始まりのキッカケ
お願いします。
7月20日土曜日、月曜日に終業式を行ったら、夏休み(夏季休暇とも言う)という日の朝。
(土日と繋げて、今日から夏休みでもいいと思う今日この頃。)
ガチャ、乱暴にドアを開け
「兄ぃ! おはよぅ」
「うおう、………おはよう。どうした?いきなり」
妹が勢いよく部屋に入ってきた。
「ついに、ついに届いたんだよ!」
「何が?」
「E2だよぅ。ついにきたんだよぉ」
「E2?」
テンション爆上げな妹とは対照的に、疑問を呈した。もといE2なるものに見に覚えがない。
「《Element Earth On-line》の略で“E2”。今、唯一つのバーチャルリアリティを利用したネットーゲームよ。俗にいうVRMMOってやつ。βテストに参加していて、やっと正規版が出たんだ。今年は長かったよ~。」
「βテスト?ああ、そういえば去年の後半、なんか毎日夜遅くまでやってたな」
思い出して納得した。確か、なんか国まで手を貸してるって噂のゲームだっけ?
「そぅ!ついにその正規版が完成して届いたの、βテスターは特別プレゼントだよぅ」
「お、おう」
朝からさらにテンション爆発していた。
「じゃあ、友達に話してくる。友達もβテスターなんだ」
バタバタバタバタ、と妹は走って部屋から出て行った。ドアが掛けっぱなしなのは、妹のでデフォで何回言っても直る気配なし。そういえば、この町は何故かβテストの当選者が多いらしい。なんか奴の気配を感じるな。
その後、土曜日曜と、妹はテンションが常時高かった。
◇◇◇
そして月曜日。
「おはよう」
「おはよう!来たか来たか、やっと来たか!」
そこにはテンションの高い馬鹿がいた。
「朝からテンションが高いな。明日から休みだからって、暑苦しいわ」
手団扇で顔を扇ぎながら言った。
「んで、どうした?」
「E2がついに始まるぜ!」
なんか妹を思い出した。ってか、お前もか。いや、お前らもか。周囲のみんなもテンション高い。
「ああ、そういえば妹も土曜届いたとかで、始終ハイテンションだったな。月曜にはある程度落ち着いていたが。というか、お前らも買ったのか?」
ハイテンションなクラスメイトたちに聞いた。
「俺らはβテスターだぜ。土曜日に届いてるよ。ちなみに、お前の妹たちともパーティ組んだこともあるぜ。しかも、俺はトッププレイヤーで攻略組だ。知らなかったのか?」
攻略ってことはRPG形式のゲームなのかな。
「知らんよ。ってまさか、去年の中盤ごろ冬休み頃まで遅刻が多かったのは……」
「もちっ!」
親指を立ててそう宣った。周りの奴らも、一緒に親指を立てていたり、逆に目を逸らしていた。
「もちってお前は……。ってか、反応から見てβテスター多くね?」
少なくとも反応した人はクラスの半数はいかないまでも3分の1くらい。詳しく言うと10人くらいって感じ。
「ああ、うちの会社は資金を出資している中でも筆頭にはいるからな。このくらいの融通は利くぜ。っといっても、この地域の当選確率上げてもらっただけだから、ここまでクラスにそろうのは想定外だな」
想定外以前によくそんなことできたな。ちなみにこの学校は3年間クラスがえがない。選択科目で一応分かれるが、移動教室なのでクラスは不動。
「想定外って、………そんなことしてたのか。いいのか?」
「みんなで楽しみたいじゃん」
卓巳はいい笑顔で言った。確かにそちらのほうが楽しいだろうな。気にしたら負けかなと思い、話しを変えた。
「まあ、それは置いておこう。でも、俺はソフトもハードも持ってないからなぁ」
「なん……、だと……!」
驚愕したように卓巳は言った。
「なぜ持っていないと言わなかった!」
「聞かれて無いことを言えるか!第一に妹どもがやっていることも、土曜まで忘れてたんだぞ」
