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第四話『平穏の終わり』

「まだ、起きていたんですか」


 呆れるような、微笑むような声が響く。

 真っ暗な部屋を照らすランプの光が、その声の正体を確認させると、私は手紙を机に置いた。


「ああ。和平の方の話も進めないといけないからな」


「……やはり、難しいですか」


「ああ。この手紙を見てみろ」


 私は一枚の手紙を差し出す。

 それに対する答えを考える時間は、ハインリヒには必要なかった。


「……白紙、ですか」


「話にならないということだろう。やっぱり、厳しいな」


 フレイヤが来ても、和平交渉は未だ厳しい状況のままだ。

 一刻も早く進めたい話ではあるのだが、出向いて話をするわけにもいかない自分が、歯痒かった。


「魔族の差別問題もあります。事は急を要する訳ですが、相手側がこの態度だと、難しいものがありますね」


「そうだな、本当に難しい。切れるカードは全て切ったと言うのにな」


 こちらとしては、和平の条件として土地を差し出す覚悟だった。

 それで救える命があるのなら、と。


 しかし、これは交渉のカード足りえない。

 もし我々の土地が欲しいのなら、我々を殺して支配すれば良い話で、相手側もそれを分かっているのだろう。


「……先日、奴隷となった魔族を見ました」


「……」


「その魔族は、まだ幼かった。齢にして、十にさえ達していなかったでしょう。その魔族は……弓矢の的にされていました」


 奥の歯を噛み締める。

 こんな出来事など、珍しくもない事実と、悪戯にその魔族の命が奪われてしまった二つの事実に。


「赤子を殺させられた魔族もいます。毒の実験台にされた魔族も。殺し合いをさせられた魔族も。……大勢、います」


「……ああ」


「魔王様」


 こちらを見つめる彼の表情。

 それは、真剣そのものだった。


「和平、必ず成しましょうね」


「勿論だ」


 これ以上、命を奪われていいはずがない。

 魔族と言うだけで、未来を奪われるのはやはり間違っている。

 考えに耽っていると、ハインリヒが「おや?」と呟くと、扉の外へと出て行く。

 私はそんな彼を追うようにして扉を開けると、


「おかえりなさい、フレイヤさん」


 扉の向こうにいるハインリヒが、扉の向こうにいる少女の名を呼ぶ。

 同時に、二人がどのような話をしているのかという好奇心にもくすぐられ、私は扉を少しだけ開け、様子を見る事にした。


「魔王様は今お取り込み中のため、要件であれば私が」


「えっと、ハインリヒさん……ですよね?」


「はい。どうかされましたか?」


「……えっと、昼間と随分様子が違って見えるので」


「ちょっとしたコリがほぐれましたので」


「コリ、ですか」


 ええ、と微笑むハインリヒ。

 その表情が、今のハインリヒがフレイヤを襲うことはないだろう、と私を確信させる。

 フレイヤは小首を傾げた後、少し考え込むようなそぶりを見せると、重々しく口を開く。


「……ハインリヒさん、私実は……」


「人間ですよね」


「えっ、知ってたんですか?」


 驚き、声が出そうになるのを必死で抑える。


「ええ、まあ。あの程度の魔法を見破れないような出来の悪い魔族ではないので」


「でも、何で……知っていたのなら、どうして私を追い払ったりしなかったんですか?」


「……さあ。考えられるとしたら、昔の知り合いによく似た人がいた、からですかね」


 彼はそう告げた後、話を戻すように咳払いをする。

 そして、真剣な顔で述べた。


「あなたが懸念しているその可能性は、既に私も考慮しております」


「……それを伝えたら、ソフィアに嫌われちゃうでしょうか?」


「それはないかと。あのお方はまさしくお人好しですから。しかも、自分が損をしていることに気付いてないタイプの」


「そう、ですよね」


 盗み聞きしている以上反論は出来ないが、散々な評価に若干心が痛む。

 私としては、自分のわがままを通しているだけなのだが。


「やっぱり、私は……」


「それ以上、口にされない方がよろしいかと。この事態について、あなた様が責められるいわれはありません」


「……ハインリヒさんは、どうするべきだと思いますか?」


「とりあえずは、私にお任せください……といっても、今は私は和平賛成派の身。恐らく、私に協力してくれる者は一握りしかいないでしょうが」


「……一握り」


 考慮している可能性、とは何だろうか。

 それを聞こうとするが、盗み聞きをしていた事実を指摘された際に言い訳が出来ないため、ドアノブから手を離す。


