九、気になるから
昼食はたまに耕平と食べるか一人で食べていた。
最近はずっと一人。食べるだけなら別に一人で良いんだけど、周りの楽しそうな声が聞こえると寂しい気持ちになる。だから一人の時は誰もいない屋上に行く。
翔はそうやって自分を守れるけど麻奈は一人で食べるなんて初めてだろう。
耕平と食べるのかもしれないけど耕平はたくさんの男友達に囲まれているから、きっと誘いにくい。
(仕方ない、行ってみよう)
翔は弁当と屋上の鍵をもって麻奈のいる教室へ向かった。
麻奈は一人で席に座って、弁当を食べるでもなくボーっとしていた。
教室に入ると何人かの女子から声を掛けられた。
翔は適当に笑って頷き、麻奈の席に近づく。
「一緒に弁当食わない?」
嫌味な程に笑って言ってみた。なんとなく恥ずかしかったから、照れ隠しに。
麻奈は驚いた顔で見ている。そりゃそうだと思う。断るかもしれない。
「ん、一緒に食べたい」
麻奈が恥ずかしそうに小さな声で言うから、翔までもっと恥ずかしくなった。
早く行こうと急かすように翔は教室を出た。
屋上は立ち入り禁止という事で、誰もいなかった。
「何で鍵もってるの?」
さっきから黙りっぱなしだった麻奈が尋ねた。
喋ってくれた事に喜びと安心を感じながら、話してやる。
「大掃除で鍵もらった時から、ずっと借りてんの」
ちなみにこれは当時掃除当番だった奴しかしらない。
翔がじゃんけんに勝って所有権を手にしたのだ。
「それって駄目なんじゃ」
「いいのいいの♪」
翔の様子に麻奈が苦笑した。苦笑でも笑ってくれて良かったと思う。
二人で屋上の真ん中に座って弁当を広げた。
「本当に真ん中だね」
「どうせならね」
しばらく黙々と箸を進めた。
「ねぇ、何で元木君は私を誘ってくれたの?」
「俺も食う奴いないからね。だったら一人同士が集まって食った方がいいじゃん」
麻奈は黙ってしまった。
何か拙い事でも言ってしまったかと不安になるが、そうではないようだ。
「無視されるって結構辛いね。今日は参ったよ」
「そっか」
「ん。他人何かどうでも良いと思ってたけど違った」
「まぁな」
「でも、私はやっぱり私しか愛せない。でも前みたいにステータスだなんて思うのはやめる」
「そうだな。それに友達って必要だよ」
「・・・でも私は自分が好きだよ」
「今は、ステータスじゃないって分かっただけで良いよ」
「ん、ありがとう」
まさか麻奈とこんな話をするようになるなんて思わなかった。
今流れてる時間はとても穏やかだからこれも良いのかな、なんて考えた。
だけど耕平の顔が浮かんで、本当は誘うべきではなかったと後悔するのだった。
翌日、昼の時間になった。
翔は教室で麻奈を誘おうか迷っていた。
ちょっと前までだったら、耕平の事を考えてやめていただろう。
でも何だか麻奈が気になるのだ。
同情だけじゃない、自分が麻奈の傍にいたいと思う。
(はぁ、どうしよ)
「おい翔、小黒さんが呼んでる」
級友の声に振り向いて見れば、教室に端に麻奈が弁当を持って立っていた。
その時、耕平の顔が浮かんだけど、麻奈の元へ走っていた。




