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2. 猫は他人の火種で暖を取らない
急がない。
追いかけない。
トレンドは通り雨。
濡れるのは、
いつも声の大きい者だ。
人は中心を目指す。
猫は自分を中心にする。
❀ ❀ ❀
棘のある言葉には、
ひげを伏せて知らぬ顔。
正義は毛並みを荒らすと、
よく知っている。
人はサボテンになる。
猫は刺さる前に離れる。
❀ ❀ ❀
燃え立つ場には近づかない。
距離を測って、すっと退く。
臆病ではない。
火傷はつまらないと
知っているからだ。
情熱は尊い。
だが焦げ目は少ない方が美しい。
人は燃え尽きる。
猫は灰の上を通り過ぎる。
❀ ❀ ❀
誰かが声を荒げれば、
耳だけ貸して、あとは風任せ。
争いあらば高みに逃れ、
収まるころに舞い戻る。
勝者にも敗者にも
同じ顔で、あくびをひとつ。
——勝ち負けなど、
寝床の広さほどの価値もない。
猫は知っている。
爪は、抜かずに隠せると。
退く一歩が
エレガンスを生む。
それが見切りの美学。
人は爪を見せて平和を語る。
猫は平和を寝て待つ。




