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5. 猫はひとりで丸くなれる
幸せとは、
あたたかい寝床を見つけること。
急ぐものは、
昼寝を知らない。
怒るものは、
たいてい寝不足である。
夜。
人が帰るころ、
猫はすでに丸くなっている。
猫にとって一日は、
昼寝のあいまにある。
人にとって一日は、
やり残しのあいまにある。
❀ ❀ ❀
優雅さとは
転ばぬことではない。
余計な足音を立てぬこと。
自分の円を持て。
そして、ときどき
誰かの円と重ねよ。
ひとりで丸くなれる者が、
孤独と友情のあいだに
やわらかな寝床を作る。
人は世界を変えようとする。
猫は寝床を変える。
❀ ❀ ❀
人は、猫のようには生きられない。
朝は急ぎ、
昼は削られ、
夜にようやく静かになる。
それでも、
せめて今夜くらいはと思う。
少しだけ、丸くなる。
完璧な円でなくていい。
角がひとつ減るだけで、
だいぶ違う。
❀ ❀ ❀
世渡りは、
軽やかであれ。
柔らかであれ。
いつでも
自分の足で着地せよ。
そして何より、深入りするな。
己のぬくもりに忠実であれと、
まるい背中が告げている。
その姿は、
なぜか賢く見える。
だが猫は、何も考えていない。
ただ、面倒を避けただけだ。
それでも、今日も。
陽だまりに、
いちばん長くいるのは、
──猫である。




