七、LOVE MYSELF
自分を愛している。
それはそんなに可笑しい事なのだろうか。
苦しい時、嬉しい時、寂しい時、悲しい時、感動した時にいつも必ず傍にいるのは自分自身。
それを好きになるのは必然、当たり前。
麻奈はどうして周りの人が自分自身を愛さないのか不思議でならなかった。
元から容姿は良かったから、あとは明るく親切にしていればすぐに友達は増えた。
人気者という地位を得た。
あとは付き合っているという肩書きがほしかった。
自分からではなく相手から告白されるという形で。
しかしハードルが高いと思われ、告白される事はなかった。
そこに元木 翔、格好良くて女たらしの彼が告白してきた。
自信があったのだろう。断った時はすごく驚いていた。
翔が不満だったわけじゃない。付き合ったら自分だけを見させる自信もあった。
でも翔だけはどうしても嫌だった。理由を翔に教える気はないが。
良いタイミングで翔の友達の耕平と出会った。
見かけも中々格好良かったので付き合う事にした。
勿論自分のステータスを上げるために。
自分の考えが間違っているなんて思っていなかったし、このまま輝かしい自分が続くんだろうと疑わなかった。
今日は久しぶりに友達と帰る事にした。教室に待たせている。
ドアを開けようとした。
「ねー麻奈ってさ、調子乗ってるよね」
さっきまで一緒に笑っていた女子が自分の悪口を言っている。
ドアを開くのをやめ、次の言葉を待つ。
「あたしも思ってた。あの子いつも馬鹿にした目で見てるよね」
「うちが相談した時も、全然聞いてくれなかった」
「最悪じゃん」
「ねぇ、明日から麻奈無視しない?」
自分の手が震えているのが分かった。
直接言わない彼女達に腹が立つ。でも間違った事は言っていなかった。
(だって、あなた達馬鹿じゃない。馬鹿を馬鹿にして何が悪いの?相談、何で私が乗らなきゃいけないのよ。自分でどうにかしなさいよ)
「あ〜ぁ、女子って怖いねー」
翔がひょっこり顔を出した。麻奈は翔がいた事に気付かなかった。
「あの様子だと本当に無視されるぞ。女子ってやる事陰険だから」
「別に。私は私がいれば良いのよ。あの子達なんかより、もっとレベルの高い人達と付き合えば良いんだし」
「レベルが高いって何?自分がその友達の事好きならそれで良いんじゃない?」
「・・・あの子達なんか好きじゃない。私は自分が好きなの」
「へぇ。で、どうすんの?教室入ったら、笑顔でおかえりって言われるだろうね」
「白々しいけど、鞄があるもの」
「分かった。じゃあ俺はこれで」
行こうとする翔を麻奈は腕を掴んで引き止める。大声を出すと教室の中に聞こえてしまうかもしれないから。
「待って。耕平君には言わないで」
翔は一瞬きょとんとして、悲しそうに笑った。
「耕平はもう俺となんて話してくれないよ」
翔の言葉を聞いたとき少しだけ、本当に少しだけ胸が痛くなった。
自分のせいで二人は友達でなくなってしまったんだ。
教室に入ると、笑顔で「お帰り」「待ってたよ」と言われた。
嘘だという事は分かっているのに、嬉しくなった。
そして明日が怖くなった。他人なんかどうでも良いはずなのに。




