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一、始まり

”遂に元木翔が振られた”


噂とは早いもので当日には学校中に広まった。

元木翔と言ったらその容姿で女子から人気を集めているが、快く思っていない人の方が多い。

告白してはOKの返事をもらい、一週間後には自分から別れを告げる。そのくり返し。

そんな彼が遂に振られたのだ。男子の喜びようと言ったらまるでお祭り騒ぎだった。



夕礼後、西野耕平はやたらテンションの高い友人に苦笑しながら教室を出た。


(あいつ、男から人気ねぇもんな。悪い奴じゃないんだけど)


教室の違う翔の元へ向う。心境は複雑だった。

初めて噂を聞いたときは迷わずからかってやろうと思っていたが、周りのはしゃぎぶりを見るとそれは悪い気がする。

教室を覗き、まだたくさん残っている生徒の中から翔を探す。

翔は一人席に座って考える人のポーズをしていた。


「翔、お前何やってんの?」


声に気付き目を開く。


「あぁ耕平クン。見ての通り、考え事。」


乗り突っ込みでもしてやろうかと思ったが、翔が真剣な様子なのでやめておいた。

翔はまた目を閉じた。今話し掛けても会話として成り立たないだろう。

仕方ないので耕平は空いている隣の席に座る。



「なぁ、俺って格好良いよね?」


「・・・どうした?」


教室の壁に掛かっている時計の長い針が丁度五回進んだ頃、翔が目を閉じたまま話掛けた。


「いやだからさ、俺って男として超格好良いよね。顔美形だし、運動超得意だし?」


「まず人としてその性格はどうかと思うぜ」


翔は確かに同姓から見てもすごく格好良い。問題は本人に自覚がありすぎる事だ。


「俺さ〜、女の子に振られた事なかったわけ」


「知ってる。しかも自分はすぐに振るんだろ。一体お前の何処がいいんだか」


「それはやっぱ超美形の顔でしょ」


翔のナルシストはその通りだから質が悪い。


「俺何で振られたんだろ?」


「(日頃の行い、ナルシな性格。これしかないだろ)・・・マジで分かんねぇの?」


本気で悩んでいる翔に今すぐにでも教えてやりたかったが、自分で気付かなければ意味がない。耕平は呆れながらも翔の当たる兆しのない予想に付き合った。


「うーん、その子に見る目がなかった」


「違う違う。もっとマシな事考えろ」


「・・・つい間違えて言ってしまった、かな?」


「自信ないみたいだけど、その通り違うから」


ため息を吐きたい衝動を抑える。

そういえば、翔とは初めて会ったときもため息を吐いていた。


一年前、高二の時に教室で前後の席になったのがきっかけで友達になった。今程ではないが、翔の軽さはすでに有名だった。初めは仲良くなれるなんて思っていなかった。耕平は女の子と付き合った事なんてないし、係とかで仲良くなった女子とたまに話すくらいしか女子との関わりなんてなかたから、翔の事なんて全く理解できなかった。


「俺、元木翔。よろしくな西野」


「おぉ。まぁ、よろしく」


失礼な話だが、耕平はこの後ため息を吐いた。翔に非があった訳ではないのだが、これからの事を考えてうまくやっていけるか考えたら思わず出てしまったのだ。

思っていたより大きな声が出て、翔にも聞こえてしまった。やべっと思わず手を口に当てると後ろから翔の笑い声が聞こえてきた。


「ははっ、まぁ俺こんなんだからため息吐くのも分かるよ」


「悪ぃ。怒ってねぇのか?」


「いい気分はしないけどね。仕方ないんじゃない?」


この時悪い奴じゃないんだろうって思った。普通ため息付かれたら怒るのに翔は笑って、フォローまでしてくれたから。

それからずっと友達だ。何考えてるのか分かんない事の方が多いけど、本当は良い奴だから。周りの奴が何を言っても、翔とは友達でいると思う。でも、できたら周りの奴にも女たらし以外の翔を知ってほしい。そしたら皆も翔と友達になりたいと思うはずだから。



「あ〜っ分かんねぇ!俺聞いてくる」


「は?」


思わず懐かしい光景に浸っていた耕平だが、翔の声で現実に戻る。

考えても分からなかったので、直接本人に聞きに行くらしい。


「耕平クンも来る?」


「何でだよ。行かねえよ。あ、そう言えばお前誰に振られたの?」


「D組の小黒 麻奈」


「あー、あの美人な子?」


「そ。超美人。俺程じゃないけど」


時々話しに出てくるので名前だけは知っている。実際に見た事はない。


「じゃあ俺言って来る。長くなるかもしれないから先帰ってていいよ」


「そうか?じゃあな。あんまり失礼な事言うなよ」


「それは相手の態度によるね」


笑顔の翔に無言で手を振って耕平は教室を出た。





















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