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3. 猫は柔らかくはみ出す
人の往来、肩と肩。
ぶつかり合うのは
たいてい譲らぬ者同士。
ぶつからぬ術を、猫は持つ。
尾で譲り、
ひげで頷き、
瞳で間合いをはかる。
通りすがりの風にさえ
一礼かわす耳の先。
人の社交は
距離を保つマナー。
猫の社交は
そよと揺蕩う風の作法。
❀ ❀ ❀
猫は距離を上手く保つ。
いつでも逃げられる位置にいる。
陽だまりを分けあいながら、
本心までは分け与えない。
撫でる手の
半歩手前で、ふと止まる。
近づきすぎないのは
嫌いだからではない。
味わいである。
甘えすぎれば、
餌の時間まで支配される。
人の距離は難しい。
踏み込みすぎて一歩引き、
引きすぎてまた近づく。
結果、
妙な位置で立ち止まる。
……だいたい邪魔な場所である。
そして疲れる。
❀ ❀ ❀
猫は箱を見つけると入る。
なぜか、全員入りたがる。
箱が一つしかないと、
取り合いになる。
そして最終的に、
全員少しずつはみ出す。
人は揉める。
猫は、はみ出して満足する。
解決方法が柔らかい。




