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用事と漢方と調薬のススメと…………。

お願いします。


シルフィがお風呂から出てきて、僕に「次は一緒に入ろうね」と言ったが、機会があったらね、と誤魔化しておいた。


…………うん。次誘われたらどうしようか。いや、マジで。


そんなことを悩んでいると、


エドさんが、

「さて、行く準備を始めるかな」

と、言った。


ん?

「何かあるんですか?」


「ああ、馬鹿どもの相手だ」

げんなり、とした顔で言った。


「そ、そうですか」

僕も苦笑いをしながら言った。


「シルフィは置いていく。頼んだぞ」

こちらの目を見てエドさんは言った。


「分かりました。まあ、ここなら安全性は大丈夫だと思いますし」

こちらも目を見て言った。


二人して、ふっ、と笑いあった。



すると、エドさんが、

「しかし、ニズ嬢ちゃんは本当に大人っぽいな。前にも聞いたが、実は見た目通りの環齢じゃないだろう。長寿の種族なのか? しかし、獣人族で長寿な種族はいたかな?」

突然そんなことを言い出した。


「僕ですか。う~ん、どうなんでしょう。普通の獣人族よりは長生きでしょうが、特に長寿の種族と言うわけではないと思いますよ」


多分そうだろう。…………その前にこの世界の普通の寿命をしらないな。猿獣人が人族とイコールっぽいから、70~80歳くらいかな。


「普通の寿命ってどのくらいですか?」

聞いてみた。


「?……ああ、そうか。種族によるが、獣人族は事故や病にならなければ大体80環くらいだな。ちなみに、妖精族は300~800環で、亜人と呼ばれるそれ以外は200~1000だ。上位種は除くが」


「獣人族は短いのですね」


一年、いや、一環の日数を考えると、かなり短くないか?


「まあな、ただ、この世界の人口の80%以上は獣人族だから

、特に短いと思ったことはないな」


「確かにそうですね。1000環とか、人生に飽きそうですね」

それでも、現実時間で、え~と、200年くらいかな?………って、十分に長いな。この世界の時間軸はどうなってんだ?


僕がそう言うと、


エドさんは笑いながら、

「そんなことを言ったら、上位種なんでやってられないな」

なんて言った。


え?

「上位種ってそんなに長生きなんですか?」


「ああ、そうだ。獣人の上位種でも1000環は生きるし、妖精族や亜人の上位種なんて10000環も生きる者もいるらしいからな」


わお! そんなにか、さすがファンタジー!

現実時間で2000年オーバー。


「それは凄いですね」


「ちなみに、レニクス王家には時折他種族の、特に妖精族の血も入っているから、普通の獣人族より長生きだ」


「そうなんですか!? そういえば、シルフィの力は先祖帰りや隔世遺伝っぽいですものね」


そういえば、そんな経緯があったな。


「そうだ。だから王家の者の寿命は長い。私の曾祖母も妖精族で今も健在だからな。初代国王の王妃もハイエルフだから、今も健在でエルフの里で長をやっているな。ほら、この前話していた」


この前…………って、あの人か! アリアさんか! あの人は王族だったのか。

うん。会いに行って見ようかな。あの時は置き手紙で失礼したからね。


「だからあの時、知り合いなのか、と言ったんですね」


「そうだ。驚くのを隠すのに苦労したぞ」


「隠す必要があったのですか?」


隠せてなかった気がしないでもないが。


「あの町は隠れ里だから、一応な。今となっては意味はなかったと思うが、まあ、嬢ちゃんの様な見た目幼子に警戒する必要はなかったな」

ははは、と笑ってエドさんは言った。


「そうですよ。何かするつもりもないですし。………何かされそうにはなった気はしますが」


「何かあったのか?」

眉を寄せて言った。


「いえ、大丈夫です。危険度で言うならシルフィの方が危険です」


「なるほど」


二人してシルフィの方を見たら、視線に気付いたシルフィがこちらを見て首をかしげた。


「どうかしましたか?」


「「なんでもない」」

僕とエドさんは声を揃えて言った。


「そうですか」

不思議そうな顔をしていたが、とりあえずは納得したようだった。

メイドさんはクスクス笑っていたが、薮蛇はお断りなのでスルー。



その後、エドさんは仕度をして、迎えの人(騎士の格好をした人が玄関に来ていた)と外出。


シルフィはメイドさんやベル、ファノと庭の散歩(庭がバカらしいほど大きいのですが、こんなに大きかったか?)


ティナは昼御飯の買い物と晩御飯の仕込みだそうだ。(家精霊(シルキー)は普通の精霊よりも妖精寄りらしく、実体化なんかは基本中の基本とのこと)


そして僕はスフィやレンとお茶会中(ティータイム)である。



そういえば…………なんか、エドさんには会うたびに頼まれごとされたり、色々教えてもらったりしてる様な気がする。


まあ、それは置いといて、運営からのメッセージってなんだろう?


