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19 「響け! 情熱のムリダンガム」


 はいこんにちは~。

 このところずっと「シネ・リーブル神戸」さんのインド映画祭り関連の作品をご紹介していたのですが、今回はそこからほど近いところにある「元町映画館」さんが開催してくださった上映会から。こちらの映画館も、最近になってようやく「RRR」の上映が始められることになったそうで、喜ばしい限りです。


 さてさて。

 「響け! 情熱のムリダンガム」は2018年のインド映画。

 ラージーブ・メーナン監督、脚本。132分。タミル語。


 音楽がテーマの作品なだけに楽曲が本当に素晴らしいのですが、音楽担当は「スラムドッグ$ミリオネア」でアカデミー作曲賞を受賞したA・R・ラフマーン氏です。

 そしてなんと、主役ピーターを務めたG・V・プラカーシュ・クマールさんはこのラフマーン氏の甥。クマールさん自身、映画音楽の作曲家としても知られているという凄まじい才能の持ち主です。


 「響け! 情熱のムリダンガム」は日本では当初「世界はリズムで満ちている」という邦題をつけられて2018年・第31回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門にて上映されました。

 その後、この映画に惚れこんだという南インド料理店「なんどり」さんが配給して2022年10月に「響け! 情熱のムリダンガム」として公開されました。


 ではネタバレ抜きで内容のご紹介をば。

 インド・タミルナードゥ州都チェンナイに住む学生の青年、ピーターは、映画スター・ヴィジャイの熱烈なファン。悪友たちとつるんで、日々彼のための推し活(笑)に余念のない毎日をすごしています。

 南インド伝統音楽(カルナータカ音楽)のための打楽器ムリダンガムを作る職人である父親と、街でスープを売る母親との間に生まれたひとり息子である彼は、大学でいい成績をとり、いい仕事につくことを望まれていました。


 ところがピーター、推し活以外にはてんで無関心でヤル気がない。試験を適当にやっつけて、推し活パーティに出て行きみんなと大騒ぎして歌い踊る始末。両親はそんな彼にお手上げの状態でした(このあたり、同じオタクとしてあんまり他人事じゃないですね・苦笑)。


 ある日、ピーターはひょんなことから父親が作ったムリダンガムを購入してくれているムリダンガム奏者の巨匠・ヴェンブ・アイヤルの演奏を間近で聴き、その魅力にとりつかれてしまいます。

 どうにかしてアイヤルの弟子になりたいと、彼の家に日参する日々。しかし、カーストの低いピーターにはムリダンガムを演奏する資格がありませんでした。


 カースト! ここでも若者の前に立ちはだかるのはカーストです。

 「高尚な」仕事であるムリダンガム奏者はカーストの高い者しかなれず、ピーターたちはその楽器を作る職人にしかなれないというのです。ひっどい話ですよね……。ほんま理不尽というか。


 ですが、それでもピーターはあきらめない。

 必死で頼み込み、遂にそのすばらしいリズム感がアイヤルの目に留まって、晴れて弟子にしてもらえます。大学をいい成績で出てくれることを期待していた両親はがっかり。もちろん奏者になることにも大反対です。でもピーターはめげない。というか、とにかくムリダンガムが演奏したいんだ、したいんだっていう熱い情熱! ひたすらにそれで演奏の練習に打ち込みます。

 ピーターが入門したことで、ずっと反対していた兄弟子マニは破門され、その後ずーっとピーターの邪魔をする存在に。この男はその後、妹のつてもあってテレビ局に入ります。


 ところでこのアイヤル師匠がめっちゃめちゃ頭の固い人。真面目で古典音楽の基本とその伝承、芸術性をとにかく大事にしており、「テレビ番組の出演なんてもってのほか!」という方です。もちろん弟子たちがテレビ出演することなんて許さない。

 ところがピーターの同僚でもある若い兄弟子がテレビに誘われて、ピーターもそれに巻き込まれてしまう。

 兄弟子本人はなんだかんだ出演をやめて逃げてしまうんですが、ピーターは「え、なんで俺だけ?」と思いつつ、あれよあれよと思う間に出演してしまうことに。しかもそこで例の破門された兄弟子マニに侮辱され、激昂して暴力事件を起こしてしまう……。


 もちろん師匠は大激怒です。

 ピーターは破門され、泣き崩れ、失意のうちに街をさまようことに。

 その後、恋人で看護師のサラのもとに転がり込んでみたり、悪友たちとだらけてみたりといろいろあるのですが「自然の音もなにもかも、世界中が音楽に満ちている(意訳です)」という彼女のひと言で覚醒。

 もとのタイトルのとおりですね。世界はリズムで満ちている。

 それを自分の体で確かめるべく、ピーターは各地の伝統音楽に触れるひとり旅にでかけます。


 つらく頑強なカーストの壁、尊敬する師匠との軋轢、兄弟子からの嫉妬からくるいやがらせなどなどがありつつも、自分の情熱に素直にひたむきに進んでいくピーターを応援できない人なんて恐らくいないでしょう。

 ラストはまことに感動的。温かく嬉しい涙で震える。

 ぜひぜひ、一度ごらんになってみてくださいませ。ほんとオススメ!


 ドスティ!


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