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クレストール(一般名ロスバスタチン

 澄みわたる青空の下、赤蜻蛉が飛んでいる夏の暑さが嘘のようだった。

 黒く重厚な造りの門の前に黒塗りの車が静かに止まった。


「お待たせしました」


 運転手は後部ドアを開ける。座席から脚を揃えて降り立つ金髪女性はサングラスを外して空を見上げる。


「………この日が待ち遠しかった」


 ――――

 ―――

 ―


 ゼネカは塩野義邸ここに来るまで幾度ものアプローチをしてきた。彼女ゼネカ自身本土イギリスに住む親元(ICI)から離れてスウェーデン美女のアストラと結婚

 をしてアイドル事務所『アストラ・ゼネカ』を設立したばかりの会社ではあったがお互いに同業者通しだったから体力には自信があった。


「ねぇゼネカ。ヤポンにスタチン系のアイドル誕生だって♡」

「それってサンキョー?」

「ノン!シオノギ……見てこれ」


 新聞には黒髪の着物姿のまるで人形の様な少女が写っていた。


「ねぇアストラこの娘ウチでプロモーション出来ないかなぁ♪UKでもスタチン系は受けると思うしぃ」

「いいねぇ♪『会うと痩せるアイドル♡』」


 この日からゼネカは塩野義家の近くに家を建てて何度もアプローチを掛けた。

 塩野義家に招待された時ゼネカはアストラと抱き合って喜んだ。

 そして、今ゼネカの前には歳をとってもまだ美しさを失ってはいない塩野義家主が座っている。


 ―――これがサムライの国の女なのでしょうか。座り姿だけで威圧感が有ります……。


 ゼネカは奥歯に力を込めると深々と頭を下げた。


「そんなに硬くならないで下さい……それで用件を聞かせて下さいな」

「は、はい。実は、お嬢さん………クレストールさんの海外プロモーションを私達アストラ・ゼネカに一任してもらえませんか?クレストールさんなら確実に世界を取れるアイドルになります!」

「それはそうでしょう………でもこの子は日本の社会でやっていくのが一番幸せなのでは無いでしょうか?私はそう考えます」

「もし、米国などでの乱暴な仕事で彼女が傷付いても私達が必ず護ります!」


 確かに米国にもスタチン系のリピトールが居るのも塩野義は知っていた。

 そして、米国で愛されてるはずのリピトールが一部のアンチファンによって傷付いているとも聴く。


「分かりました………クレストールと話してからの返答でも宜しいですか?」


 しかし、娘は理由も聞かずに快諾の言葉を発したのだ。


「塩野義のお家に生まれて私良かった。でも病弱のお母さんを残して旅に出るのは正直恐いです。………でも、クレストールの魔法で中性脂肪を燃焼したいの!」

「………おいで、クレストール」


 クレストールは塩野義母の胸に身をあずけた。


「………おおきくなったね………お前は自慢の娘だよ!自信をもって世界へ行ってきなさい」

「はい!お母さん」



 ゼネカは確かな手応えを感じていたが、不安も少しだけ残った。

 しかし、それは杞憂だった翌年の1月17日に日本国内の記者の前で塩野義母は娘の世界進出のプロモーターにアストラ・ゼネカに委託する発表をしたのだ。


 かくしてクレストールは、イギリスを中心にヨーロッパで展開をして650億ユーロを叩きだし故郷日本でも400億円の興行収入を作り政府公認の『会って中性脂肪を燃やすアイドル』を作り上げていった。

 UKでの評判が海を渡って米国に流れるのも時間の問題とクレストールを連れて米国デビューを果たそうとするが、米国には既にスタチン系アイドルリピトールが興行成績累計2000億ドルで世界一の女王として君臨していたのだ。


「流石ですね、ファイザー家は伊達じゃありませんね」

「それでも私、アメリカで頑張りたいです!」


 クレストールは小さな手を握りしめるとガッツポーズをする。


「安心して下さい。クレストールは無理をせずに何時もと同じで目の前の仕事をこなすだけで良いのですよ♪既に米国での特許は塩野義名義で取ってありますから」

「………ねぇプロデューサー。リピトールさんと戦うの?」

「同じスタチン系としては避けては通れませんが、魔法力の正確さはクレストールの方が上ですから上手くやれますよ♪」


 《リピトール市場が蔓延している米国にアストラ・ゼネカが、新薬アイドルを連れてファイザー家に殴り込みか?》

 《クレストール!vsリピトール!勝つのはどちらだ!》

 翌日の新聞は好きなように書かれていた。


「………これは善い機会かも知れませんね!この波に乗ってリピトールさんに会ってみませんか?」

「確かにリピトールさんにお話が出来たら嬉しいですけど………」

「大丈夫ですよ、貴女はスタチン系9姉妹の1人なんですから自信を持ってください!それにクレストールさんは他のスタチン系の方とは違う唯一無二の水溶性の魔法の正確さは欧州のみんなが理解して幸せになってます!」

「………ゼネカ……さん!私…………やります!」


 翌日の新聞にはアストラ・ゼネカがファイザー家に下克上!12月にリピトールと直接対決!アイドル頂上決戦始まる!


もし、薬擬人化のss等を御存知の方がいましたら教えて下さい。


マニアックで需要が低いとは思いますがやりたかった。

クレストールは次回完結予定でいます。



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