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1. 猫は“いいね”を集めない
朝まだき。
障子に映る影ひとつ。
音も立てずに、伸びをする。
しっぽは筆。
畳にさらりと一句したためる。
「今日もまあ、悪くない」
揺れる文字は、なかなかの達筆。
人は朝に追われる。
猫は朝をやり過ごす。
❀ ❀ ❀
タイムラインは、
終わりのない迷宮。
朝の窓辺で、無数の声が
鏡のように互いを映し合う。
猫は迷宮を探索しない。
そこに意味も与えない。
人は道に迷う。
猫は歩いたところが道になる。
❀ ❀ ❀
通知はカラフルな鼠。
ときどき、
こちらが追われている気もする。
猫は全てを
追いかけない。
人は見逃すことを恐れる。
猫は見逃しても困らない。
❀ ❀ ❀
「いいね」の鈴を
ちりん、と鳴らす。
腹は満たされぬが、
沈黙よりは暖かい。
人は空気を読む。
猫は空気をすり抜ける。
❀ ❀ ❀
疲れた声を見つけたら、
横に座って毛づくろい。
「まあまあ、肩の力を抜いて」
慰めとは、
香り立つ午後の
ささやかなアロマのようなもの。
人は言葉で埋める。
猫は隙間に座る。
❀ ❀ ❀
友情は、
鈴の数では測れない。
ただ、
そばにそっと残るもの。
人は“いいね”を集めて安心する。
猫は残ったもののそばにいる。




