう。なんでそれを3人に言わなかったの?」
あのアタッシュケースの中の石を触った事がきっかけだと、彼の話を聞いて慎二は確信したからである。
「言う必要はない、と思った。」
「なんで?」
ドラークは慎二の方に向き直った。
「別に、お前だけが悪いという訳ではない。あれはいつか、必ずは起こり得た事だ。それに、言った所で、奴ら3人は、今回と同じ決断をしただろうと私は思う。」
「でも……!」
「お前のやった事は、確かにこれからの歴史を大きく動かす事になるかも知れない。だがそれは結果にすぎない。あまり深く考えるな。」
「う、うん………。」
慎二は不器用に頷いた。
「そんなに責任を感じているのなら、お前があの3人を、死に物狂いで守れば良い。」
「死に物狂いで………。」
「話はそれだけか?それではもう私は行くぞ。」
ドラークはあっという間に、草原の奥へと歩いて消えていった。
慎二は窓から差し込む日の光で目覚めた。
「「あまり深く考えるな」って言われても……。」
慎二は部屋を出て、1階に降りた。
4人は朝食をとっていた。しかし、慎二は1人、食事の手が動いていなかった。
「ん、どうしたの慎二?私の作ったスパゲッティ美味しくない?」
「……え、いや。すっごい美味しいよ。早い時間から作ってくれたんだって?」
「そうなんだよ〜。スパゲッティの麺が無かったから使えそうな粉を店で探してね、頑張って麺から作ったんだよ!」
真琴はエッヘン!と自慢げである。
「真琴……。本当にスパゲッティが食べたかったんだな。すごいな。」
健二が真琴のスパゲッティへの執着に、呆れと尊敬の2つの念を込めて言った。
「あ〜っ!やっと食べられて幸せ〜!!」
自分の作ったスパゲッティを口に入れた時の真琴は、いつも以上の笑顔である。
「北野君。大丈夫ですか?」
真琴と健二が楽しそうに話す中、桜は前に座る慎二の心配をした。
「うん、大丈夫だよ。」
慎二は食事の手を動かした。
「な、なら良いのですが……。」
桜は不安な表情を浮かべた。
朝食後、玄関をノックする音が聞こえた。
慎二がドアを開けると、ダクが立っていた。
「よっ!」
「よ……よっ!」
ダクの元気な挨拶に習い、慎二も挨拶を返した。
「どうしたの?」
「武器を買いたいんだけどさ、どれ買えば良いか分からないから、旅をしている健二達に教えて貰いたいんだが…………」
「………。」
「どうしたんだジャミル?」
「え?いや、なんでもない……。ちょっと待ってて!」
慎二はドアを閉め、3人の所に早足で戻り、先程の会話を伝えた。
「ダクが武器買うのを3人に手伝って欲しいって。」
そう言うと、3人はそれぞれ微妙な表情をした。
「武器って言われても………、俺達、自分で買った訳じゃないからわかんねえぞ?」
「うん、貰い物だよね………。」
「ど、どうするんですか…….っ!?」
「と、とりあえず付いて来てよ。分かんなかったら、とりあえず見た目が良さそうな奴を薦めよう。(可哀想だけども………)」
4人は、とりあえず付いていくことに決め、外に出た。
5人は、村で1番大きな武器屋に来ていた。
「すげ〜!始めて来たけど、武器って剣だけじゃないんだな!?」
「そ、そうだね……。」
ダクは目を輝かせながら店内を回っていた。
「ジャミルは健二達から何貰ったんだ?」
「僕は片手剣と拳銃だよ。」
「片手剣と拳銃か〜。俺はどれが良いかな〜っ!?」
ダクの話に合わせる慎二の肩を、桜が叩き、耳元で話した。
「あ、あの、本当に大丈夫なんですか?」
「だめだ、分からない。僕にはさっぱり分からない……。」
慎二は肩を落とした。
「だからって、適当な武器を選ばせるのも申し訳ないですし………。」
「だよね。なんとかしないと……。まずはダクがどういう物を使いたいのか聞かないとね。」
慎二がダクに聞こうと思ったその時、
「ちょっと、君達。」
後ろから声をかけられた。振り返ると、藍色のレザーコートに身を包んだ若い女の人がいた。
「はい?」
「武器を買いに来たのか?」
「はい。彼の武器を買いに来ました。」
慎二がダクを指差した。
「買う物はもう決まっているのか?」
