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41 「ヴィクラムとヴェーダー」タミル語版

 

 こんにちは。今日ご紹介するインド映画のタイトルはこれ!


 〇「ヴィクラムとヴェーダー」(原題「VIKRAM VEDHA」)

 2017年製作

 プシュカル&ガーヤトリ監督・脚本作品

 インド・タミル語 141分

 R・マーダヴァン、ヴィジャイ・セードゥパティ 主演


 実はこちら作品は、後年ヒンディー語でリメイクされたものがあり、今回は幸いにして、そちらも見比べることができました。そちらについては次回に譲ります。

 先にお二人の監督についてお話ししておきますと、プシュカルさんとガーヤトリさんはご夫婦なんだそうで。お二人は大学時代からともに仕事をはじめ、アメリカで映画製作の修士号を取得。観た後で知ったのですが、ご夫婦で監督をなさるってすごく珍しいパターンだなあと驚きました。


 アクションはもちろんですがお話はいわゆる犯罪サスペンスでありミステリー仕立て。ストーリーが非常によくできた脚本でして、本当に情報量が多い! あっちこっちに潜められた伏線につぐ伏線で、「あっ、そうだったのか」「なるほど!」と驚くシーンがしばしば登場し、ダレるところなどひとつもない構成で本当にすばらしいのです。


 ということで、簡単にストーリーをご紹介。

 とはいえ、あんまり言いすぎるとすぐネタバレになりそうで怖いぐらい。そのぐらいネタバレ注意! な作品でもあります。


 チェンナイの警視ヴィクラムは非常に腕の立つ、そして頭も切れる男。にはびこるギャング組織を追っているのですが、そのボス格であるヴェーダにはなかなか迫ることができずにいます。

 彼を追い詰めるためには正攻法でやっていたのでは追いつかず、ヴィクラムは容疑者の逮捕よりも犯罪の撲滅をめざして、つぎつぎに「偽装襲撃」(エンカウンター・キリング)をやっていました。

 偽装襲撃というのは、司法によらず、警察が正当防衛を理由に容疑者をその場で殺害することを言うそうです。

 殺した容疑者が丸腰だったことがわかると、ヴィクラムは犯罪者から押収していた拳銃の指紋をふきとり、死体に握らせ、さも「そいつが発砲してきたから撃った。正当防衛だ」と主張できるように偽装さえしています。

「え? 警察がそんなことしちゃっていいの??」って思いますよね。

 でもヴィクラムの中ではそれは「正義」で通ってしまっていました。「相手は犯罪者だ。悪なんだ。悪い奴を殺しているだけなんだから、(多少汚いことをしたって)自分は正義だ」と信じて疑わなかったわけです。


 ところがある日、その当のヴェーダが警察署に現れて自首してきます。

 ほかの警察官には黙秘を貫いていたヴェーダでしたが、ヴィクラムが現れると急にしゃべりはじめます。ここからも何度かこういう場面があるのですが、それは大体「この場合、あんたはどう思う? どちらが正しい?」といったような問答形式。

 それを繰り返されているうちに、次第にヴィクラムの気持ちの中で「正義とは、悪とは?」という悩みがどんどん大きくなっていき……。

 やがて、調べていくうちにとんでもない真実がつぎつぎ明らかになっていって、ヴィクラムは揺れに揺れ、苦悩することになってしまうのでした。

 それを見ながら、観客もヴィクラムと一緒に「正義とは? 悪とは……?」と考えざるを得なくなる。本当にもう、めっちゃめちゃよくできた構成です。


 ……はあ、このぐらいならなんとかネタバレにはならないかしらん。ちょっとドキドキ(苦笑)。


 インド映画ではしばしばあることなんですが、この物語もまたインドの古い説話集「屍鬼二十五話」をなぞっているのだそうな。

「屍鬼二十五話」は、死体にとりついたヴェーターラが、トリヴィクラマセーナ王に聞かせる二十五話のお話で、各話の最後にヴェーターラが問答を仕掛け、トリヴィクラマセーナ王がそれに答えるという形式だそうで。

 この映画の冒頭が、ちょうどそれを表現したちょっと可愛い感じのアニメになっているのです。


 最後に、俳優さんに関して少しご紹介を。

 主役はお二人なわけですが、まず警官ヴィクラムを「きっと、うまくいく」にご出演されたR・マーダヴァンさんが、そしてヴェーダを「マスター 先生が来る!」や「サイラー」にご出演されたヴィジャイ・セードゥパティさんがそれぞれ演じてらっしゃいます。

 まあすごいよ。

 ほんと、ふたりとも凄い存在感だしガチンコ勝負だし。


 実はわたくしR・マーダヴァンさんが「きっと、うまくいく」に出演されていたという情報を知って「え、誰が? どの人を演じてたの、この人? え???」って、映画を最後まで観てもさっぱりわかんなくて。

「きっと、うまくいく」では、ちょっと気弱で成績も悪い、自信のもてない青年役をなさっていたので、今回の肉体派でガンコな警官役とは役柄からしてまったく違っていたのですね。

 あんなのわかるわけない。いやほんと、役者さんってすごいです。


 ヴィジャイ・セードゥパティさんに至ってはもう言わずもがなというか、とにかく存在感と圧がすごい。今回は仲間の(要するに悪いやつらの)男性のみんなとわちゃわちゃ踊るダンスシーンがあるのですが、まーむくつけき暑苦しいシーンです。

 女性がほぼいなくて、狭いとこで、みっしり腹回りに肉がついたヒゲのおっちゃんたちが「うおおおおお!」って踊りまくるんですよ、ほんま楽しい。おすすめ(笑)。

 ヴィジャイ・セードゥパティさんは悪役をやらせると本当に怖いのですが、一方で身内に対する深い愛を表現するのも非常にうまくて、ついつい感情移入してしまう。がっちりした体形で、背中から見てるとなんだか「クマさん」みたいでちょっと可愛かったりするし、本当に魅力的な役者さんです。


 というわけでもうぜひぜひ、観てほしい作品です。

 できればこの後のヒンディー版とも見比べてほしいな~!

 ということで、次はヒンディー版ね!

 ではでは、ドスティ!


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