三、幸せのような
放課後、校内にあるラウンジで翔は遅い昼食を食べていた。
付き合わされた耕平は紙パックのココアを買って飲んでいる。
「何でお前は昼食の時間を逃すんだよ」
「それが起きたら五時間目始まってたんだよねー。もうびっくり」
翔は三時間目からずっと寝ていたらしい。昼食時の騒がしさにも起きなかったというのだからすごい。
「どんだけ眠いんだよ」
「まー良いじゃん。寝る子は育つって言うんだから」
翔のラーメンが残り三分の一くらいになった頃、ラウンジに五、六人の女子の集団が入ってきた。
その中の一人が耕平を見て手を振った。
「小黒!」
名前を呼ばれた麻奈が嬉しそうに近づいてくる。
「耕平君、今昼食なの?」
「いや、翔が寝てて昼食えなかったって言うからさ。俺はつき合わされてるだけ」
「そうなの?あ、友達が呼んでる。じゃあまた。・・・元木君も」
麻奈は集団の方に戻っていった。
二人が喋ってる間、翔はラーメンも食べずに交互に二人を見ていた。
「耕平クンと小黒 麻奈って知り合いだった?」
「昨日、初めて話したんだよ。帰りのバスが同じで、話したら何か良い奴だったぜ」
「へぇー。良い奴、ねぇ」
「何か可愛いしよ。俺好きかもしんない」
遠くに数人の友達に囲まれて笑う麻奈の姿が見える。
「告白・・・しようかな」
翔は目を見開いて耕平を見る。
その目はとても輝いていて、本気で麻奈が好きなんだろうと思った。
耕平の性格は熱くなりやすくて、一直線。
近いうちに本当に告白するだろう。
翔は誰にも気付かれず、ため息を吐いた。
それから二週間経った。
耕平と麻奈は前より随分仲良くなっていたが、まだ告白はしていなかった。
いざ告白しようと思うとやはり難しい。
「翔、お前いつもどうやって告白してんの?」
「やだなぁ。人にそんな事聞いて。自分で考えなきゃ」
笑顔で拒否された。最近はいつも告白している翔がすごい人に思える。
教室を出ると少し前に麻奈の姿があった。声を掛けて一緒に帰る事になった。
バスの中の会話は相変わらず楽しく、どんどん想いが強くなっていくのを感じた。
「耕平君、次の停留所だね」
「あ、俺今日終点まで行くんだ」
「そうなの?じゃあもっと話せるね」
本当に嬉しい事を言う。
もちろん終点の場所に用事がある訳ではない。
勢いで言ってしまった事だったがさっきの麻奈の一言に耕平は決心をつけた。
終点についた。バスを降りると耕平の家の周りと似た風景があった。
緊張しているはずなのにやっぱり近所なんだとのんきに思ってしまった。
「そう言えばどうして此処で降りたの?」
「うん。小黒に言いたい事あってさ。ちょっと良いか?」
「ん、いいよ。何?」
耕平は下を向いて、無造作に髪をかいた。
ばれない様に深呼吸して、顔を上げた。
「俺、小黒の事相当好きだ」
翌日、二人は手を繋いで登校して来た。
(・・・思い通りにいかないもんだな)
ある者の思いとは裏腹に。




