狼耳と姫の趣味と初級魔法…………。
お願いします。
ゆっくり食べて、「御馳走様でした」とみんなで言い、晩御飯を食べ終えた。
ちなみにメニューは、ステーキ、カルパッチョ、お吸い物、魚の煮物、焼売、竜田揚げ、などなど、二人が競様に作ったため、ジャンルに統一性がない。ただ半分くらい聞いたことのない食材でした。一般的なものから希少なものまで、ほとんどの食材が揃っていたらしい。しかも、千人が千年生きていける量が入っていたらしい。
うん。今度確認しておこう。
そして今はお茶会中で、紅茶を飲んでいる。銘柄はメイドさん曰く、プライムテラルムという最高級のお茶らしく、王族でも滅多に手に入らない代物らしい。テラルム山脈の高地でしか採れないものらしく、何故か飲む人が最高に美味しいと思う味になるらしい。なぜ憶測なのかというと、人によって感じる味が違うことを、確認しようがないからだそうだ。
さすがは異世界だ。理屈を超えたものもあるのだな。
てか、これはもしや購入特典の一部か?
「ニズ嬢ちゃん」
のんびり考え事をしていたら、エドさんに話しかけられた。
「なんでしょうか?」
「今更だが、ニズ嬢ちゃんの種族は何なんだ?」
「本当に今更ですね」
「ああ、まあ、獣人なのはわかるんだが、犬獣人ではなさそうだし」
う~ん。とエドさんは悩んでいた。
最初の時は獣耳も尻尾なかったことは覚えてないのかな? まあ、いいか。今の種族でいいかな。今の種族は、っと、
「今の種族は、狼獣人ですよ」
「狼獣人か。聞いたことのない種族だな」
「そうなんですか?」
その時、シルフィか、トタタタ、と近寄ってきて、後ろから抱きつき耳を触りだした。
「えっと、シルフィ?」
「おおかみ………もふもふ…………もふもふ」
なんか呟きながら、いい笑顔で、さわさわ、と触っていた。
「エドさん。シルフィどうかしたんですか?」
これはどうしたら? と困った顔で聞いた。
「う~ん。何かが琴線に触れたのだろう」
「そ、そうですか」
シルフィって、ケモナーなのかな? しかも、狼限定。
「あ、ごめんなさい。なんか我慢できなくて」
謝りながら、少し恍惚とした表情で言った。
「別にいいですよ。好きなだけ触ってください」
少しこそばゆいけどね。
「ほんと?」
そこから再度触り始めた。
「そういえば、エドさん。お風呂涌いてるので、よかったらどうぞ。天然温泉ですよ」
「温泉が涌いてるのか。すごいな」
「ですよね。いつも涌いているので、いつでも入れますよ」
「それじゃ、いただこうかな」
そう言って、椅子から立ち上がった。
「ご案内しますね」
僕も椅子から立ち上がろうとしたら、
「私がご案内します!」
メイドさんが、出てきてそう言った。
「場所はわかりますか?」
メイドさんに聞いた。
「問題ありません。お任せください」
分かるのか。ティナに聞いたのかな? まあ、メイドさんとしては譲れないところが有るんだろうな。
「わかりました。タオルなんかは、脱衣所にあるものを使ってくださいね」
「はい。それでは、こちらです」
メイドさんはエドさんを伴って、お風呂へ向かった。
少し経つと、シルフィが満足気に離れた。
シルフィは、発作? が治まったのか。隣りで紅茶を飲んでいるが。
さて、どうしようかな。なんかスキルでも取ろうかな。
チラッ、とシルフィを見たら、いつの間にかレンと遊んでいた。
なんだろう。一定時間が経過したら、またシルフィに抱きつかれる気がする。
うん。よし。スキル選ぼ。
何かあるかな。
体術とかあるけど、リーチが違いすぎてダメな気がする。魔法とか覚えようかな。
【魔法】
〈地魔法〉〈水魔法〉〈火魔法〉〈風魔法〉〈闇魔法〉〈閃魔法〉〈聖魔法〉〈治癒魔法〉〈付加魔法〉〈工作魔法〉〈初級魔法〉
ふむ。光魔法は選択不可で、選ばなかった魔法を選べるのか。
しかし、初級魔法っていったい?
見てみよ。って、見れないじゃん。
う~む。初期の魔法は5ポイント、その他は10ポイントか。そして、初級魔法のみ50ポイントか。なんで高いんだ?
よし。とりあえず、初心者らしく初級魔法でも取るかな。
ぽちっとな。
あとは、生産系のスキルでも取ろうかな。
【生産】
〈鍛冶〉〈服飾〉〈木工〉〈装飾〉〈彫金〉〈採掘〉〈採取〉〈彫刻〉〈判定〉〈技の指先〉〈錬金術〉〈魔法具作成〉
ふむ。
生産系は調合でなんとかなるな。ならばここは、魔法具作成かな。難しそうだけど、楽しまないとね。
よし。これでいいな。さて、あまり多くスキルを取ると切りがないからな。
ちなみに、取得できるスキルの量は、人により異なります。
そうだ。ついでに称号の確認でもするか。
称号の詳細一覧を開いた。
しかし、増えたなぁ。…………ん?
