表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/40

碧の石は高価、紙も高価です。

お願い致します。


トコトコ、と歩いて行った。そう言えば何で歩幅が違うのに転ばないんだろ? 最初から転ばすに走れたよね。


今更なことを考えながら歩いた。


居間に入ると、


「おう。お帰り」

入った時、こちらに気付いたエドさんが笑顔で話しかけてきた。


「ただいま」

笑顔で返事をした。


その時、ぼふん、と後ろから衝撃を受けた。


「お帰りなさい」

シルフィに後ろから抱きつかれた。


「ただいま」


もはや抵抗はすまい。意味がないからな。


「お嬢様。お帰りなさいませ。丁度朝御飯を作っております。少々おまちくださいませ」

ティナがいつの間にかメイド服を着ていた。


そのメイド服は何処から仕入れた。いや、もとからメイド服だったっけ? 少なからず服のデザインが変わってるな。てか、精霊って服を着替えることができるのか?


「主。霊布を精霊が服に仕立てれば、精霊が着ることの出来るんだよ」


「なるほど。……スフィ? 僕、声出てた?」


まさかの読心術!?


「不思議そうな顔をしてたからね」


表情でしたか。


「そうか。……ん? 霊布なんてあったの?」


「風を編んだ霊布を貰ったんだよ」


「そうなのかぁ。……ん? 風って編めるの!」


普通に驚いてしまった。

もとい、誰に貰ったんだ。編める人にかな。顔が広いな。


「うん。出来るんだなこれが」


「出来るのか。凄い人もいたものだ」


感心して何度も頷いた。

そのタイミングで、ティナから「ご飯ができた」と言われた。

ティナとメイドさんが料理を運んできて、みんなで食べ始めた。


みんなでご飯を食べていると、エドさんが思い出したかのように話しをふってきた。


「ニズ嬢ちゃん。今日から精霊祭なんだが、“サフィラス”は用意したか?」


エドさんは唐突に聞いてきた。


「サフィラス?」

首を傾げながら、聞き返した。


「ああ、そうか。サフィラスって言うのは青い石のことだ。精霊祭では青い石を持って参加することで、その石に幸運が宿るとされているんだ。実際、石に神霊の加護が宿ったことも有ったそうだからな」

エドさんが説明してくれた。


「青い石ですか。青い石ならどんな石でも良いのですか?」


「青い石なら良いと言われているな。ちなみに青い石は実際には緑の石なんだけどな」


「え!?」


「昔は緑のことを青って言っていたからな。今は勘違いしてる人も多いがな」

嘆かわしいとばかりに言った。


「なら緑の石を持ってればいいのですね。え~と、あったかな?」


探してみると、緑の石はなかった。


「主。はい」

スフィが緑色(いや、翠かな)の石を持っていた。


「こんなこともあろうかと、用意しておいたよ」


「いいの?」


「うん」

スフィはそう言って手を出してきた。


「ありがとう」

僕はお礼を言いながら、手を前に出して受け取った。


何の石なんだろう?

じ~、っと見て観察。うん。分からん。石に詳しいわけじゃないからね。


諦めてエドさんに確認を取った。


「この緑の石で問題ないですよね?」


「あ、ああ。問題ない。……なあ、その石って……」

エドさんは驚いたような表情をしていた。


うん?


「この石は、“風翠碧”だよ」

何でもないようにスフィは軽く言った。


「風翠碧だと!? そんな色ではなかったはずだが」


エドさん、驚きっぱなしだね。


「それは不純物が入ってるからだよ。純粋な風翠碧だから綺麗な色なんだよ」


スフィ、物知りだな。それとも精霊には常識なのかな?


「そうなのか。………その風翠碧は何処で手に入れたんだ?」


「秘密だよ。主になら教えてもいいけどね。主、知りたい?」

こちらをチラリと見たあと、じっと見てきた。


「いや、一つでいいから知らんでいいよ」


「まだ、あるよ」

一つでいいと言ったら、スフィは更に風翠碧を出した。


あるのか!