「しかし、ゼロではありませんでしたよ。和平反対派の影に隠れて、賛成のものも多くは無いですがいました。……全員から嫌われることの難しさが窺い知れますね」


「……そうですね。でも、なんか……ソフィアのことを理解してくれてたって人がいる気がして、少し嬉しいです」


「言えた立場ではありませんが……私もです。とりあえず、あなたもお疲れでしょう。後のことは我々に任せ、お休みください」


 彼はそれだけ言うと、二人は扉から見えない位置に移動していった。


 ◆



「ふあ……ぁ……」


 あくびを噛み殺しながら、私は寝ぼけ目を擦り、近くの椅子に座る。

 昨日は色々なことがあった。本当に、色々なことが。


 扉を開けて顔を洗いに向かうと、扉の隣に濡れたタオルを持ったハインリヒが立っていた。

 そのタオルを受け取り、顔を上げる。


「……なんだか、慣れないな。お前に部下っぽいことをされるのは」


「お互い様ですよ。私だって魔王様に尽くすことになるとは思っていませんでしたから」


「はは、そうか。だけどな……頼りにはしているぞ」


「それこそ、お互い様です」


 私は顔を拭いたタオルを彼に返し、隣の客間の扉をノックする。

 しばらく間が空いた後、「はぁい」となんとも気の抜けた眠そうな声が聞こえた。


「ソフィアだ。眠っていたところ悪いが、話し合いたいことがあるんだ」


「……話し合いたいこと、ですかぁ?」


「ああ。朝食をとりながらな」


「んぅ……わかりましたぁ。じゃあ、あと少ししたら、行きます、から……」


 それきり、物音ひとつ立てなくなるフレイヤ。

 眠そうな声を最後に聞いたため、私の行き着く答えは。


「これ寝てるな」


「確実に寝てますね。どうしましょうか」


「朝飯が冷めたら勿体ない。私に合鍵を渡せ。少し魔王の威厳とやらを見せつけてやる」


「お手柔らかにどうぞ。私は下で待ってます」


 心なしか呆れているハインリヒから鍵を受け取ると、そのまま客間の扉を開け放つ。

 白いベッドの中には、体を預け目を閉じているフレイヤの姿があった。


 私はそんな彼女のベッドに忍び込み……、


「隙ありっ!」


「……えっ、ちょっと! あはははは!」


 思い切り、脇をくすぐる。

 部屋に大きな笑い声が響き、目を丸くしながらもこちらを見るフレイヤ。


「勇者ともあろう者が魔王の城でのんきに居眠りとは。覚悟するが良い!」


「くすぐったい! くすぐったいから、やめて! あはははは!」


 彼女のやめて、という制止に従い両腕の動きを止める。

 ハアハアと息を整えながらこちらを睨むフレイヤに対し、私は勝ち誇ったような笑みを返す。


「おはようフレイヤ。良い夢を見れたか?」


「見れましたよ。最悪な目覚めでしたけどね。もうソフィアとは口聞いてあげません」


「……ごめん、魔が刺したんだ。許してくれ」


「いたずら魔王なんて嫌いです。もう一日中口聞いてあげません」


 彼女は腕を組み、そっぽをむく。

 ……流石にやりすぎたか、と心の中で反省する。


「とりあえず、朝食を食べに行かないか? 冷めると勿体無いぞ」


「……わかりました。でも席は離して食べます」


「ああ。今日もよろしくな、フレイヤ」




 朝食のパンを頬張ると、隣に立っているハインリヒが唐突に口を開く。


「魔王様、本日のご予定は?」


「……んー、特にこれと言って。とりあえず、昨日の爺さんに例の女のことを聞きにいくかな」


「それでしたら、本日は私は同行できません。仕事が残っていますので」


「珍しいな、お前が仕事に追われるなんて。だけどそう言う事情なら仕方がないよな、フレイヤ」


 私のことを無視して、モグモグとご飯を食べ続けるフレイヤ。

 その様子を見ていたハインリヒは、横目で私を見ると、


「何かあったのですか?」


「まあ、色々と。謝ってはいるんだがな。まあいつか機嫌を直してくれるだろう」


「そうですか。それで、話は戻りますが……大変申し訳ないのですが、魔王様には引き続きその女性の捜索をお願いしたいのです」


 ハインリヒはそう言うが、彼自身護衛に同行できないと先程言っていた。

 その状況で我々に捜索を続けさせようとする彼の様子は、まるで……、


「なんだか、それを理由にまるで城から追い出そうとしてるみたいだぞ、それ」


「……さて、なんのことやら。安心してください、ちゃんと夕飯は用意する予定ですから」


「わかったよ。つまりは、私がこの城に残ると不都合があるということだろう?」


「ご賢察ありがとうございます」


 うやうやしく頭を下げるハインリヒ。

 だが、私抜きで何をしようとしているのかだけは把握しておきたい。