「そうか。結構ニュースでも特集をやっていたんだが。しかし、俺が持ってる分は、他のクラスメイトに売ったしな」
卓巳はそう悔しそうに言った。周りの確認してみたら、確かにみんなゲームの話しをしているようだった。
「まあ、いいよ。気にすんな?」
「なんで疑問?しかし、今からじゃ2次販売も予約分のみで完売してるし、3次もキャンセル待ちらしいからな」
「まあ、やりたかくなったら、4次や5次にでも望みを託すよ。それに今すぐ、ソフトとハードであわせて5万はきついしな」
そんなに人気があったことに驚きつつ、無難な答えを出した。
「そうか。………それじゃ、そういう訳で、夏休みの宿題を頼んだ!」
「おう。ってなんでだよ。出来るんだから自分でやってよ」
もう少しでスルーしてしまうところだった。そして卓巳に文句を言った。去年もこんな感じだったなと思い出しながら。
「トッププレイヤーへの道はすでに始まっているんだ!」
「βテスターだから、別にいいだろう」
「甘い、甘すぎる、甘甘だ!βテストの時と同じなわけがない。と、いうか、すでに大幅に違うを情報が来ている。なんでもβテストのときのフィールドは、βテスト用のものらしい。正規版では、接続する国ごとに出る大陸が違い、そしてモンスターやフィールドも完全に違うらしい。だいたいβテストには、一つの町から全員で始まったしな。日本国内でも、地方ごとに複数の町から開始で、町同士を繋げないと出会うこともできない。大陸間をつなげる場合は、専用クエストをクリアする必要があるんだと。それに、外国の人とでも言語翻訳が付いているから、βテスト時代でも問題なく話せたぜ」
「そ、そうか。まあ、頑張れ」
マシンガントークに気圧されながら答えた
「という訳で、任せた」
「はぁ~。少しは自分でやろうと気合を見せろ」
ため息をついて、そう言った。
ガラガラ
「みなさん。席についてくださーい」
そのタイミングで先生が入ってきた。
◇◇◇
大掃除中
「頼むよ。夏休みの宿題をさぁ。E2が俺を待っているんだよ」
「まったく。わかったよ。手伝ってはやる」
「シャー。サンキュー」
中学時代からこんな感じだ。
◇◇◇
終業式終了後
「よし。おれは行くぜ」
そういって卓巳たちは駆け出した。
「まてい」
ビタタタタンッ!
僕は卓巳と、それと一緒に駆け出した奴らを止めた。というより、一番前の卓巳に足かけしたら、みんなを巻き込んだ。
「痛ッ。何すんじゃい!」
なぜか憤慨しながら卓巳は言った。ほかのみんなは卓巳に少し憤慨中。意味分からんな。
「もう少しで終わるんだから待て」
「少しならいいじゃん。俺らβのトップ争いはすでに始まってんだ」
うんうんと頷くβテスターの中に、なぜかβテスターで無い人もいた。てか何混ざってんの?
「確か開始は27日だろう?」
「しかし、戦いは始まっている。今日、公式サイトに正式な情報が公開されるんだ。だから見逃してくれ」
なんか目がキラキラしていた。
「そうか。だが待て。それに卓巳は今日から26日までに宿題を粗方終わらせるんだろう?」
「うぐッ、それは」
卓巳は目を逸らした。こいつ忘れていたな。
「分かった。その代わり宿題を頼んだぞ」
「はいはい。それに5日間もあったら、宿題はほとんど終わるだろ」
手をひらひらさせながら言った。
「よっしゃ。みんな!言質取ったぜ」
他の奴らも写す気のようだ。まあ、いいが、危なくない?
ガラガラ
そんなことを思っていると、先生が入ってきた。
「席についてぇ~」
みんなが席についたのを確認して、
「みんな居ますね。ではここにプリントと通知表を置いておきますので、各自とってください。みなさん、夏休み気をつけてくださいね。ではこれで終わりです」
よし。とばかりに先生は頷き、教室から出て行こうとする。
………………ん?