「そ、そうなの? ま、まあ、持っててよ」


「うん。わかった」

スフィは風翠碧を何処かにしまった。


「なんか、ニズ嬢ちゃんといると、常識が壊れていくな」

エドさんは苦笑していた。


「壊すようなことをした記憶は無いのですが」


「まあ、本人に自覚は無いものさ」

ため息をはきそうな雰囲気で、遠くを見た。


「ま、まあ、とりあえずこれで良いですよね」


「まあ、な。 ん? シルフィ何してるんだ?」

エドさんは気付いたように言った。


僕も後ろを振り向いた。スケッチブックに何かを書いていた。


「設計図を描いています」


設計図?


「設計図って何のだ?」

エドさんがシルフィに聞いていた。


「杖です」


「「つえ?」」


「はい! 前にお祖父様が護身用に何か持った方がいいと」

ニコニコ笑いながら楽しそうに言った。


「エドさん。言ったんですか?」


「う~ん、……あ、言ったな」


遠くを見たと思ったら、どうやら言ったことを思い出したようだ。


「はい。だから設計図を描いてます」


「そうか。どんな感じだ?」


僕とエドさんは見せてもらった。

……う、うん。これは凄いな。主に材料が、ね?

詳しくは分からないが、名前の字面で凄そうと思う。


「エドさん。この素材ってあります?」


「………難しいだろうな。特に風属性の魔宝石は何とかなるが、“風皇鷲の尾羽”と“風聖樹の枝”が無理だな」


「その素材はーー」


チラリとスフィを見た。


「“風聖樹の枝”はあるけど、“風皇鷲の尾羽”は捕ってこないとないね」


「ーーらしいです」


そして、エドさんに視線を戻した。


「そ、そうか。“風聖樹の枝”も簡単に手に入る物じゃないのだがな。それに“風皇鷲の尾羽”は伝承に出てくるような物だ。それに風皇鷲ルクはそう簡単に見つかるものじゃないだろう」


「そうなの?」


エドさんが力説するので、スフィに聞いてみた。


「うん。確かに大変かも。……あ、それって“不死鳥(アムルゼス)の風切羽”で代用できないかな?」


そんな素材があるのか!? いつの間に集めたんだ?


「“不死鳥(アムルゼス)の風切羽”だと! どうやって手に入れたんだ!?」


エドさんは驚いて声を大きくした。


「いつの間にか持ってたから分からないよ」


「 な! 」


声を失っていた。と、思いきや、何かを小声で呟いている。


しかし、いつの間にか、か。

まあ、アムルゼスが何かは分からないが。風切羽ってことは鳥の仲間なんだろうな。


「それで代用できるのかな?」


「大分すれば、どちらも王鳥なので大丈夫じゃないかな?」


「代用は可能だ! いや、代用というか、代用と言う言葉に違和感を覚えるぞ」


エドさんは早々に復帰した。

呟いているエドさんは少し怖かったな。


「なら、素材は何とかなりますね」


「だな」


なんかエドさん、開き直ってないか。遠い目をしている。


「ハイ、コレ」


スフィは素材を持ってきていた。

持ってたの? どこにしまってた?


「あ、ああ。ありがとう」


戸惑いながらエドさんはスフィから受け取った。


さてと、それじゃ、

「シルフィ。これで作ろうか?」


「はい!」


「エドさん。伝はありますか?」


多分、僕は杖は作れないな。作ったことないし、スキルないし。


「大丈夫だ。私の知り合いにいる。エルフで、素晴らしい腕の職人だ」


「エルフですか」


「そうだ。国宝も手掛けた人だ。これほどの素材なら喜んで作ってくれるだろう」


「なら、問題ないですね。それじゃ他のスケッチを片付けますか」


「そうだな」


失敗作か試作品は分からないが、画用紙が散らかっていた。

特にシルフィの周りに。


「しかし、画用紙は高価だから、捨てるのは勿体無いな」


「ごめんなさい。どうしても納得できなくて」


ふむ。画用紙は高価なのか。


「大丈夫だよ」

そこでスフィが画用紙を拾って、こちらに渡してきた。


? なんだろ。

僕は受け取りながら、首を傾げた。


「ただの画用紙じゃないから、生活魔法“ウォッシュ”を使えば綺麗になってまだ使えるよ」


「それは……もしや、伽藍紙か!?」

エドさんは驚いた様に声を大きくした。


がらんし? どんな漢字だろ。


「似てるけど、違うもの。解浄紙って言って、伽藍紙よりも安価な紙ですよ」


かいじょうし?


