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1 再会

https://ncode.syosetu.com/n0568jg/

の続編です

私は寺谷ミンク、シーガ町の中華料理屋でバイトをしている普通の女子高生だ。2ヶ月ぐらい前に軍隊に巻き込まれ、ロボットに乗って戦ったりしたが、今ではすっかり日常が戻ってきている。


さて、私のバイト先はなかなか繁盛しているので、今からの時間は混乱を極める。ま、私にかかればチョロいけどね。おばあちゃんが言うには、私には並列思考の特技がある。状況を頭に入れて、これから起こる可能性がある事をすべて同時に考えられるので、先手を打って行動出来るってわけ。2番テーブルに座ったお客さんは店に入った時にエビチリを見て食べたそうな顔をしてたから、注文前に作っちゃう。5番テーブルのお客さんはコップを倒す可能性が高いので布巾と雑巾を近くにスタンバイ済み。13番テーブルは間もなくビールの注文が入るので注いでおこう。


ピンポンと機械音がして、13番テーブルの注文が厨房に表示された。


「はい、ビールお待ちどうさま。」


「はや!ミンクさん、いつもながら未来見えてるでしょ?」


常連さんがそう言って笑う。


「残念だけど見えてないよ。可能性が高い事に準備してるだけだから、100%じゃないしね。」


そう、予想の域はでないのだ。2番テーブルはエビマヨを注文してきたし。ちっ、エビが食べたいだけだったか。


「すみませーん、タッチパネルが動かないんですけど?」


8番テーブルのお客さんから声がかかった。最近注文をタッチパネル式にしたのだが、たまにトラブルがある。繁盛してるんだからしっかりしたシステムを入れればいいのに、店長の知り合いに発注したのが悪かったのだと思う。この瞬間、バイトの中で手が空いてるのは私だけだ。仕方ない、私が行くか。叩けば直るだろう。


「はいはーい、お待たせしました。トォ!」


私はタッチパネルをグーパンチした。さすがに本気で殴ったわけではない。死んだおじいちゃんが古いテレビを叩いて直していたのを思い出して、優しく、しかし一縷(いちる)の厳しさを込めて正拳突きを放った。タッチパネルよ、さぁ起き上がれ!


ボンッ!ボンッ!ボンッ!


店のタッチパネルが連鎖的に爆発を始め、店内が大騒ぎになった。


「コラ!ミンク、てめー、タッチパネルに触りやがったな!お前は機械に触るんじゃねー!」


店長から怒声が飛ぶ。そう、とっても意外だろうが私は機械オンチなのだ。機械を触ると必ず壊してしまう。というか、だいたい爆発する。これはもう体質なので仕方ない。


と、爆発の騒ぎに紛れて食い逃げしようとするお客がいた。席を立って駆け出そうとした所で、絶妙な所に私が置いておいた段ボール箱につまづいて転びそうになる。体勢を立て直そうと足を踏ん張った場所には、あらかじめ私が台車を置いておいた。盛大に転んだ食い逃げ犯を上から覗き込むようにして、私は声を掛けた。


「久しぶりね、ソーマ。また食い逃げしに来たの?」


「変装してきたのにバレてたんだね。てか、このトラップ酷くない?食い逃げしてなくても引っかかるよね?」


「うちはテーブルでお会計だからね。お金をもらったらこの段ボール箱を片せばいいだけよ。今日はどうしたの?スナオさんとデート?デートで食い逃げとか最低だよ?」


変装して食事をしにきていたのは、私が以前軍隊に巻き込まれる事になった原因だった。前に食い逃げしたソーマを捕まえた時、その手際の良さをソーマが気に入って軍にスカウトされたのだ。軍には入らなかったが、なんだかんだで手伝うことになった。軍人がなぜ食い逃げするのかって?それはソーマの趣味が法律違反だからだ。ロボット操縦の腕を見込まれて軍隊にいるが、平和になったら牢屋行きが確定している。彼の上司がそれを楽しみにして、ソーマの犯罪歴をせっせとメモしているくらいだ。


「あの、デートとかじゃなくて、今日はミンクさんにお願いがあって来ました!軍に入って下さい!」


ソーマと一緒に来ていた女性が元気よく発言した。


「え、嫌だけど?」


と応えると固まって動かなくなった。この女性はスナオさん。ロボット戦闘における対個人戦最強のパイロットだが、予想していなかった事が起こると固まって動かなくなる。以前私を軍にスカウトに来た時も、断られると思ってなかったらしく、朝から昼過ぎまで同じ場所で固まっていた。軍にスカウトしに来て、断られないと思ってる時点でおかしいと思う。不思議なキャラだが、黒髪の美人で名前のとおり素直な憎めない性格をしている。


「まぁ、話だけでも聞いてよ。じゃ、軍の本部に行こうか。店長さん、ミンクさん借りてくね?代わりにシステムの修理代はシーガ軍Z班が払うよ。はい、これ書類。」


ソーマはそんな感じで強引に話をまとめ、すなおちゃんを再起動(次の行動の指示を具体的に与えると動く)して、私を連れて軍隊の本部に向かった。



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