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 ちょっと待て! 」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
クラス一同が一瞬唖然とし、我に帰って叫んだ。
「とめないでください。トップへの戦いは既に始まっているんです!」
卓巳たちと同じようなことを言って駆け出した。みんな完全にとまっていた。
「さっきはごめん。これないわ。とめてくれて助かった」
「気にすんな。わかってくれればそれでいいよ」
自身の行動を客観的にみた卓巳が、さっきの事を謝ってきた。
その後、先生は半泣きで戻ってきて、無事に夏休み前のHRは終了した。
余談であるが、後日聞いた話によると、先生はその後、校長、教頭、学年主任に酷く叱られて、マジ泣きしたらしい。ご愁傷様です。
◇◇◇
26日、卓巳の家にて
「終わったー」
世界史を終わらせ、卓巳はぐったりしながら言った。
「あと現代文の読書感想文(?)と数学が残ってるけどね」
「しっかーし、明日からゲーム三昧だぜ。んじゃ、早速情報集めだ」
「現代文と数学はいいのかよ。だいいちお前はβテスターだから、ネットに乗ってるような情報は収集済みだろ」
すこし呆れながら卓巳に言った。実際操作性はそんなに変更はないだろう。
「甘いな。新要素はたっぷりあるようだし、テスターという有利はほとんどない。第一、舞台が違うらしい。お金とと成長させた精霊1体は引き継げるらしいが。そして、現代文は意図が難しすぎるて意味不明だ」
「現代文に関しては納得できるな。それで精霊って?」
「プレイヤーは始めに精霊と契約を交わすんだ。始めの段階で選択できるのは属性のみで、容姿や階位はランダム。他にも契約はできるから、最初のものを育て続ける人もいれば、複数育てたり、後から仲間になった精霊を重点的に育てる人もいたな」
「ふ~ん。そうか。いろいろあるんだな」
「まあ、そんなに多くの精霊と契約はできないけどな。レベル依存で契約可能数は増えるから、どうしても上限はあるからな。しかし、楽しみだぜー!早く明日にならないかな!!」
卓巳がいきなりテンションを爆上げした。
「そ、そうか。それじゃ、俺は帰るな。途中買い物しないといけないし」
僕は(物理的および精神的に)少し引きながら言った。
「おう、サンキュー。数学は28日にみんなでやろうぜ」
「ん?ゲーム三昧じゃないの?」
「連続プレイ時間に限界があるんだよ。それに昨日連絡があって、頼まれてな」
「直に来ないんだな。良いのか悪いのか、微妙だな」
「ははは。まあ、腹ぁ括れや」
笑いながら卓巳はなんか違うことを言いながら、嫌に似合うウインクをしてきた。
「それはなにか違うだろ。ったく。わかったよ。じゃあ、またな」
そう言い、帰路に着いた。
◇◇◇
帰り道の商店街にて、
「カレー粉に豆腐って、何を作るつもりだ!?」
母に驚愕しながら、頼まれた買い物をした。
「こちら福引券です。外で引けますのでよろしかったらどうぞ」
そう言って定員さんは福引券を渡された。
母があまり福引とかに興味が無いので、全て貰っている。今回で前に貰った分も含めて、ちょうど2回分になった。
せっかくなので、福引を引くことにした。
「2回お願いします」
福引券を10枚渡した。
「はい。どうぞ、2回回してください」
ガラガラガラガラガラぽん
白い玉がでた。
「参加賞のティッシュです。どうぞ、もう一回お願いします」
ガラガラガラガラガラぽん
透明な玉がでた。
カランカラン
「おめでとうございます。特賞の《Element Earth On-line》のソフトとハードのセットが当たりました。どうぞ、お持ち帰りください」
「えっ!? そんな簡単に当たるものなのか」
なんとなく、作為的なものを感じたが、それでも嬉しかった。
◇◇◇
家に帰った。また親は帰ってなかった。買ったものを冷蔵庫に入れ、部屋に入った。
「まさか、当たるとは、………なんか今年分の運をすべて使った気がする」
ちなみに妹は家にはいるようだが、明日の準備をしているのか、部屋から出てこない。
「せっかく当たったんだから、やってみるか」
なんか少しワクワクしはじめた。
「しかし、卓巳や妹どもには知らせないほうがいいかな。あんなに興味なさそうにしていて、やっていると知られたら、何を言われるか分からないからな」
特に双子な妹のステレオの文句は頭に響くからな。
こうして、世界で始めてのバーチャルリアリティを使用したネットゲーム、
《Element Earth On-line》
を始めることになった。
ありがとうございました。
一人称変更しました。