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双焔の魔女の旅路  作者: かおぴこ
第7章 山の麓の大きな街で
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第93話 窮地の二人

「ゲボォっ!」


 無意識に嘔吐したヒイロは、喉に詰まった吐瀉物をゲホゲホと咳き込みながら吐き出す。最悪の目覚めだ、酷い悪夢を見たような気がするけど、今のゲロで忘れてしまった。


「ゴホッ、ゴホッ……、ここは?」


 まだ靄のかかったような意識を、頭をブンブンと振って叩き起こす。確かに私は……そう、ヲリエッタに誘われてご飯を食べていたはずだ。しょっぱい肉をお酒で流し込むように飲み込んで、そうしたら急に意識が遠くなって……。


 とりあえず口の周りのゲロを拭おうとするが、手が動かない。気が付けばヒイロの両手は背中側で……ついでに足も同様に、縄でぐるぐると縛られていた。


 両手両脚を縛られた状態で床に雑に転がされていたのである。


 ここで初めて自分が何者かに拐われて監禁されているのだと、状況を理解した。


 慌てて辺りを見回すと、どうやら薄暗い部屋の中のようだ。月明かりも入って来ないため暗闇に目が慣れる迄にはもう少し時間がかかりそうだ。


「おいおい、朝までは起きないんじゃなかったのかよ」


 野太いと男の声が聞こえる。そちらに顔を向けると、蝋燭を持った筋肉質の大男がヒイロを見下ろしていた。


「しかもゲロまみれじゃねーか、汚ねぇな」


 ゲロで汚いのは同意するが、拘束されている姿を見て何も言わないと言うことはコイツが自分を拐った相手だろうと思い、ヒイロは男を睨め付けた。


「流石にくせぇと勃つモノも勃たねぇかな。あらよ……っと!」


 部屋の片隅にあった桶からを持ち上げてその中身をヒイロにぶっかける。汚水では無かったようだが、寝かされた状態でいきなり水をかけられてたため、鼻に水が入りヒイロはまた咽せて咳き込んだ。


 そんなヒイロを尻目に大男は服を脱ぎ裸になった。


「何、を……」

「お前は次だから、暫くそこで待ってろ」


 そういって男はベッド――部屋の反対側に粗末なベッドが一つ置いてある事にこの時気付いた――に向かう。


 手に持った男が蝋燭を再度テーブルに置くと、その上に寝かされた身体が灯りに浮かぶ。


「アカっ!?」


 ベッドの上に一糸纏わぬ姿で寝かされていたのはアカであった。手を縛られた状態ではあるが、スースーと規則正しい寝息を立てている。


「こっちは薬が効いてるな」

「アカに、何をっ……」


 咄嗟に飛びかかろうとしたが、手足を縛られているため動くことが出来ない。尺取り虫のように這ってでも寄ろうとしたが、そもそも身体が思うように動かない事に気付いた。


「何って、品定めだよ。一応聞くがお前ら処女か?」

「……品定め?」

「まあ寝てる相手にやるだけってのもつまらんから先に話してやる。その代わりこっちの女にはテメェから説明しろよ」


 そう言って男は自身の片手でイチモツしごきつつ、もう片方の手でアカの乳房を乱暴に揉んでみせた。


「んんっ……」

「感度は悪くねぇ。コイツ、(オトコ)を知らなさそうな顔しておいて意外と経験豊富だな?」

「アカ!? お願い、アカに乱暴しないで!」


 苦しげに顔を歪めるアカだが、意識が戻ったわけでは無いようだ。そんな様子を見て下卑た笑みを浮かべる男に、ヒイロは辞めるよう懇願する。


「そうもいかねぇよ。これから店に出すのに品定めは必須だし、反抗的なら調教もしとかねぇといけねぇからな」

「店、ですって?」

「お前らは今日からここで売春婦として働くんだよ」


 は? 売春婦? 言葉の意味がわからず怪訝な顔をするヒイロに男は呆れたように続ける。


「まだ分からんのか。お前らは売られたんだよ」

「売られた……」

「強い酒を飲ませて潰したり、それでダメなら薬を盛って昏睡させる。お前らには薬を飲ませたって言ってたな。薬は抜け切るまでに時間がかかるからできれば酒で潰して持ってこいって言ってるっつうのに」