スフィは人差し指を立てながら説明を続けた。


「伽藍紙は半永久的に再利用可能だけれど、解浄紙は10回くらいしか使えないからね」


よく分からないが、10回再利用出来るだけでも凄くない?


スフィは落ちている画用紙を拾い、更に説明は続く。


「ちなみにこの紙だけは解浄紙じゃなくて、悠久紙だね」


ゆうきゅうし? また分からない単語が………。


「なに!? 悠久紙だと! 何故ここに!」

エドさんは紙を凝視して驚いている。


ちなみに使った本人シルフィはよくわかっていない様だ。


「そうです。悠久紙です。しかし、これは特性上再利用できないですね」


「そうだな。しかし、なんで混ざってたんだ?」

エドさんは残念そうに紙を見た。


「それは分からないよ」

スフィは首を傾げた。


僕は何となく、ちらり、と横にいるメイドさんを見てみた。

ふと目が合い、気まずそうに逸らして俯いた。


う~む。これはあれかな? まあ、この話はここら辺で止めるか。僕は殆ど理解出来てないし。


「二人とも、とりあえず片付けようか。ゆうきゅうしとやらは……うん、紙質は良いみたいだから、いっそハリセンにでもしよう。ほら、片付けよう」


スフィとエドさんは「まあ、そうだな」と片付け始め、シルフィとメイドさんは「はい」と片付け始めた。ちなみに生活魔法はこちらの住人なら誰でも使えるので、特に問題なし。


その時、メイドさんにお礼と謝罪をされた。

やっぱりですか。まあ、許しましたが。価値は分からないし、メイドさんも悪気があった訳じゃないしな。


片付けが終わると、僕はゆうきゅうしを手に取った。


さて、まずは確認からかな。



[ 悠久紙(使用済) ]

悠久に記録する紙。劣化や破損などに極めて強く、1度書き記したものが失われることはない。別名“最強の紙”



なるほど、こう言う漢字か。最強なのか。


って、ことで、マジでハリセンを作ってみた。

シルフィ曰く失敗作だからいらないらしいし、勿体無いので使いました。



ハリセン[ウェンペリペル]

よい音がなるハリセン。攻撃力はほとんどないが、精神ダメージを与える。ネタ武器の定番の品。作った人にしか使えないが、使うのに特にスキルは必要ない。使いこなすにはある意味でスキルが必要。

効果:Agi+10 ダメージ固定(最大HPの0.1%) 行動制限解除(セーフティエリアでも使用可能)

スキル:[耐火][耐水][耐刃]

アーツ:〈クラクションアタック〉〈MPアタック〉



どっからみてもハリセンだな。てか、ハリセンはハリセンと言う区分なのか。それに、使うのにスキルが必要なし。

………ある意味でスキルが必要。ってなんだろか?


ハリセンを眺めていると、エドさんに話しかけられた。


「ニズ嬢ちゃん。それはなんだ?」


シルフィも興味深そうにハリセンを見つめていた。


あれ? ハリセンってこの世界に無いのか?


「画用紙の様な厚い上質な紙は高価だから、それが何か分からないが、そんな風に使うことはないな」


「はい。そうです。特に悠久紙は名のある人でも滅多に使うことのないものです」


僕が不思議そうにしていると、エドさんとシルフィが理由を説明してくれた。


顔に出てたかな。まあ、この世界での感情は我慢しにくいからしょうがないな。


「そうなんですか。捨てるよりは良いと思ったのですが」

残念そうな顔をした。


「まあ、確かに捨てるよりは良いな。それでそれは何なのだ?」

エドさんは僕の顔を見て、少し慌てていた。


さてと、これはなんと説明すれば。……こちらの世界にも劇団はあると思うから、そこから説明すれば良いのかな?


と、言うことで説明した。どうやらサーカスや演劇といった娯楽は普通にあるらしいので、そこで使われるような道具と、簡単な実演付きで説明した。

説明したところ、こちらの世界にも似たようなものがあった。こちらの名前は《フェイクソード》と言う、切っても切れずに音がなる競技や芸に使われるものらしい。


世界が変わっても、人は変わらないってことだね。



ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