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双焔の魔女の旅路  作者: かおぴこ
第11章 貴族の護衛依頼
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第147話 顔合わせ

 夕食時、ナナミに今日の報告と二日後の遠征について話をする。


「明後日とはずいぶん急だね」

「ですよね。まったく冒険者ギルドってやつは……」


 ナナミに同意してギルドに文句を言うヒイロ。いや、相談もせずに依頼を受領してきたことを咎めているんだと思うよ? ほら、師匠も呆れた顔してヒイロのことを見ているし……。しかしヒイロのマイペースさに毒気を抜かれたのか、ナナミは表情を崩して仕方ないかと呟いた。


「どっちみちアンタ達がBランクになったら、魔道国家へ向かう準備をしたいから、王都へ向かうつもりではあったけどね。その前にここを引き払おうを思っていたんだけど、さすがに明日一日じゃ厳しいね」

「え、そんな計画だったんですか? それはしまったなぁ……」

「まあ貴族からの依頼を回してもらえる機会なんてそうそう無いのも事実だし、少ないチャンスはきちんとモノにしないと勿体ないさ。アンタたちは先に王都に行ってな、アタシも準備が済んだら向かうことにするよ。……それよりヒイロ、アンタ貴族相手に失礼なことをするんじゃないよ」

「私だけ!?」

「アカはそういうの、そつ無くこなすタイプっぽいしね」

「そんな事はないと思いますけど。でも、そういえば貴族って会ったことないわね。ずっと前に騎士団と話したことがあるくらいかしら(※)」

(※第4章 第54話)

「騎士に貴族が多いのは間違いないが、中には平民上がりも居るから必ずではないねえ」

「それで、私はお貴族サマにどう接すればいいんですかっ?」


 名指しで注意されたヒイロが少し唇を尖らせてナナミに訊ねる。


「難しいことはないさ。向こうだって冒険者がきちんとしたマナーを身に付けているなんて思ってないし期待もしていない。ただ身分としてはあちらが絶対的に上、それを弁えた行動と言葉遣いを忘れなければ首が飛ぶ事はそうそうない」

「え、逆に粗相があると首が飛ぶんですか?」

「物理的にね。だからヒイロ、気をつけるんだよ」


 ニヤリと笑うナナミに、ヒイロはひぃっと震えた。


「わ、私はアカの後ろに隠れておく事にするよ」

「最低限のやりとり以外はそれがいいだろうね」

「ちょっ、二人とも私は問題無いみたいな前提で話してるけど、私だって上手くできる保証はないんですけど!?」

「アカは平気だろうさ。アタシに大してちゃんと年上に対する敬意を払ってるだろう?ヒイロ(この子)はちょっと調子に乗ることが多いからね」

「そうそう」

「自分で言うなっ!」


 ヒイロのこの性格はカワイイと思うが、ナナミによるとこういった距離の詰め方は相手によっては一発で不敬と捉えられ兼ねないのでやはりアカが矢面に立つのが適任ということであった。


 ヒイロはいつも通りの人見知りを存分に発揮して貰っておくのが良さそうだ。


「王都までは馬車で二十日はかかるからね。途中の街で補給はあるだろうけど、野営や保存食の準備なんかはしておいた方がいいだろうね」

「それは明日の内に、ですね」

「他のパーティも居るんだろう? トラブルは起こすんじゃないよ」

「それは相手次第ですわ」

「こらヒイロ、そこは嘘でも善処しますって言っておかないと」

「善処しますっ!」

「はぁ……この娘は」


 そうはいいつつナナミもそこまで心配はしていない。ヒイロはなんだかんだいいつつ仕事はきちんとこなす要領の良さがある。しばらく一緒にいてそういった部分への信頼はある。