「まさか、私達を売ったって言うのは、」

「ああ、ヲリエッタ達だよ。あいつは、お前達みたいな世間知らずを定期的にうちに卸してくれるお得意様だ。一応お前らは処女って事で買い取ってるな。今回は二人でしめて銀貨50枚」


 そんな人身売買みたいなことが……というか、ヲリエッタが自分達を騙して売春宿に売ったと言うことか。迂闊だった自分を責める。悔しげな顔をするヒイロに会えて満面の笑みを浮かべてみせる。醜い笑顔だとヒイロは思った。


「そんなわけで、これからしっかり稼いでくれよ」

「巫山戯ないで。アンタ達の言うことなんて聞くわけないでしょ」

「はっはっは、威勢がいいな。まあどんな女も最初はそう言うんだ。そういう女を客を取れるように躾けるのが「調教」の楽しさだがな」

「調教?」

「媚薬漬けにして何日も犯し続けるんだよ。泣いても喚いても、それこそ死にかけてもな。そのうち穴に竿が入って無いと落ち着かないようになる。そこであえて焦らすのが調教の仕上げだ。するとどうなるか? お前みたいな反抗的な目をしていた女が数日後にはお願いだから挿れてくれって泣きながら腰を擦り付けてくるんだ」


 聞いただけで反吐が出そうなやり方だった。汚物を見るような目で男を睨むが、まるで気にしていない様子で男は続ける。


「そうそう、まさにそんな目だな。そんなやつが俺にイヤらしい雌の顔を向けてくるんだ、堪んねぇよなぁ」

「最低っ……」

「好きなだけなじってくれて構ねぇよ。普段はさっさと媚薬漬けにするんだが、お前らは身体を痺れさせてる薬が抜けてからだな。面倒だが薬を重ねると効きが悪くなる上に副作用で死にかねないからな。……と、そろそろいいか」


 男は先ほどから片手でアカの胸を弄んでいたが、その手をそっと下半身へ伸ばす。


「なっ……!」

「あんまり濡れてねぇな。薬で寝かせるとこれだからつまらねぇんだ。まあ、具合を確認するだけならイケるか」


 そう言ってアカの腰に手を添える。


「やめて、お願い!」

「随分と必死だな。……フム、嫌がる女を無理やりってのはいつものことだが横に嫌がる女を置いてやるってのも悪くねぇな。どれ、こっちに来いよ」


 男は立ち上がるとヒイロの元に寄ってきた。首根っこを掴んで持ち上げると乱暴にアカの隣に放り投げる。ベッドに二人並んで寝かされた状態――アカは裸で相変わらず意識が無く、ヒイロは縛られている上に薬のせいでほとんど身体を動かすことが出来ない。


「ほれ、友達が犯されてるところをしっかり見ておけよ」


 男が改めてアカに覆い被さろうとする。


「いやああぁぁあっ! お願い、やめてぇぇ!!」


 このままじゃ、アカがっ! だがヒイロの悲痛な叫びは男にとって心地よいBGMでしか無い。


 身体さえ動けばっ……! だがどれだけヒイロが全身に力を入れても、身体を僅かによじる程度しか出来ないのだ。さっきから魔力で火を出そうともしているが、薬の影響か魔力をまともに操作出来ない。いつぞや敵の騎士と戦った時のように(※)一か八かの暴発をさせることすら出来ない。

(※第4章 第50話)


 何も出来ない無力感に、溢れる涙がヒイロの視界を滲ませる。その滲んだ景色の先でまるでスローモーションのようにゆっくりと男の手がアカにかかっていく。


「お願い、私はどうなってもいいからっ! アカだけはっ!」

「くぅ、いい台詞だねぇ。おっ勃って来たぜぇ」


 ヒイロの必死の懇願は余計に男の嗜虐心を煽るだけでしかなった。そそり勃ったそれをアカの大切な場所に押し付けようと腰を浮かせる。


「やめろ……、やめろおおおぉぉぉっ!!」


 男がニヤリと笑い、ヒイロを見る目と視線が合った瞬間、ヒイロの全身を怒りが支配した。


 やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロ……っ!!!!


 ―マタ、目ノ前デ半身ヲ奪ワレテナルモノカ―


 昂った感情のままに再度怒りの声を上げる。


「アカから、離れろおおおおっ!!!!」


 その叫びと共に、ヒイロの口から緋色の炎が吐き出される。ゴウっ! という音と共に炎が男に迫る。


「なっ!?」


 完全に油断していた男は、為す術もなく一瞬で炎に全身を包まれた。

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