「いえ。まだ俺、どれが自分に合っているのか分からなくて……。」
ダクは困った様に首を捻る。
「そうか……。」
その女性は腕を組み、考え出した。その時、コートから出た手は、銀色の鎧に包まれていた。
「………君、普段は何をしている?」
唐突に質問をした。
「………俺は、いつもは農作業ですかね?」
「なるほど………。では、狩りに出た事はあるか?」
「いや、ないですけど………?」
その後も、その女の人は、ダクに色々と質問をした。
「うーん………。分かった。君には、大斧が合っているかも知れない。」
「え!?なんでそんな事が分かったんですか!?」
ダクを含めて、5人は驚いた。
「質問をした限りでは、君は力仕事が得意で、持ち手が長いクワなどの農具の扱いに慣れている。それに、狩りに出た事が無いから、敵との間合いの取り方が分からないと思う。それならリーチが長く、力技の出来る大斧が良いと思った訳だ。」
そう言うと、壁に立て掛けてある1つの斧を手に取った。
「よし、これが1番良さそうだ。ほら、待ってみるといい。」
女性は、ダクにそれを渡した。ダクは斧の重さに少しふらついたが、軽く振って、満足そうな顔をした。
「斧か〜。……確かに、俺に合ってる気がする!ありがとうございます!これにしますっ!」
ダクはそれを持って、会計をしに行った。
ダクは斧を持って、店の外で待っていた慎二達の所に戻って来た。
「良かったね、ダク。」
「ああ!」
ダクはニカッと笑った。
「どうやら力になれたようで良かったよ。」
「すごいですね!なんでダクさんに合った武器が分かったんですか?あのー……」
桜は女の人の名前を呼ぼうとしたが、分からない事に気付いて言葉を詰まらせた。それを女の人はすぐに気付いた。
「おっと、まだ名乗っていなかったか。これは失礼。私は、【ザンクテンブルク帝国】中尉の【マリスタ】だ。」
「え、軍の人なんですか!?」
「ああ。だが、私はまだ歳17の未熟者だがな。」
「17歳!?私達と2つしか変わらないじゃん!?」
真琴は大人びた容姿のマリスタの歳を聞いて軽く跳び上がった。
「私が初めての武器を選ぶ時、父が同じ事を私にしてくれたのを思い出したんだ。」
「へー……、じゃあお父さんも、最初はそうやって誰かに選んでもらったのかもしれませんね!」
「ふふっ。ああ確かに、そうかもしないな。」
健二の言った事に、マリスタは可笑しそうに笑った。
「俺、ダクって言います。それで、こっちの4人が順番に、健二、真琴、桜、ジャ………」
「き、北野慎二って言いますっ!」
ダクが5人の自己紹介をまとめてしている時、変な緊張からか、慎二は自分の本当の名前を大きな声で叫んでしまった。
「「「………ちょ………っ!!?」」」
健二達3人は、北野慎二という名前を聞き、ビクッと肩を浮かした。
「……あ!」
慎二は咄嗟に口を押さえた。
「キタノシンジ?何言ってんだお前?」
ダクは首を傾げた。
「いや、あの、これはその……なんというのか……」
「大丈夫かよ?………こいつの名前はジャミルって言います。」
ダクはあまり気になっていなかったようだった為、4人はひとまず「ホッ」と胸を撫で下ろした。
「ふむ、そうか。4人共、また何処かで会ったら声をかけてくれ。では、私はもう行かなくては。ではまた。」
マリスタは丁寧に挨拶をして、4人の前から去っていった。
「それにしても……綺麗な人だったよな〜?」
マリスタがいなくなった後、ダクが呟いた。
「そうですね。それに騎士さんって、………なんだか格好良いですよね!?」
「だよね〜。ねねっ?私も17になったらああいう風になれるのかな!?」
「プッ!真琴があの人みたいになるなんて、これっぽっちも想像がつかないけどな!」
「ななっ!?なにそれ、ひどくなーい!?」
「ははは……!でも、なんだかんだでそろそろ昼だな。よし、3人共、昼は昨日と同じくらい美味いとこに連れてってやるよ!」
「お、本当か。よっしゃ!じゃあ行こうぜ!……おい、しん………ジャミル!行くぞー?」
「あ、うん!行こう……。」
慎二の力のない返事を聞き、桜は余計に心配してしまうのだった。