せっかくなので、ゆっくりと確認することにした。




〈プレイヤー様へ

毎度のご利用ありがとうございます。

今回は明日9日に行われるアップデートのご案内です。

時間はAM9時~PM3時の6時間を予定としております。

時間は短くなることはございますが、長くなることはございません。

詳しいアップデートの内容は、9日0時よりホームページにて発表致します。

今後とも宜しくお願い致します。


《Element Earth On-line》運営部及び開発部より〉




うむ。やはりアップデートの話しか。でも、この時間だと、いや、いいのか。丁度昼間になるのか。よく考えてるな。


そういえば、妹や従姉妹たちが時間がないとかかんとか言ってたが、この話に関係があるのかな。まあ、僕は持ってないことにしてるから、聞こうにも聞けないな。…………さすがにこの格好は少し恥ずかしいし。



さてと、これからどうしようかな。


…………うん。調薬でもしようかな。新しい設備も気になるし。





と言うわけではお茶会(ティータイム)茶具を片付けて、調薬の作業部屋へ来ました。


さて、何を作ろうかな。


ん?


部屋の端に本棚があった。近付いていくと、どうやら薬草図鑑や調薬のレシピ本、それに、


「この本は読めないな」

文字が意味不明で、読めない本だった。図を見ると、これも調薬のレシピ本っぽいな。


「私、読めるよ」

スフィはそう言った。


「読めるの!?」


「うん。これは精霊言語の高位古代文字ハイエンシェントだよ。ある程度の高位精霊なら読めるかな」

スフィはそう言ってレンに見せた。


「うん………読める」


どうやら、レンも読める様だ。


もう一度見た。………うん。僕はやっぱり読めない。

なんか特別なスキルか必要なのかな?


「どんな内容なんだ?」

気になるし、聞いてみた。


「え~と、“広範囲蘇生薬”“精霊化薬”“魔宝玉”“聖宝玉”“付加薬”それに、各種高位ポーションなどの作り方だね」


よく分からないアイテムの名前を言われた。

宝玉の作成って調薬の範疇なのか? 知らなかったよ。


「名前を聞くと、あまり作らない方が良さそうな名前だね」


「そうだね。これは今の段階では過剰性能オーバースペックだよね」

うんうん、と頷きながらスフィが言った。

納得してくれた様だ。


「だな。その前に材料も今の段階では、持ってない物もあるだろうし」


「多分………ある」


ん?

レン? それはどういう………


「そうだねぇ。多分あるねぇ」


ん?

スフィ? それは…………


「「つくる?」」

二人はこちらを見ながら言った。


「作らんでいい」

止めておいた。


「わかったよ」

「ん」


よし。ならば、

「作りますか。スフィとレンも、何か作る? その危ないレシピ本に載っている物でなければ、作っていいよ」

作れるかは、分からないがな。


「やるぜ~、がんがんやるぜ~」

「任せて」

二人は、張り切って(レンはよく分からないが、多分)言った。ちなみに、やり過ぎない様に行っておいた。


「さてと、始めるか」


あ、その前に、スフィたちが集めた素材を確認かな。

家のストレージを見た。



…………………………うん………多いよ! 多過ぎるよ!!


とりあえずは、使うものから………ん? これは?



[桔梗]

根を乾燥させて細かく刻むことで、生薬として使用できる。



桔梗って、あの桔梗だよね? この世界にも生えてるのか。しかし、生薬って漢方薬のことかな。


他にも見覚えのある名前があるな。え~と。


[菊][百合の球根(魔種)][椿][藤こぶ][薊][桜皮][朝顔の種子(魔種)]とかだな。

って、魔種って何?



[朝顔の種子(魔種)]

成熟種子を乾燥させ粉末にしたものを生薬に用いる。魔種の特性として、通常よりも生薬にした際の効果が格段に向上する。



ふむ。魔種とは効果が高いものを言うのか。

…………使ってみるか。結構量があるから少しくらいはいいだろう。


“成熟種子を乾燥させ粉末にしたもの”ってことは、これを粉砕すればいいのかな。乾燥している様だし。


棒に円盤がついた器具(薬研?)で砕くことができた。そのあと、石臼で細かくして粉末にする。

これでいいのかな?



牽牛子(けんごし)

強い瀉下作用をもつ瀉下薬。魔種を使用したため、効能が極めて強力になっている。その代わり一定量(3g以上)を服用しないと効果を発揮しない。(妖精族及び亜人種には5g以上にて効果を発揮)

効果:瀉下作用(極大)



できたはいいが、瀉下作用って何? まあ、それは後で調べるとして、このままじゃ使いにくいから、丸薬にしようかな。


ん~、ん?

何気なくストレージ内を眺めていると、丸薬の素と言うものが入っていた。どうやら備え付けの材料の様だ。



[丸薬の素]

粉末や液体のものに混ぜることで、容易に錠剤にできる。そのかわり、効能を下げることはないが、上げたりなどの効果もない。魔法薬の一種。



様は固めるだけの素材か。使ってみるか。


…………

…………………

…………………………どういう理屈なんだろうか。

出来たには出来たが、何故に水も嵩が増えない? 普通は入れたら増えるでしょう? さすがは魔法薬だな。もしや物質ではないのかな、この“丸薬の素”は。水は蒸発したかな。


今は考えても分からないか。


そして、出来ました。単純に水と入れて混ぜただけですが。(液体の場合は水は必要ない)



牽牛子(けんごし)(丸薬)]

強い瀉下作用をもつ瀉下薬の丸薬。魔種を使用したため、効能が極めて強力になっている。一粒服用で凄まじい効果を発揮する。

効果:瀉下作用(極凶大)



効果が上がってないか?

