精霊祭
「それじゃ、出掛けましょう」
ん?
「そうだな、行くか」
んんん?
シルフィとエドさんから外出のお誘いが。………今、始めて聞きましたが。
「何処にですか?」
エドさんとシルフィは首を傾げて、納得したのか手を叩いた。
「すまん。そうだな、言ってなかったな」
「一緒にお祭りを回ろうと話しをしていまして、ニズも誘おうと思ったのです」
なるほど、お祭りのお誘いか。うむ、行きますか。
「そう言うことでしたか、分かりました、ご一緒します」
シルフィは僕の腕を組みつつ手を握った。
「なら、行こうか」
さて、お祭りを楽しもうかな。
ちなみにメイドさんが護衛も兼ねているらしい。
メイドさん、戦闘も出来ますか、さすがです。
皆で街へと繰り出した。
街の中心部に行くにしたがい、どんどん賑やかになってきた。屋台も出ていて、まさしくお祭り騒ぎだった。
多分、プレイヤーもいると思うが、見分けがつかない。アイコンでも付けば分かるんだが、無いんだよなアイコン。まあ、お互いに分からないから平等ではあるな。
皆で屋台を巡っていく。時々スリの様な人もいるが、メイドさんのガードにより、すべて(主に手首の骨が)粉砕されている。
メイドさん、マジで強ぇー。ってか何者!
「ニズ様も素晴らしいです」
メイドさんなニッコリ笑った。
心読まれたか!?
「気付いてらしたようで、時々防がれてますよね?」
笑顔のままのメイドさん。
まあ、何故か反応できるんだよね。だから防いでいるんだが。手加減が出来ているので、悪くて骨折、良くて打撲程度で済んでいる。何となくだが、ある程度力を入れても手や腕などへの打撃では、相手は死なないようだ。
あ、また来た。
少し力を入れて打ち払ってみるか。
ほい、っと。
その時、メイドさんが同タイミングで声帯を潰した。
「ー・ーッー・・ーーッー・ーー」
スリは声にならない悲鳴を上げて転げ回った。
メイドさん。小さくサムズアップしないでください。
《神眼》で確認してみた。これって便利。
どれどれ? ふむ。どうやら《状態異常:粉砕骨折(右腕)》となっているが、HPはまだ9割以上あるな。少しずつ減ってるけど、まあ、大丈夫だろう。
さて、行こうか。あ、また、ほいっ、っと。
今度も確認。
《状態異常:複雑粉砕骨折(右腕・完治不可)》
ふむ。やり過ぎたな。やっぱり手加減しないとまずいな。
ふむふむ。
考えていると、シルフィがこちらをじっと見た。
「ニズ、どうしたの?」
「なんでもないよ」
「そう? なら、行こうよ! こっち、こっち!」
シルフィに手を繋がれ、引っ張られて行った。
主に屋台の方に、あ、また、スリか? しかも二人?
手は塞がってるから、しょうがないから空いている足で蹴り飛ばした。
さいっ!
心の中で掛け声。脛を蹴り壊して一撃必壊。
とりゃ!
更に心の中で掛け声。足の甲を蹴る砕いて一撃必砕。
さっきから多過ぎないか? しかも、初回の奴等以外は、なんか殺気の様なものが漂っているんだが。
それに、倒した人の掃除が異様に早いんだが、つっこんだら負けかな?
チラリとメイドさんを見た。満面の笑みを向けられた。
ふむ。
次に、先程から回りに見え隠れしている人を、チラリと見た。
ふむ。なんかサムズアップしてるな。とりあえず犯罪にはならなそうでとても有り難いな。正当防衛だよね。
どうやら今ので最後みたいだから、後はゆっくり回りますか。既にシルフィに引っ張り回されていますけどね。
「ニズ嬢ちゃん、わざわざ対応しなくても大丈夫だぞ」
「はい。それに今のが一応最後みたいですから」
「そうか。ありがとうよ」
エドさんは笑顔をうかべた。
「ニズ、お爺様、どうかしたのですか? さっきから仲間外れですか?」
目に涙をうかべて、こちらを見つめてきた。
「シルフィ、心配しなくても仲間外れにしてないよ。ねぇ、エドさん」
「お、おう。ただちょっと祭典に参加してもらうから、その時の服はどうしようかって相談してたんだ」
「そうだったんですか、それは楽しみです」
涙が引っ込んで、笑顔になった。
「「楽しみですが、仲間外れは嫌です。さ、行きましょう」」
二人は無言で手を引かれて行った。
夕方まで色々回りました。
この世界にも名前が違うがお祭りの定番が結構揃っていた。
例えば、“綿あめ”は“曇あめ”、“タコ焼き”は“トルマ焼き”、“お好み焼き”は“包み焼き”、“かき氷”は“砕き氷”
など、微妙に違った。
ちなみにトルマと言うのは、見せてもらったが、足が13本ある軟体動物でタコとイカを2:1で足した様な姿。
とにかく名前は違うが作り方は殆ど同じだった。“砕き氷”だけは本当に魔法で氷を砕いていたが。非効率かと思いきや、実は効率が良いというのは驚きでした。
家に着くとシルフィが眠そうに船を漕いでいた。
「シルフィ。眠そうだな」
「まだねむくないよ」
明らかに眠そうだ。ほぼ寝言で答えていた。
「ベッドの準備は出来てます」
メイドさん、いつの間に!
「そうか。なら頼む」
エドさん、動じませんね。
シルフィに引っ張られて歩き回ったので、さすがに疲れたので、その後みんな早めに寝た。
あ、ナツキさんたちに連絡してない!




