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双焔の魔女の旅路  作者: かおぴこ
第4章 鉢金傭兵団
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第43話 傭兵団の募集

「アカさん達の調査通り、かなり大規模なゴブリンはの集団だったとのことで、王都から騎士団が派遣される事になりましたよ」


 先日の調査報告(※)から十日ほど。ほどほどに安全な依頼や街の掃除などの依頼をコツコツとこなしていたアカとヒイロに、馴染みの受付嬢であるサティが告げた。

(※第1章 第12話)


「そんなわけでこちら、報酬の残りとなります」


 銀貨7枚と銅貨50枚(約75000円)をカウンターから受け取った。


「ゴブリン、冒険者には討伐依頼は来ないんですね。受けたかったとかそういうわけじゃないんですけど」

「ふふ、お二人はいつも堅実ですもんね。それが一番だと思います」


 サティの説明によると、100体程度の群れなら信用できる冒険者に依頼することもあるが、今回のように推定千体もの大規模な群れだと安全のために王都から騎士団が派遣されるとのことだ。


「王都からってなると来るまでに結構時間がかかるんじゃないですか?」

「結構無理して飛ばしてくるらしいですけど、それでも十五日ぐらいはかかりますね。その間にさらに群れの規模が大きくなるリスクはあるんですが……まあ、そこも見越してきちんと戦力を整えてきてくれるらしいので」

「ゴブリンの数百体を倒せる戦力って凄いですね」


 ゴブリン数体ならアカとヒイロでも苦戦はしないが、やはり数は驚異である。前回のように包囲されたら、次はなんとかなる気がしなかった。


「多分ですけど、聖騎士が派遣されるんだと思います」

「聖騎士?」

「騎士団の中でもトップの十名に与えられる称号です。王国最強剣士の騎士団長を筆頭にその力はまさに一騎当千と言われており、一年前に最強の幻獣と呼ばれるドラゴンまで討伐したと言われています」


 力説するサティだったけれど、ドラゴンを知らないアカ達にはピンと来ない。一応「それはすごいですね!」と驚いて見せたけれど、まあドラゴンを倒せるぐらいに強いのならばゴブリンなんてちょちょいのちょいなんだろう。


 そんな凄い人たちにもしも目をつけられるような事になったら大変だ、しばらく街の掃除に注力して、目立たないようにしておいた方がいいかしら。


 そんな風に考えたアカの袖を、ヒイロがちょいちょいと引っ張る。


「この依頼、どうかな?」

「ん、なんか良いのあったの?」


 アカがサティと騎士団について話をしているのを横目にちゃっかり次の依頼を探してきたヒイロ。ヒイロとは安全と報酬のバランスについて認識が合っているので、基本的に彼女が選ぶ依頼は外れないのだが。


「えーっと……傭兵団の団員補充?」

「うん。期間限定って事で西の国境付近での戦闘のお手伝い、報酬は銀貨三十枚で出来高によって増減あり」


 銀貨三十枚(約30万円)の依頼なんて珍しい。前回のゴブリンの集落調査も同じ額だったけれど、あれは人数制限もあり結局二人が手にした報酬はその半分だった。


「ああ、この依頼ですか」


 サティはヒイロの手元の依頼票を見ると、少し難しい顔をした。


「これも人数制限ありですか?」

「いえ、それは無いですね。この鉢金傭兵団も実績があるきちんとした傭兵団ですよ。お二人が男性なら文句無しにオススメではあります」

「ああ、そういう感じか」

「はい、そういう感じです」


 サティが言わんとしているのはつまり、女が傭兵になろうなんて歓迎されないという事と、まあそれでも受けるとなると向こうは夜の相手を期待するだろうという事だ。


「でもまあ舐められない様に実力を示せばいいんでしょ?」


 ヒイロがメイスをポンポンと叩きながら事も無げに言ってのける。


「それはそうですが、傭兵団のお眼鏡に適う実力と言うからには相応のものが要求されますよ」

「だ、そうだけど?」

「それは分かるんだけどさ、そろそろ私達も自分の実力を把握しておくべきかなと思うんだよね」


 ああ、この間の件か。アカは合点がいった。


 前回初めて他のパーティと共に依頼を受けた。その時に

獅子奮迅(他のパーティ)を見て抱いた素直な感想は「意外と強く無いんだな」であった。


 まあサンプルがゴブリン討伐のみだったのでそこまではっきりと言えるわけでもないのだが、彼らの戦いっぷりを見て強く無いな……正直背中を預けるには頼りないなと思ったのがアカの素直な感想だった。


 ……。


 …………。

 

 