…………いや、これは上がっているのか?


う~む。


悩んでいてもしょうがないか。次は何をしようかな。


そこで、ふと、“調薬のススメ”という本が目に入った。


これは読むべきか。うん。読もう。

手に取り、本を広げた。


何々。

〔調薬とは、草花に秘められた力を調べ、薬として力を引き出す技術のことである。調薬を行う者は、独り善がりになってはならない。草花を取り過ぎてはならない。自然に対し感謝を忘れてはならない。〕


自然に感謝か。確かに自然のものを使って作っているのだから、感謝は大切だな。

ん? “取り過ぎてはならない”ってことは、もしかしてこの世界のアイテムって無限じゃないのか!?


うん。これは気を付けねば、他には、


………うむ。

………………ほうほう。

…………………………へぇ~。

……………………………………これは?


内容は基礎から応用まで、色々書いてあった。図解入りで解り易く書いてあった。


気になった一文はこちら、

〔調薬の作業中に多くの魔力を加えると、“魔秘薬”と呼ばれる薬となる。この薬は正規の手順ではないので、連続して服用すると効果に応じた酷い副作用が起こる。そのため、その方法で作った魔秘薬を一度服用した場合は、一年以上他の薬の服用を控えることを推奨する。(対象が人でない場合はこの限りではない)〕



秘薬を渡さなくて良かった。あれは正規の秘薬でなかったのか。そして、人に使わなくて良かった。


いや、精霊に使ったか。あれは良かったのか?


そんな風に悩んでいると、


「主ぃ。私も作ってみたよ」


「私も」


スフィとレンが何かを作って持ってきた。


「ん? どれどれ」

僕は作った丸薬をしまい、そちらの方向を向いた。


レンの作ったものは何かはわからないが、綺麗な色合いをしていた、が、…………ん? なんかスフィの作ったものの色合いがヤバイのだが。

色を表現するなら、レンのものは綺麗な南の海の色、スフィのものは混沌(見たことないが)の様な色。


二人は期待したような眼差しでこちらを見ている。


「え~と。一先ず、確認してもいいかな?」

僕は少し震えた声で言った。


「うん。はい、どうぞ」

「ん」

二人は快く渡してくれた。


二人からポーション(仮)を受け取り、名前や効能を確認した。


こちらがレンが作ったもの


[ファンタジアポーション]

HP・MP・状態異常を全回復させる。また、一定時間HP・MP共に継続回復、状態異常無効。精霊の力が宿ったポーション。人では作ることのできない精霊薬の一種。



うん。素晴らしい性能だな。


それで、スフィの作ったものは、


[ゞ£я∀ж∽〆РотюиX]

なんだか力が湧き、どうにかなるポーション、の様なもの。飲んだ後の事は知らない。自己責任で飲むのは自由です。



…………これはなんだ? 文字化けしてない?

これは………と、とりあえず、封印で。とにかく、封印で。


「どう? どう!?」

「ん」

二人はこちらの反応を待っている。


「二人とも凄いね。レンのものは素晴らしい性能だし、スフィのものは(いろんな意味で)凄まじい性能だよ」


うん。嘘は言っていない。断じて嘘は言っていない。

しかし、調薬もそうだが、色々自由度が高過ぎないか? もしや、制限がないのか!? 明らかにレシピがないものも作れるし。

まあ、悪いことではないか。


兎に角お礼は言わないとな。

「二人とも、ありがとう。大事にするよ」


二人は嬉しそうに聞いていた。

嬉しそうで、何よりです。



…………あ、そうだ。秘薬のことを聞こう。


「二人に聞きたいんだが、あの時の秘薬って大丈夫だったのか」

聞いてみた。


「うん。大丈夫だよ。精霊にとっては魔力は毒にならないからね」

「ん。大丈夫」

二人は何でもないように言った。


「そうなの」


「そう。それに、主の魔力は極めて清んでるから、全く問題ないね」

「心地好い」

ぽやん、とした顔で二人は言った。


「それなら良かった」

ほっ、として僕は力を抜いた。


「まあ、質が良くても人にはあまり関係ないけどね」


「そうなのか?」


「悪いよりは良い程度だよ」

「ん」


あ、そうですか。

「秘薬は人には使えないな」


「そうだね。複数飲んだら死んじゃうね」

「ん」


あ、やっぱり。


秘薬はもう作るまい。


ちなみに、魔力を加える行為は、完成後に正規の設備で適量加えるのが正解ですって。加え過ぎると、これも魔秘薬になるとのこと。(調薬のススメより)


あ、やべっ、ポーションの類いも魔秘薬になってるかも。


ありがとうございます。

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