「他に気をつけることってありますかね?」

「あとは普通の護衛と変わらないね。強いていうならトラブルがなくても二十日間は護衛が続いて乳繰り合ってる暇なんてないから、やるなら今日のうちにしておきな」

「ブッ!?」

「師匠の公認がっ!」

「護衛を途中で抜けて陰でこっそりするくらいなら、事前に済ませておけってだけの話だよ」

「さ、さすがにそんなことしませんって!」

「どうだかねぇ。師匠(アタシ)が隣の部屋にいるのにこっそりおっぱじめる子たちが言っても信用ならないもんだ」

「あわわわわっ! 何故それをっ!?」


 一応、アカとヒイロとしては配慮しているつもりではある。ただ日本の住宅のように防音がしっかりしているわけでもないので多少配慮したところで……というわけだ。


 真っ赤になって俯くアカとあわあわと弁明を重ねるヒイロを見て、ナナミはカラカラと笑った。


 ……。


 …………。


 ………………。


「というわけで、どうする?」


 寝室にて、ヒイロは一応アカに訊ねる。


「あんなこと言われてホントに出来るわけないでしょ」

「でも、一応師匠の公認貰ったわけじゃん?」

「あれを公認と言って良いものか」

「あーあ、防音の魔道具とかあれば良いのにね」

「意外とありそうな気はするけどね。喘ぎ声が外に漏れないようにっていうよりも、外に聞かれて困る話をする時のためって用途で」

「それだっ!」

「それだじゃねぇ」


 パチンと指を弾いて目を輝かせたヒイロに冷静にツッコミを入れつつ、アカは布団に横になって目を閉じる。昼間の依頼の疲れもあるし、今日はこのまま寝てしまおう。


 ……チュッ。


 眠るアカの唇に、あたたかいものが重なる。ヒイロがキスをしてきたのだ。


 ……チュッ。


 少し間を置いて、もう一度。ここでアカが応えると今日はOKのサインとなる。いつの間にか出来た暗黙のルールだ。


「今日はお預けかな。じゃあおやすみ」


 ヒイロが残念そうに呟いてアカの隣で横になった。アカだってしたいかしたくないかって言われればしたいけど、隣で聞かれてると思ったらとても無理である。()()()()()()()で興奮できるほどの豪胆さは持っていないのである。


 ヒイロも別にそこまでオープンな性癖を持っているわけではないが、バレちまってるなら仕方ねぇなぁくらいには開き直るところがあるため今日もアカが乗ってきたら全然ヤル気満々であった。この辺り、もう少しだけ自重して欲しいと思うアカである。


◇ ◇ ◇


 二日後。しっかりと準備を整えたアカとヒイロはギルドを訪れる。


「おはようございます」

「おはようございます。依頼人はまだ来ていませんが、先に同行するパーティと話をしておいてください」


 受付嬢に促され、後ろを見ると四人組の男たちが腕を組んでいた。


「お互い初対面ですかね。四人ともBランクのパーティで「月桂樹(げっけいじゅ)」の皆さんです。こちらがCランクのパーティの「双焔」になります」


 それではあとは良しなに、と受付嬢が下がる。


 四人組は剣を持った戦士のような風貌のものが三人と杖を持った魔法使い風が一人である。剣持っていても魔法を使うものは居るし、杖持ちが実はゴリゴリの肉体派といった可能性もあるので安易に決めつけるのは良くないが、素直に受け取るのなら戦士三人を魔法使いがサポートするスタイルだろう。ちなみに戦士のうち一人は女性である。


 魔法使い風の男が一歩前に出る。


「私が月桂樹(このパーティ)のリーダーのウィザスだ。そちらのリーダーは誰になる?」

「あー、えっと、私です。双焔のアカと言います」

「依頼人からは金貨五枚(500万円)と言われているが、分配はこちらが四、そっちが一で構わないな?」

「内訳は?」

「Cランクのお前たちは半人前とカウントして五人で等分配。簡単な話だ」

「……わかりました」

「フン。精々お貴族サマのご機嫌をとってくれ」

 

 ウィザスはアカとヒイロを一瞥しつつ鼻で笑った。一旦離れるとアカの隣でヒイロが憤る。


「明らかに舐められてますけど」

「そりゃあ私たちがCランクだからでしょう。ヒイロ、抑えて」


 アカだってバカにされるのは面白くはないが、Bランク昇格のための試験のような形で依頼にねじ込まれたのは自分たちの方であることを考えると、あちらが嫌味の一つくらい言いたくなる気持ちもわかる。


「報酬の分配も足元見られてたよ」

「幸いお金には困ってないし、二十日間も一緒なのに初めから揉めるのも面倒かなって」

「まあそれも分かるけどさぁ……」


 理解はしつつも納得のできないヒイロを宥めつつ、アカは月桂樹の四人を見る。値踏みするようにこちらを見る目がイヤな感じだなと思った。

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