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双焔の魔女の旅路  作者: かおぴこ
第11章 貴族の護衛依頼
162/219

第150話 束の間の休息(※)

 貴族の母娘を護衛しながら王都へ向かう旅は三日目を迎えていた。


 陽が高く登った頃に一行は大きな街に到着する。


「今日はここで宿をとって明日の朝にまた出発だ。物資の補給を忘れるなよ」


 月桂樹のリーダーであるウィザスが自身のメンバーと、双焔の二人に声をかけた。


「宿は決まってるんですか?」

「そんなの自分達で勝手に探せばいい」

「そうではなくて、依頼人の泊まる宿です」

「……それを探すのも護衛の仕事だが、お前達は依頼人に気に入られているようだから上手いことやっておけ」


 ウィザスはそう言うと振り返ってさっさとどこかへ行ってしまった。


「あの野郎」

「放っておきましょう。それより二人の宿を確保しないと」


 ウィザスに悪態をつくヒイロを引っ張って、宿を探すことにする。とはいえ貴族の泊まる宿なんて相場も探し方も分からない。仕方なくここまで馬車を引いてきた御者に心当たりを訊ねると、やはりそこらの冒険者用の宿ではなくて、今回のように貴族が遠征する時に利用する宿があると教えてくれた。彼にお礼を述べて依頼人の二人を貴族用宿まで案内したアカとヒイロ。


「それでは私達はここで。明日の朝お迎えにあがります」

「あら、今夜は護衛をしてくれないの?」

「フロントで聞いたんですが、一応宿自体に専属の警備がいるとの事です。なので私たちが護衛しようとすると、お二人の隣の部屋を別料金でとらないといけないらしいんですよ」

「とればいいじゃない。お金なら心配しなくていいわ」


 アリアンナ夫人はそのまま扇子でフロントを指した。さすがに少し躊躇するアカだったが「宿の警備だけでは私達を守りきれないかもしれないでしょう?」と夫人が付け加えたので観念した。


◇ ◇ ◇

 

 わりあてられた部屋の壁をヒイロがコンコンと叩いた。


「防音はそこそこしっかりしてるね」

「隣で何かあっても気付けないってこと?」

「うん。防犯の意味ではやりづらいかな」

「じゃあやっぱり外から窓を見張らないとダメかぁ」


 隣の部屋なので物音がすれば分かるかと思ったが、余程大暴れしない限りは気付けなさそうである。


 廊下には宿の警備がいるし、扉には鍵がかかっている。無いとは思うが、もしも貴族の二人を襲うような輩がいるとしたら窓から侵入するだろう。とすれば念を入れるなら屋根の上で窓を見張る必要がありそうだ。


「朝まで交代で見張りましょう。それでも仮眠はとれるし」


 アカはちらりとベッドを見る。貴族用の宿というだけあって、しっかりとベッドにふわふわの布団が置いてある。さすが、冒険者が泊まるような宿の軽く百倍の料金を取るだけあるなと感心した。


 この世界に来てからこんなお布団を使った記憶が無いので、少しでもこれで寝ておきたい。


「オッケー。じゃあ二人が戻ってきたら警備開始だね」


 ヒイロが頷いた。護衛対象の二人は、この街の貴族の晩餐に招かれている。その護衛は迎えにきた貴族が責任を持って行うので言われてアカとヒイロはこの宿でお留守番をする事になったのだ。