「それってもしかして私達が結構強いって事ないかな」

「だってギタンさんのトレーニングではボコボコだったよ?」

「ギタンさんが滅茶苦茶強かった説、無い?」

「そりゃ滅茶苦茶強かったけどさ」

「私はアカと獅子奮迅が頑張って戦ってた時に気絶してたからなんとも言えないんだけど、もしかして私達って自分の実力を過小評価してる可能性無いかな」

「過大評価してリスクを負うより良く無い?」

「それはそれでいざという時に正しい判断ができないよ。だから他の冒険者と比較して立ち位置を把握しておいた方がいいとは思ったんだ」

「うーん……機会があれば、だねぇ」


 ……。


 …………。



 そんな会話をヒイロと交わした事を思い出したアカ。なるほど、傭兵団に実力を示してみせると言うのは力試しとしてはありだろう。もう一度他の冒険者と合同依頼を受けて、その実力と自分たちを比較してみるしか無いかななんて考えていたけれど、それはそれで魔物と戦わなければならないので下手を打つと万が一がある。だけど傭兵団との力試しなら自分たちが思った通りのヘッポコでも命までは取られないだろう。


「ヒイロの言うことも一理ある、か」

「決まりだね。サティさん、お願いします」


 サティとしては二人が無謀な事を言っている気がしてならないが、受付嬢として警告はしたし無理にやめさせることも出来ない。


 まあ鉢金傭兵団は実績が示す通りのしっかりとした傭兵団だ。アカとヒイロなら流されて夜の相手をする様な事にはならないだろうし、実力足らずと追い返されたとしてもそれは依頼人の都合によるキャンセルなので違約金は発生しない。無傷とは言わないだろうが、さりとてそこまで酷い事にはならないだろう。


 そう考えて依頼受領の手続きをした。


◇ ◇ ◇


「ここが鉢金傭兵団との待ち合わせの酒場ね」


 サティから聞いた酒場に向かう。まだ日が高い時間帯ということもあり、酒場の前には準備中の札がかかっているが中に数人の人の気配はする。


「緊張してきたね」

「舐められない様にしないとね」


 この子の自信満々さはどこから来ているのだろうか。


「ヒイロ。サティさんからも言われたけど、あまり相手を煽る様な発言はしないようにね?」

「しないしない」


 ふぅ、と息を吐いて酒場の扉にてを掛ける。ギィと軋んだ音を立てて中に入ると、奥のテーブルに三人の男達が座っていた。


 手前側に座る男がこちらをギロリと睨んできた。


「……娼婦はまだ呼んでねぇぞ」

「ギルドの依頼できたんだけど」

「帰んな」


 取り付く島もなく拒絶を示す男。アカは肩をすくめる。


「理由を聞いてもいい?」

「俺たちが欲しいのは戦えるやつだ。夜の相手は呼んでねぇ」

「失礼なサルだな。脳みそにチ○コ詰まってんのか?」


 ヒイロ!? アカはビックリして横を見る。


「あぁん!?」


 一方で男は一瞬、ヒイロの発言の意味が分からず固まったがすぐに声に威圧してきた。しかしヒイロは意に介さずに言葉を重ねる。

 

「こっちは一緒に戦ってやるって来てるんだよ。それを女と見ればヤル事しか考えられないならそこらのサルと大差ないって言ってるんだよ」

「てめぇ! 言わせておけば!」


 男は椅子から立ち上がり腰の剣に手をかける。来るか? とアカに緊張が走るが、一番奥の男が先に制した。


「やめろ」

「ホランド団長! このガキが喧嘩を売ってきて!」

「先に挑発したのはおめぇだろ。口で勝てないからって先に手を出すのはダセェぞ」

「……ぐっ!」


 団長と呼ばれた男に嗜められ、手前の男は悔しそうに俯く。そんな男に対して団長は声をかける。


「……とはいえ、舐められっぱなしってわけにもいかねぇよなぁ」

「団長!」

「男が来ても実力は見るつもりだったんだ。ヘイゼル、トマス、丁度良いから威勢のいい嬢ちゃんの相手をしてやれ」


 む。ヒイロの失礼極まりない挑発で終わったかと思ったけど、なんだかんだ実力を見てもらえる雰囲気? チラリと横を伺うと、ヒイロはどやっと言わんばかりの顔をしていた。いやこれただの結果オーライでしょ。偉そうにするなよ。


 そんな事を考えているアカと隣のヒイロに団長が声を掛ける。


「そういうわけだ。確かにこっちも性別を指定してなかったし、お前たちを入団希望者として認めよう。ただし共に戦える実力があるかテストはさせて貰う、それでいいな?」

「……ええ、望むところよ」

「じゃあ早速始めようか。ああ、それとこれはついでだが」


 団長がニヤリと笑って続けた。


「腕に自信のある冒険者様は、脳みそにチ○コが詰まってるサルなんかに劣ることは無いだろうが、もしも負ける様なことがあれば、それは何をされても文句は言えないよなぁ?」


 ……あれ、これ負けたら犯されちゃうやつじゃない?

 隣のヒイロを見るとやっちまったって顔をしていた。

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