四、夢
耕平と麻奈が付き合うようになってから一週間。
誰から見ても幸せに見えたし、耕平自身も幸せだった。
毎日一緒に登校する二人が今や当たり前になっていた。
「麻奈、今日一緒に帰れるか?」
「ん。一緒に帰ろう」
今傍にいるのに、次の約束をする。
まだ誰も言った事はないが、二人は充分なバカップルだ。
「耕平クン、おはよう。小黒さんも」
「お、翔。早いな」
「まあね。ちょっと話あんだけど良い?」
「あぁ。別にいいけど」
耕平は麻奈と別れて、翔に連れられて中庭まで行った。
昼食時は混む中庭も朝だと大分人は少なかった。
二人は近くのベンチに座った。
翔の話は何なのか、それも気になるのだが耕平はフと思った事を聞いてみた。
「お前最近、女子と付き合ってないよな。麻奈に振られてからか?」
「まぁ、もっと重大な問題があってね。それどころじゃないわけ」
「お前もさ、本気で好きな奴と付き合えよ」
「耕平クン幸せそうだもんね」
「へへっ、それが麻奈の奴さ」
「うんもう分かった。気持ち悪いくらい甘い話をありがとう」
麻奈の可愛い話をしてやろうと思ったら笑顔で断られた。
翔の話は一時間目にやる数学のプリントを何枚か失くしたからコピーさせてくれと言う事だった。
どのプリントが無いのか確認したり結構大変だった。
別に教室でもいいじゃないかと思ったが「別に中庭でも良いじゃん」と言われてそれもそうかと思った。それに翔が変なのは今に始まった事ではないので特に気にしなかった。
放課後、耕平は翔を呼びに教室に行ったが翔はいなかった。
本当は麻奈と帰るはずだったが休み時間に帰れなくなったと謝られてしまったので、久しぶりに電車を使って翔と帰ろうと考えての事だった。
(いねぇのか。じゃあ一人で帰るか)
他にも同じ方向の友人はいたがちょっと一緒に帰るだけで誘うのも面倒くさいと思い、一人廊下を歩いた。
「耕平、今日は小黒と一緒じゃねぇのか?」
二階から一階へと階段を下りていると、級友の岡村に声を掛けられた。
級友の隣には違う教室の女子がついている。そういえば二人って付き合ってるんだっけ。
「おう。何か用事あるみたいでよ」
「そうか」
そう言うと女子が小声で何かを言った。
何を言ったか分からないが、岡村が顔を曇らせた。
嫌な予感がする。
「え、マジかよ?」
「う、ん。言った方が良いんじゃない?」
「おい耕平。小黒の用事って何か知ってるのか?」
「いや。知らねぇけど」
「あの、麻奈さっき元木君に呼ばれて、中庭に行ったみたいなんだけど」
「・・・マジで?」
耕平はそのまま中庭に走った。
別に翔と麻奈を疑ってるわけではないけど、女子が嘘をついているようには思えなかった。
途中何度か転びそうになったがとにかく走った。
ここから中庭はそんなに遠くないのですぐについた。
中庭につくと、中から翔が出てきた。
「翔!」
「あら耕平クン」
「お前、麻奈と一緒にいたのか?」
女子の誤解であってほしいと思う。
「あぁ、ついさっきまでね。耕平クンまだ帰ってなかったの?」
あっさり悪びれもなく言われたしまった。
とてつもなく腹が立った。
「何で一緒にいるんだよ?!」
「ん〜、俺が小黒を呼び出したから」
「はぁっ?」
「ちょっとお話したくて。別に耕平クンに言わなきゃいけない事じゃないでしょ?」
「そりゃ、そうだけど。でもなっ、俺と麻奈は付き合ってんだし、・・・そういう事されるとムカつく」
「まーまー、やましい事なんてしてないから。こんなに人がいたらできないしね」
「お前っ・・」
「小黒は教室戻ったよ。今から行けば間に合うんじゃない?じゃあ俺は用事があるから、またね」
翔はポケットに手を突っ込んで走っていった。
残された耕平は、去っていく翔の姿をただ見つめる事しかできなかった。
麻奈もどうして翔と会うことを言わなかったのだろう。
やましい事はしてないなんて言われても、信じられるわけがない。
耕平はその場に座り込んだ。