「そうね。五の鐘(午後6時)から晩餐会って言ってたから、戻ってくるまでは早くてもあと数時間か。ちょっと暇ができたけど、街に繰り出す?」

「うーん……消耗品は減ってないから補充も要らないし、ご飯は宿で用意してくれるっていうし別に外に行く理由は無いかなぁ」

「観光気分とか?」

「そういう雰囲気の街でもないよね」


 ヒイロの指摘にアカも頷いた。


「じゃあ今のうちに身体を休めておきましょうか」

「賛成! ねぇアカ、お風呂も各部屋についてるし、一緒に入ろうよ」

「む、さては最初からそれが狙いだったな?」

「バレたか」


 悪戯っぽく笑うヒイロに手を引かれ、二人は部屋に備え付けられている浴室へ向かった。


 ……。


 …………。


 ………………。


 ぴちゃ、ぴちゃ。


「ん……んん……、あん……」


 響く音は浴槽から溢れるお湯か、それともヒイロが自分の身体を隅々まで舐める音か。快感に身を委ねつつ、アカはボーッと考える。


 ヒイロの舌がアカの太ももの内側を、徐々にその中心に向かって進む。だがヒイロは、アカが一番触れてほしい場所を敢えて避けるように焦らす。


「んんっ……ヒイロ……」

「なに?」

「……いじわるしないで……」


 アカが潤んだ瞳でヒイロに懇願すると、ヒイロはにぃと笑いアカの顔に跨った。


「じゃあ、一緒にしよ」

「ん……」


 目の前に迫ったヒイロの大切な場所にアカは舌を伸ばす。そこから滴るやや粘り気を含んだ液体は、おそらくお風呂のお湯だけでは無いだろう。


 ジュルリ、とお行儀悪く齧り付くように吸い付くと、ヒイロの身体がビクンと跳ねた。そのまま舌でヒイロを弄ると、それにあわせてビクンビクンと反応する。


「あ、あ、あっ……あんっ!」


 気が付くとヒイロは腰を落とし、アカの顔にグイグイと押し付けて居た。舐められる快感に溺れながらも無意識に、より気持ち良い場所を求めて身体が動く。


 もっと、もっと……!


 だがアカはヒイロから顔を離してぷはぁと息を吐くと、顔を引いてしまった。


「……アカ?」

「一緒にって、言ったのに」


 そういうとアカは改めて足を広げ、少し腰を浮かせてヒイロが舐めやすい様に体勢を整える。ヒイロが悦んでくれるのも嬉しいけれど、アカだってもう触ってほしくて仕方ないのだ。


「あ、ごめん。気持ち良すぎてつい……」

「いいから、はやく舐めて」


 そう言って急かして腰を突き出すアカに、ヒイロはくらりとした。アカは普段、下ネタやそれに繋がるような事は口にしない。

 それが自分と身体を重ねている時には、こんな風にはした無いことを口にして求めてくる。ヒイロはそれが堪らなく嬉しく、征服感に満たされる。アカのこんな姿を知っているのは、こんな事を言わせられる自分だけなんだという想いがますますヒイロを燃え上がらせた。


 火のついたヒイロはアカをこれでもかと攻め、アカも負けじと快感に悶えつつヒイロを求める。


 しばらくご無沙汰だったこともあり、二人の情事は数時間にも及んだのであった。


 ……。


 …………。


 ………………。


「はい、お水」

「ありがと。……脱水で二人とも倒れるとか、ちょっと盛り上がりすぎたね」

「ちょっとどころの話じゃ無いわよ。危うくやるべき仕事をすっぽかすところだったじゃない」


 あまりに盛り上がりすぎて、気付けば日はすっかり暮れてもうじき護衛対象の二人が帰ってくるであろう時間である。だというのにアカとヒイロは行為による疲弊と脱水でヘロヘロになっており、慌てて水を飲む始末であった。


「でもアカだってのりのりだったよね」

「それはそうだけど。こうなっちゃうから、仕事中にセックスするのは良く無いって思ってるのよ。どうせなら……」

「どうせなら?」

「っ!? なんでもない!」


 うっかり「どうせなら後のことも何も気にしないタイミングでしたい」なんて口走りそうになったアカは顔を赤くして首を振った。そのまま身体を拭いて服を着るとヒイロにも服をパスする。


「さっさと着ちゃって。どっちが先に見張りをする?」

「はーい。私が先に窓を見るから、アカは交代まで寝てていいよ」


 そう言ってテキパキと服を着たヒイロは開いた窓枠に手を掛ける。


「え、屋根に登るの?」

「そのほうが良く見えるでしょ」


 そういって笑うと窓から身を乗り出してひょいと屋根に登ってしまった。


「……私は窓辺から外を見ていればいいかなと思ってたんだけど。まあヒイロのやり方のほうが確実といえば確実か」


 一人残されたアカはそう言って自分を納得させると、布団に倒れ込んだ。先ほどの疲労感がまだ残っているし、ありがたく先に仮眠させてもらおう。


 先ほどのヒイロとの交わりを思い出し、恥ずかしくも幸せな気持ちに包まれながら、アカは目を閉じた。

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