11月20日 強敵
これ以上、動かない。あの時、私はそう感じた。なぜか、また9年前のことを思い出してしまっていた。
ー9年前ー
打席に入った私は、マウンド上の夢木を見つめた。この細いバットであんなに大きなボールを遠くに飛ばせるのだろうか。ストライク!!初球は、ど真ん中にボールがきた。めちゃくちゃボールが早いわけではない。でも、ボールを打てる自信はない。
ピッチャーの夢木は、体をひねり、第二球目を投げこんだ。私は、ボールに合わせてバットを出した。しかし、バットはボールの上を通っていく。ストライク!!!!。キャッチャーミットに入っていくとともに、審判の声が聞こえてきた。
私は、首を傾げながら、再びバットを元の位置に戻す。こんなボール、小学生が打てるのか?いつの間にか自信を完全になくしてしまっていた。それでも、打たないと。再び、自信をもって夢木を見つめた。
今度は、速いストレートがくるのか?それとも遅いチェンジアップがくるのか?私は、頭を働かせながら、ピッチャーの夢木を見た。夢木は、とてもまっすぐな眼差しで私の方を見てくる。夢木の視線の先には、何が映っているのだろうか?
夢木の腕から放たれた第三球目は、遅いチェンジアップだ。バットとボールはかなりの差が開いていた。バットは、私の背中までまとわりついてもどってきた。私の体もひねり戻っていくみたいだった。
私は、バットを持ちながら、ベンチへと戻っていく。みんなは、ポジションについていく。私は、ヘルメットをとり、バットを置いた。監督は、私の方を見てきた。
監督「頑張れよ!」
私 「はい」
私は、グローブをとり、監督の方を見た。監督は、髭をはやし、帽子を被りながら散らばっていく選手たちを見ながら話していた。
監督「ストレート中心に投げていけよ」
私 「チェンジアップはやめた方がいいですか?」
チェンジアップを投げるには、ストレートがきっちり投げきれないと。簡単に打たれてしまう。
監督「相手は、永利市のチームなんだから、どちらのボールも簡単に打たれるから」
たしかに、監督の言う通りだ。どうせ、私たちが相手チームに勝てるはずないとみんなも思っているはず。だったら、私たちもやれるだけのことはしてみないと。
私 「わかりました。ストレート中心でいきます」
そう言って、私はピッチャーマウンドに向かって走り出した。




