10月23日 実家
今日も、文化祭の練習のため、放課後に残っていた。今日は、合唱だった。アルトとソプラノに別れて、声を揃えていた。クラスには、仲がいい子がいないため、リーダーの言いなりになっている。私もどこかで楽しめたら、どんなによかっただろうか?そんなことを自問自答していた。
ー10月20日ー
私たちは、駅に着くと5分後にくる電車を待っていた。
私 「翆は、福島に行くことあるの?」
翆 「ないよ。もう、引っ越したしね」
翆は、福島に祖父母の家はないらしい。
私 「そっかぁ」
翆 「深雪は、あるの?」
私 「まだ、おばあちゃんの家があってね。今度行かないか?って母に言われてるんだよ」
引っ越す前までは、両親と祖父母で暮らしていた。
翆 「そうなんだ。行くの?」
私 「うーん。迷ってる。行ってもさ懐かしくなるだけだからね」
長野のことを思い出した。
翆 「どういうこと?」
私 「長野に帰ってさ、長野がいいなって思うのってなんか悲しくなるのよね」
母に誘われた時に、即答できない理由がこれだった。
翆 「でも、昔をふりかえることも大事じゃない?」
私 「そうかな?」
翆 「そうだよ。帰ってみたら何か気づくこともあるんじゃない?」
電車がホームにやってきた。
私 「うーん」
翆 「あっ、そうだ。二人に会ってきたらいいじゃない?」
私 「そんなの絶対無理だよ」
翆 「帰ってさ、居場所作ってきなよ」
居場所かぁ。自分の落ち着けるところなんて早々見つからないだろうな。そうこうしていると、電車が来たので、私たちは乗車した。
私 「翆って、今楽しいの?」
翆 「楽しいかわかんないな」
これが模範的な10代の回答だろう。
私 「どういう時が楽しいと感じるの?」
翆 「やっぱり絵を描いてる時かな」
翆は、中高と美術部で絵を描くのが大好きだった。
私 「絵を描いてる時ってどんな気持ちなの?」
翆 「なんか、ワクワク感が凄くて、早く描きたいって気持ちになるな」
私 「そうなんだ」
翆 「そうなのよ。あのワクワク感は、何にも変えられないよ」
翠は、とても楽しそうにしていた。
私 「翆は、楽しいものがあるからいいね」
翆 「深雪はないの?」
私 「楽しいものねー。なかなかいな」
そう話したところで、到着の音が鳴った。