表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アリスの眸  作者: 智汐瞑
エピローグ
25/25

帰り道

「これでまた暫らく、アリスは家にでも籠もるつもりか?」


帰り道。

暗闇の包まれた街を、街灯の灯りの下二人で一緒に帰ることもなくなるのかと思うと少しだけ寂しかった。

まあ、多少の面倒がなくなって、普段の日常に戻るだけなんだけど。

いつも通りに一人で学校に行って、授業を受けて、帰って。偶にアリスから電話を受けて、手伝いをして。

平穏なのは望ましいが、眸を見られなくなるのはすごく残念である。

ふぅと息を吐くと、同時にアリスが鼻を鳴らす音が聞こえた。


「いや、まだ暫らくアリスは学校に行くぞ」

「は?」


頭の中が真っ白になった。


「どうしてだよ、事件は終わったんだろ?」


先を歩くアリスの黒髪が揺れている。やれやれというように彼女は頭を振ってみせた。


「まだ終わってない」

「榎本先輩の件はアレで御仕舞いだろ、違うのか?」

「それは違わないさ」


街灯の真下でアリスの歩みが止まる。

スポットライトを浴びたヒロインはくるりとこちらを振り返った。

愛しい愛しい眸が俺の顔をじっと見つめている。否が応でも脈拍が上がっていくのを感じた。どきどき。

ふんっとアリスが鼻を鳴らす。


「アリスが学校に行かねばならない理由は、そもそも繭乃の件じゃないからな」

「どういうことだよ」

「少しは自分で考えろと言っているだろう、眩」


黒目が半眼気味になって、俺を睨みつける。


「アリスが学校に呼び出されたのは別の事件のためだ、という話だ」

「そう、なのか?」


納得がいったようないかないような宙ぶらりんの気分で、俺は首を捻った。

弓町高校は普通の公立高校だ。そうそう事件が起きるものなのだろうか。

ふんっと鼻を鳴らして、アリスは前の方へ向き直ってしまったようだった。


「女子の髪を切り取る人間がいるらしい。その犯人の特定を頼まれたのが、そもそもの話だ」


ふぅん、と曖昧な相槌を打つことしか出来なかった。

アリスの手伝いをしていると称しておいて何なのだが、あまりそういう話には明るくないのだ。

興味が薄い、アンテナが低いとも言うが。

アリスもそれがわかっているのだろう、ふんっとまた呆れたように鼻を鳴らした。


「ともかくそれが解決するまでは、アリスは学校に行かねばならぬのだ。忌々しいことにな」

「それならじゃあ」


言い澱んだ俺の代わりにアリスは当たり前だというように言葉を継いだ。


「眩の迎えも続行に決まっているだろう」

「そっか」


正直アリスの迎えは面倒なことこの上ない。

けれど何故だか俺は嬉しくなって、からからと笑い始めてしまった。

良かった、これでまたしばらくアリスの眸と一緒にいられるのだ。まだ暫らくはアリスの眸を見られる日々が続くのだ。


「気持ちが悪いぞ、眩」


心底引いた近寄るな、とでも言うようにアリスの歩みが少しだけ速くなる。


「お、おい。待てって」


その小さな背中と付かず離れずの距離を歩くようにしながら、俺は笑い声を押し殺した。

街灯の灯りがアルファルトに影を二人分映し出す。闇から光へ、光から闇へ。

隣の道路を走っている車はいつも通り多い。


「明日も六時半にだからな」

「わかってるって」


神埼眩、十七歳。

本名不明の傲慢少女、アリスの眸に今日も恋をしている。


――アリスのマンションが、ようやく見えてきた。

続きのような終わりです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