11月14日 特別
昨日のデートは、とても楽しかったようだ。いつもより、笑顔の多い翆を見ていると、なんだか嬉しかった。いつものように、放課後、私たちは集まっていたのだ。
私 「そんなに楽しかったんだ?」
翆 「うん。私は、ずっと緊張してたけどね」
たしかに、翆の緊張は、文字からも伝わっていた。
私 「付き合ってなかったら、もっと楽しめたんじゃない?」
翆 「まぁね。でも、欲張りすぎてもね」
翆が昨日会った遠山くんには、彼女がいる。その彼女である歳内という人がずっと気になっていた。まぁ、考えてもどんな人なのかすらわからないのだけど。
私 「私には、わからない世界かもね」
翆 「だって、深雪は、近場にはいないんでしょ?」
私たちは、引っ越し組だし、東京のことは詳しくわからない。都会ならではのというのもよく聞く。引っ越してなかったら、と思う時もよくあった。
私 「何が?」
翆 「好きな人だよ」
私の好きな人。そんな人はいない。この前は、昔、一緒だった宝来くんや世田くんをあげたけど、もう彼らとは何年も会っていない。どういう人かすらわからない状態なのだ。
私 「ああ。全然だね」
翆 「もったいないから、作ったら?」
作るってなんだよ、作るって。心の声が出そうになった。そもそも、私には恋愛なんて向いていないのかもしれない。まともに恋愛したことがない、私が語ることではないのかもしれないけど。
私 「なんでよ」
翆 「だって、もうすぐ終わってしまうんだよ。いいの?」
たしかに、翆の言う通りだ。後、4ヶ月ほどで終わってしまう。でも、それとこれとは話が違う気もした。
私 「いいよ、別に」
翆 「えー、もったいないな」
私たちは、チャイムの合図とともに、帰る準備を始めた。たしかに、こうした高校生活はいつまでも続くわけではない。
私 「なによ、それ」
翆 「深雪のクラスだったら、若竹くんとか佐奈田くんとかかな?」
若竹純。彼は、引退するまで野球部のエースだった。佐奈田とともに、クラスの人気者だった。そして、もう1人が佐奈田一暉。佐奈田は、ラグビー部キャプテンで生徒会長もこなしていた。成績優秀で、すでに大学も決まっていた。
しかし、二人のことは全く興味がない。眼中にすら入っていなかった。二人とも、ただ人気というだけで、宝来くんや世田くんみたいに何か特別なものをもっているようには感じなかったのだ。




