48 「ストリートダンサー」
こんにちは。
さっそくですが、今回ご紹介するインド映画はこちら!
〇「ストリートダンサー」(原題「Street Dancer 3D」)
2020年製作
監督:レモ・デソウザ
主演:バルン・ダワン / シュラッダー・カプール
音楽:サチン・ジガル / タニシュク・バーグチー / バードシャー
インド・ヒンディー語 142分
こちらは、ほかの映画を観に行くたびに何度も素晴らしいダンスシーンで予告されていたため、「もうゼッタイ観る!」と心に決めていた映画のひとつ。
チラ見せのダンスシーンだけでもビックリなのですが、本当に本編はもうどこも目を離すところなんかない! ずっと見せ場! な素晴らしい出来となっていました。もちろん音楽も素晴らしい。
ということで、いつものようにネタバレをなんとか回避しつつストーリーのさわりをご紹介しましょう。
舞台はイギリス・ロンドン。
パンフレットでもいろいろと説明されていてようやく理解したのですが、イギリスには旧植民地から移住したさまざまなルーツをもつ人々が暮らしているとのこと。そのうち、インド系が3.1%、パキスタン系住民が2.7%。
主人公はロンドンに暮らすインド系の青年サヘージ(ヴァルン・ダワン)。尊敬する兄、インデルは、かつてダンスコンペティション「グラウンド・ゼロ」に出演した際に大けがをしてしまい、いま現在はリハビリに専念していました。
そんな兄のため、彼がダンス教室が開けるようにと、サヘージは大金をかけて援助したのでした。
「そんな大金どうしたんだ」といぶかる兄。サヘージは「ちょっと掛けに勝って大金が手に入ったんだ」と説明していたのでしたが……。
やがて兄の「グラウンド・ゼロでトップをとるという夢が果たせていない」という言葉を聞いて、サヘージもそれを目指そうと奮起します。
実はサヘージは仲間とともに「ストリート・ダンサー」というダンスグループを作っていました。インド系のかれらと、パキスタン系のダンスグループ「ルール・ブレイカーズ」は犬猿の仲。「ルール・ブレイカーズ」を率いていたのが、エエとこのお嬢様でもある凄いダンサーの女性、イナーヤト(シュラッダー・カプール)でした。
このイナーヤトにも実は色々ありまして、人前で肌を露出させて踊ることに、信心深い家族からは大反対されています。家族にその事実を隠して、イナーヤトはこっそりと踊り続けていたのでした。
ことあるごとに衝突し、ダンスバトルを繰り広げる両グループ。ついにある日、とあるカフェでひどい騒ぎを起こしてしまいます。
実はこのとき、勢いに乗ってつい店の料理やドーナツなどをめちゃくちゃに投げつけあい、大量に床に落としてムダにする……というシーンが出てきます。
日本人の感覚としてはどうしても「ええ……? 食べ物を粗末にするなんて(汗)」みたいになっちゃうわけですが、これは当然、伏線。しかも重大な意味をもつ伏線となっていくのです!
実はイギリスに暮らすインド・パキスタン系の住民たちの中には、非常に貧しくてホームレスになってしまっていたり、だまされて故郷から連れてこられた挙げ句に不法滞在のかどで警察に追われたりしている人がいるそうで。
激しいダンスバトルが中心になっているかと思いきや、実はこうした実際に存在する社会問題についてもしっかりと向き合う内容になっていくのがとてもよかったのです。
正直、最初のうちはめっちゃチョーシこいてるし、なんか言うたらすぐにイキり散らかすし、悪意こそないけどペロペロと嘘はつくしな主人公、サヘージにあまりいい感情が起こらなかったのですが、彼はもう、その後、いろんな事実を知っていってものすごい成長を遂げていくのです。そこが見どころというか。その気持ちの動きがみんなのダンスに熱としてしっかり乗っていて、あちこち本気で涙してしまう……!
なにより、作品全体を貫いている「お前はなんのために踊るのか」というテーマがぐっと胸に迫ってくるのです……!
今回この映画を知ったことで私もはじめて「コリオグラファー」という職業の名前を知ったのですが、つまりこれは要するに「振付師」のことらしい。
この映画で最もすばらしいダンスを見せているプラブデーヴァーさん(実はみんなが暴れまくったカフェのオーナーの役!)は、世界的にも有名なダンサーでありコリオグラファーであり、そして俳優でもあるという方。「インドのマイケル・ジャクソン」という異名までもつという凄い人。
また、デソウザ監督もコリオグラファーとしての仕事もなさっているそうで。そらそうか……!
ちなみにヒロイン・イナーヤトのシュラッダー・カプールさんは、「サーホー」でプラバーシュさんと共演された女優さん。なるほど「みたことある、この人!」と思ったわけですな(でも、いろいろ見すぎちゃっててもう、すぐにはどの作品だったかわかんないけど・苦笑)。
ということで、こちらも本当に超・感動モノの作品でしたので、ダンスが特に好きでないとおっしゃる方も、食わず嫌いせずにご覧になってみられたらどうかなあ……なんて思いました。ほんとインドの俳優さんたちって多才ですよね。毎回びっくりや……。
ではでは、ドスティ!