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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ヒロインvs.悪役令嬢父~展開においてけぼりな悪役令嬢と 編~

「ジャニュアリー・パリコ侯爵令嬢、貴様との婚約を破棄する!」

この国の王太子ハーケン・ダッツ様がそう言った時に、

私は、「勝った―――――!」と拳を天に高く突き上げた。


皆様、初めまして。

転生ヒロインのエイプリル・フゥールです。

ここは、乙女ゲーム「恋は舞い散る薔薇の如く」の世界。

なぜか、原作の世界観が改変されて原型が留まっていない世界です。

かろうじて残っているといえば、登場人物の名前くらい。

この『コイバラ』の世界に気付いた時に、この世界観に突っ込みすぎて今では慣れてしまいました。

大抵のことでは驚けません。


たった今、勝利宣言をした転生ヒロインの私ですが、いよいよラスボス戦に突入です。

そう、転生ヒロインにとってのラスボス、悪役令嬢父との対決です。

私は大地を蹴り上げジャンプし、悪役令嬢父に向かって拳を突き出した。

迎え撃つ、悪役令嬢父。

「なんでやねん!」

ジャニュアリー・パリコ侯爵令嬢こと悪役令嬢は、突っ込んだ。

「まだまだ修行不足だな。娘よ」

「大人しく殺られろよ、クソ親父」

「チッ」

私はその場から一歩下がり、後回し蹴りを食らわせた。

見事壁に激突する悪役令嬢父。

「もう、どうなってるのよ。コレ――――っ!?」

悪役令嬢は、混乱しているようだ。

説明しよう。

原作でのヒロインは、悪役令嬢父がメイドに手を出して孕ませて生まれてしまった悪役令嬢の腹違いの妹。

現実では、悪役令嬢父は悪役令嬢母一筋で悪役令嬢の実妹。

ちなみに、悪役令嬢が私が実妹と知らなかったのは王命で転生ヒロインは庶民として暮らしているからです。

王命というのは、この展開を予想した王妃様より与えられた任務のためです。

なので、もちろん貴族教育も転生ヒロインは受けているのです。

経験の差もあり、悪役令嬢父に追い詰められる転生ヒロイン。

なんとその時、突如現れた悪役令嬢母により悪役令嬢父は飛び蹴りを見舞われたのです。

「お母様も―――― !」

とうとう貴族の淑女教育を忘れてしまった、悪役令嬢。

そうして、悪役令嬢父を倒した悪役令嬢母は頭から血を流して重傷の悪役令嬢父を足で踏みつけて勝利宣言をした。

「なんでやねん!!!」

再び、悪役令嬢は突っ込んだ。


「あー、ドイルク。もう、いいか?」

「御意。国王陛下」

瀕死の重傷から、いつものように復活を遂げ臣下の礼をする悪役令嬢父。

悪役令嬢父に倣い、臣下の礼をとる転生ヒロインと悪役令嬢母。

唖然とする悪役令嬢。

「ドイルク・パリコ侯爵の親子喧嘩で有耶無耶になっているが、王太子であり我が息子であるハーケン・ダッツの王籍を剥奪する!」

「どういことですか。父上!私は何も悪いことはしていない!」

「馬鹿者!公の場では、『父上』などと呼ぶなといつも言っておるであろう。それに、なにが悪いことはしていないだ。王命である、『ジャニュアリー・パリコ侯爵令嬢との婚約破棄』を自分勝手な感情なままにしておいて。貴様にとって、王命を無視することは悪いことではないことなのだな」

「そっ、それは...」

「ふっ、貴様には失望した。すぐさま、ワシの前から消え失せるがよい」

元王太子様は、国王陛下の護衛により強制退場となりました。


「どういうことですの――――っ!?」

転生ヒロインと悪役令嬢父、最後に美味しい所を持っていった悪役令嬢母の戦いから、添え物程度にサラッと終わった王子の断罪から立ち直った悪役令嬢は、やはり淑女教育の成果をなかったことにして叫びました。

元王太子の言動に怒りを抑えきれなかった王妃様は、国王陛下に大理石の灰皿で殴って気絶させ、悪役令嬢にこれまでの経緯を説明しました。

・元王太子が『真実の愛(笑)』に目覚めて、王命による婚約破棄を一方的にすること。

・元王太子とその取り巻きたちが、悪役令嬢の罪を捏造すること

・以上のことから、パリコ侯爵家に協力を要請し、元王太子を見極めるために転生ヒロインを庶民として生活させたこと

などなど。

「それで、エイプリル嬢。今回のことについての褒美は何をお望み?」

「パリコ侯爵家との絶縁です♪」

「「えっ!?」」

王妃様と悪役令嬢は、驚いたようです。

「あの、だって今まで庶民として暮らしてきたのですよ。いくら、貴族令嬢の淑女教育を受けたといっても、今までとは違います。今更、貴族社会に馴染めませんよ」

「それもそうね」

納得する王妃様。

「分かりました。国王陛下の代理として、エイプリル嬢のパリコ侯爵家の絶縁を認めます。大丈夫です。国王陛下もこれまでのエイプリル嬢の功績に免じて認めてくれるでしょう」

そう言って慈悲深く話す王妃様の笑顔の中に、黒いナニカが見えたのは気のせいでしょう。

そして、国王陛下の口から白い泡を出しているのも気のせいでしょう。

「いや、気のせいじゃないから!」

私の心の声に、悪役令嬢は突っ込んだ。



実は、転生ヒロインがした今回の役目は姉である悪役令嬢も候補に挙がっていました。

ですが、悪役令嬢では不向きと判断されたために幼い私(前世の記憶を安定させていたために大人びた子どもだった)に役目が回って来たのです。

一応貴族でいるもの今日この時間までです。

さて、これからはお世話になっている商人様の家業に力を入れましょう。

前世の世界より発展してないこの世界の交通機関は馬車のみ。

どこぞの盗賊や馬鹿に襲われるので、ものすごく頑張って護身術を習ってモノにしたのですよ。

「エイプリル、何をやっているの。早くしなさい」

「はい。お嬢様」

お世話になっている商人様の家業とお嬢様に近づく害虫を駆除すべく、これからも私は頑張るのでした。

読んでくださり、ありがとうございました☆

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