島と湖と神霊の樹と…………。
お願いします。
扉を開き、中に入ると、麗らかな陽気の大地が広がっていた。
すると、突如目の前に
〔名前を決定してください〕
と、表示が現れた。
名前?
「島の名前でしょうか?」
「多分そうだと思う」
名前かぁ。名前。う~ん。…………うん。決めた。
記入した。
〔【グラーティア】で宜しいですか?〕
はい。決定!
ポーン
〔世界地図に【グラーティア】を追加しました〕
追加されるのか。
さて、散策しますか。
ここは高台になっており、周りを見渡すと、山あり、森あり、草原あり、っと、島にしては大きくないか? 海がぼんやりとも見えないのだが。
『綺麗ですね。山の中腹に湖がありますよ』
なぜに念話、って、上空に浮いていた。
『主も来てくださいよ。綺麗ですよ』
どうやって行けと? こう、飛ぶ感じって、飛べるかい!
ふわ、っと、体が浮いた。
「へ? 僕、飛べるのか!?」
『それはそうでしょう。だって、神様だもん』
何を当たり前な。てな感じで言われた。
「そういえば、そうでしたね」
僕は飛んでスフィの隣まで行った。
思い通りに飛べるなこれ。なんか、体がぼんやりと光っているような気がする。まあ、いいか。
「主。ほら、湖。あそこに別荘を造りませんか?」
「ホントだ。湖だね。別荘か、そうだね。いいかもね」
いい感じのところだな。
「ちなみに、あの湖の水は、水ではないよ」
え? 水ではない?
「あれは、マナが液体になったものだよ」
「マナって、液体になるのか?」
「うん。特定条件下にのみ、マナは液体になるんだよ。その条件がマナが溢れて続けていること。そして、そのマナが極めて純度の高いマナであること」
「それが、ここということか?」
「そういうこと。まあ、あのサイズは普通ないけどね」
ぽろ、っと呟いた。
「珍しいのか?」
「普通は泉くらいのサイズなんだけど、湖サイズはないね。もしかしたら、星天核なのかも」
「星天核って?」
「マナの泉は、星流の溜まり場にできるの。その星流のすべての終始点が、星天核なの。星流は世界を廻り、そしてもとの場所に還る。そう思われていますからね」
「なるほど、それって近づいてもいいのか?」
「大丈夫です。性質は水とほぼ同じですから」
そういうことでは、ないのだけれどな。まあ、いいか。スフィがいうなら、問題ないだろう。
そんなこんなで、水際まできました。
「なんか、辺り一体が薬草とかなんですが…………なんで?」
「マナの影響かな。湖を囲む森もマナが溢れているし」
辺りを見渡すと、光りが無数にふわふわ浮いていた。
これが、マナなのかな? ………う~ん。マナだね。周りに満ち溢れてるな。
そんなことを思いながら、ぼ~、っとしていると、手に入れた苗木や種子のことを思い出した。
「そうだ。ここに、簡易の畑を作って、苗木を植えよう。この[失われし神樹の種子]は、どうしようかな」
悩みながら、再度辺りを見渡すと、一部に開けた場所があせろった。マナも満ちていて、良い感じなところだ。
早速、真ん中らへんに種子を埋めてみよう。
しかし、種子は眠ってるらしいから、どうすれば良いのだろうか。
…………あ、そうだ。確か、なんかあったよな。
アイテムボックスを確認した。すると、[???]があった。多分、秘薬とか、そんな感じかな。見た目は、オーロラみたいにぼんやり輝くポーションだし。
効果的にはいい感じがするが、原液のままはヤバい気がするな。水で薄めるか。
種子を埋めたところに、[???]と湖の水を同時にあげた。(2倍希釈くらいの分量)
すると、地面が光り輝き始めた。
「おお! なんだ、薬が水と反応してるのか?」
「主。湖の水は、マナです。性質はほぼ同じでも、マナだから」
忘れてたのぉ~? とばかり言ってきた。
「そういえば、そうだったな。………ん?」
急速に種子を埋めた場所に光が集まり始めた。
「なんか、離れた方が良さそうだな」
「そうですね」
離れようとすると、種子を埋めた場所から、ぴょこ、っと芽がでた。
「芽がでたな。目覚めたのかな?」
「そのようね」
すると、空中に光の流れが見えた。その流れが芽に集まりだた。とたんに芽がどんどん成長し始めた。
「「な!?」」
二人して驚いて声をあげた。
二人はその場から一気に空に舞い上がり、距離を大きくとった。
離れた瞬間に、まるでビデオの早送りの様に、巨大な大樹に成長した。上の方は、雲の上にある。
「…………大き過ぎない?」
「間違いなく、エルフの里やエレストにあった大樹より、遥かに大きいね」
ん?