〔[不可能を撃ち壊す者]の進化条件をクリアしています。進化させますか? 〈YES/NO〉〕
進化?
称号って自動的に進化するわけじゃないのか? もとい、進化するのか!?
とりあえず、YESを選択。
ポーン
〔[不可能を撃ち壊す者]は、[理外を超越した者]に進化しました〕
ふむ。
何か変わったのかな? それに、なんか失礼なこと言われてる気がする。
え~と、ステータスは、どぅ「ニズぅ」 ごふ!
ステータスを確認しようと思った直後に、後ろから抱きつかれた。
「どうした。シルフィ」
僕は振り向きながら、聞いた。
「ん~」
唸りながら? 耳をさわさわと触りだした。
なんだ。これ。最初はこんなことはなかったよな?
考えていると、浴衣に着替えたエドさんが戻ってきた。そして、開口一番。
「ニズ嬢ちゃん。いい風呂だった、ありがとう。って、何やってんだ? てか、あれからずっとか?」
「一度は治まったのですが、ついさっきこうなりました」
「そうか。すまんな」
「大丈夫ですよ」
エドさんが申し訳なさそうに言うので、何でもないかの様にかえした。
「シルフィ。次、お風呂入っておいで」
僕はシルフィを見て言った。
「わかりました。では、ニズも一緒に入りましょう」
これはダメだな。一緒に入ったらロリコン認定されるな。さて、どうするか。お風呂が小さいっていう言い訳は効かないし、エドさんと入ったらとも言えないな。既に入っているし。
うむ。…………よし。
「今日はゆっくり一人で入ろうと思うので」
チラッ、とメイドさんを見る。
「お嬢様。私がお背中を流させていただきます。今日はお一人でのんびり入浴したい様ですので、ニズ様と入浴なされるのは、またの機会で宜しいではないですか」
シルフィを説得してくれている。
うん。こちらの意図を考えると、あまりフォローになってないよ。まあ、次回は何とかするしかないな。
そう心に決めていると、シルフィの説得が完了した様で、メイドさんがこちらを向いて、こっそりサムズアップしてきた。
メイドさん、結構ノリがいいな。
よし。ひとまずはこれ安心だ。しかし、マジでどうするかな。まあ、なるようになるか。
そういえば、初級魔法ってどんなのなんだろう。
[初級魔法Lv1]
初級の魔法を使用できる。
Mアーツ:〈サンドショット〉〈ウォーターボール〉〈ファイアボール〉〈ウィンドプレッシャー〉〈フラッシュ〉〈ブラインド〉〈マジックアロー〉
うん? これは初級なのか? とりあえずは、簡単な魔法が一通り使えるみたいだな。………便利だな。
さてと、次は、う~ん 「ニズ嬢ちゃん」
悩んでいるとエドさんに呼ばれた。
「は、はい。なんでしょうか」
存在を少し忘れていて、驚いたのは秘密だ。
「これを渡しておく」
エドさんはそう言って、イヤリングの様なものをくれた。
「これはピアスですか?」
「そうだ。だが、ただのピアスじゃない。通信の魔法道具だ」
「通信の魔法道具ですか。貴重なものなのでは?」
「そうでもないさ。値段は張るが、商人や貴族などの人たちも持っているよ。材料と作成方法それ相応の腕があれば作れる物だ。まあ、ミスリルなどの特別な金属や、レゾナンス・クオーツと呼ばれる宝石を使っているから値段は張るがね」
エドさんは何でもない様に言った。
高価な携帯電話かな? それに、高いけど作れる物なのか。さて、どうしたものか。
「気にせず貰ってくれ。俺も持ってるし、シルフィも持ってる。メッセージを送れても、通話はできないからよ」
エドさんは相変わらず何でもない様に言った。
「分かりました。頂戴します」
潔く貰うことにした。少し興味があるしな。
「おう。耳に着けておいてくれ。ちなみに、魔法道具だから通常のピアスと違って、耳に穴を開けたりする必要はないぞ」
どういうこと? あ、本当だ。磁石で耳に挟む感じに近いかな。
早速着けてみた。
なるほど。磁石で挟むのと違って、違和感はないな。
その後、エドさんと当たり障りのない会話をした。
ちなみに、話しによると、エドさんは剣術と風魔法が得意らしく、シルフィは風魔法と水魔法が得意らしい。
シルフィが出てきたので、次にお風呂に入ることにした。
…………あ、そういえば、この世界でプレイヤーはお風呂に入れるのかな?
結果としては、お風呂に入れました。水着みたいな装備になる様で、色々な意味で安心設計です。ナイスです。
ちなみに、これも脱ごうと思えば脱げる様です。脱ぎませんが。
ありがとうございます。
[理外を超越した者]
不可能を可能にし、不滅を滅ぼす。理の枠を遥かに外れた存在。