〔[刻止の封印柩]が、解放可能です。強制的に解放します〕
はい?
勝手に[刻止の封印柩]が、アイテムボックスから出てきて、扉? いや、蓋? いや、扉だな。が開いた。
「あれ、何?」
「何だろう?」
二人して首を傾げた。
「あれ? スフィは知ってるかと」
「知ることは出来ますが、知ってしまったらつまらないからね」
「まあ、確かにそうだね」
少し逃避して話していると、[刻止の封印柩]から人? いや、精霊かな? が出てきた。その途端に、樹が淡く強く光り始めた。
「光ってるな」
「光ってるね。あと、あの子は精霊でなく、神霊ですね」
「ほほう。神霊ですか。何であの中にいたんだろう?」
「さあ」
話していると、神霊がこちらを見て、近付いて来た。
神霊は僕をジー、っと見つめた後に、スフィに視線を移して、
「いい?」
と、聞いた。
スフィは、神霊をジー、っと、見たあと、
「わかってる?」
と、聞いた。
その質問に、神霊は、
「貴女、一番」
と、言った。
すると、スフィは笑顔になって、
「なら良し」
と、言った。
なんの話しなんだろう?
神霊は、スフィから僕の方へ視線を移して、
「名前、ちょうだい」
と、言った。
「どういうこと?」
「契約」
「主。女性に恥をかかせちゃダメだよ」
スフィが諭してきた。
なして?
………………うん。そうなのか。
とりあえず、名前か。何がいいかな。う~む。
「レンティア、はどうかな? 略称はレンで」
どうだろう? 語感で決めたが、悪くはないと思いたい。
「レンティア………レン………ありがとう。私、レンティア」
その瞬間、今までと違い、周りにマナが満ちた。
ん?
ポーン
〔[神霊:生命]と契約しました〕
…………これは、……属性なのか?
ポーン
〔称号[神霊の契約者]を取得しました〕
…………これは、まあ、そうか。
「主。これからどうしますか?」
「そうだな。………う~ん。ん? そういえば、レンはどうしてあの中にいたんだ?」
確かあれは、外側からでなく、内側から封印してあったはず。
「自分、入った」
「やっぱりか」
内側からの封印で、間違ってなかったか。
「他、神霊、頼んだ」
「他の?」
「うん、6柱、神霊」
他にも神霊がいるのはわかったが、理由が分からないな。
「力、強過ぎた」
「力?」
「そう、だから、寝た」
力が強すぎたから、寝たってことかな。
「主。念話の方がスムーズかもしれませんよ」
「そうだな。試してみるか」
『レン。聞こえる?』
『うん。聞こえるよ。続きを話す。私の力を人が求めた。それで、戦争が起こった。私は誰の力にもなるつもりはなかった。だから、寝た。人が私を忘れるまで』
少し哀しそうに、それでいて、懐かしそうに。
『だから、あの中にいたのか。でも、なんで目覚めたんだ?』
『それは、私より強い力を感じたから。それに、私の樹が目覚めるのを感じた。だから、目覚めた』
『そうか』
『片方だけなら目覚めなかった。ニズのせい、だから責任とってもらった』
契約が、責任とるってことだったのか。
『そうか。まあ、これから、宜しくな』
『うん。宜しくお願いします』
頭をぺこり、と下げた。
「おう」
僕は声に出して、言った。
そのとき、ピロリン、という音がなり、アイテムボックスにエドさんからの手紙がはいっていた。
内容は、
〈用事が終わった。今から行くぜ。楽しみにしてるぜ、ニズ嬢ちゃん〉
ふむ。戻るか。待たせるのも、なんだしな。
「スフィ。レン。お客さんが、来るから家に戻ろう。散策はまた後日ってことで」
「「はい」」
今思ったが、スフィって、状況によって話し方をかえてねぇ。でも、聞いたら藪蛇になりそうな気がする。何故だ。
その後、3人で家に戻った。
あ、皆にレンを紹介しないと。それに、レンって、外の世界は何年ぶりなんだろう?
ありがとうございます。