「だが、私にいられると困る仕事って何だ? 書類とかなら、私も……」


「いえ、さまつ事のため魔王様の手を煩わせるわけにはいきません。仕事の内容としては……害虫駆除、といったところでしょうか」


「虫? この城に虫なんていたのか?」


「ええ。この城も建てられて長いですから」


 確かに、彼の言う通りこの城の歴史は長い。

 私の曾祖父から代々受け継がれてきたもののため、虫が湧いていたとしても不思議ではない。


 だがそれ以上に。


「……覚悟はしてたけど、結構ショックだな。立て直しをしようにも、野宿をする訳にもいかない。どうしたものか」


「ですので、我々が害虫駆除を行う手筈となっております……ひとつお聞きしますが、参加しますか?」


「いや、結構。遠慮する。というか無理。虫とか本当に勘弁願いたい」


 出来るのであれば、そういうものは一度も目にすることなく生きていきたい。

 そんな考えよりも、今は聞きたいことがあった。


「フレイヤ、ハインリヒ。昨日のよ、じゃなくて、なんだ、その……」


「歯切れが悪いですけど、なんでしょうか?」


「……私に隠していることはないか?」


 信じられないものを見たという表情でこちらを見るフレイヤ。

 反対に、悠然とした態度で首を振るハインリヒ。


「隠し事など誰にでもあるでしょう。それを態々あなたに言う必要が?」


 うんうん、とハインリヒの考えに同意するフレイヤ。

 その二人に強固な意志を感じ取り、これ以上の追求は無理だなとため息をつく。

 それに、私に知らせるべき事かどうかと言う判断をハインリヒが誤るとは思えない。


「……わかった。そういうことにしておこう」


「お心遣い、痛み入ります」


 うやうやしく頭を下げるハインリヒ。

 それから私たちは食事を終えると、ハインリヒから追い出されるように城を後にした。



 ◆



 街に向かう道すがら、私の隣を歩くフレイヤが、ちらちらとこちらに視線を向けているのに気付く。

 朝の事を気にしているのだろう、と思い安心させるように微笑むが、彼女はそんな私から視線を逸らす。


「……フレイヤ?」


「は、はい」


「今日は随分と元気がないな。朝私を怒鳴りつけた元気をかけらでも見せてくれるとありがたいのだが」


 冗談めかしていうが、彼女の表情は暗い。

 その表情の根源の理由が、昨日の夜の隠し事だというのは理解が及ぶのだが、その理由が分からずじまいである以上、何と声をかけようか。


 彼女を元気付ける一言を考えていると、街が見えてくる。

 その入り口に立っているのは……。


「……なんだ、あれは」


 ゆうに数百はいるであろう、鎧に身を纏った兵士達。

 いずれもが、馬に乗り点呼をとっていた。

 その様子は、まるで……。


「戦争でも始めるのか?」


 咄嗟に木々に体を隠し、様子を伺う。

 人間は人間同士でも戦争を行うと聞いたことがあるが、彼らの馬の首が向いている方向には、私の城しかない。

 それに気付いた時、嫌な想像が脳裏に浮かんだ。


「……まさか、城を攻め落とす気か?」


 だが、今は和平交渉中のはずだ。

 そんなことをすれば、その兵士達が世界から警戒されるのは目に見えている。

 相手が魔族とはいえ、平和を望んでいるものを背後から斬る者を、誰が信じられるというのか。


 だが、そんな私の考えに反して、後ろにいる少女は青い顔で、ふるふると震えながらつぶやいた。


「……私のせいです」


「は……?」


「私が、魔王の城にずっと居たから……」


「なにを、言っているんだ……?」


 フレイヤの言葉が、理解できない。

 そのとき、私の思考を中断するかのように、離れていても聞こえるほどの声量で、兵士たちの一人の声が響いた。


「これより、悪き魔王を討伐する!」


「……は?」


「口惜しくも、魔王の手によって我らが勇者の悲願は途絶えた。故に、我らは天に誓おう!」


 彼らは剣を天に掲げると――、


「勇者『フレイヤ』の、仇を取ると!」


 と、叫んだ。


 フレイヤの、仇を取る?

 ……なにを、言っているんだ? フレイヤはここにいる。

 それに、フレイヤの命など、私は奪っていない。


「……昨日、あの女性に言われたんです。私を勇者として派遣した理由が、これなのだと」


「ま、待ってくれ。一から説明してくれないか?」


 彼女はゆっくりと頷いたのちに、ささやくような声でこぼした。


「最初から、国王は私に期待などしていませんでした。私は魔王の元に勇者が赴いて、帰ってこない。その状況を作り出すために派遣されたんです」


「そんな、どうしてっ!」


「魔王に攻め入る口実を作るためですよ。……勇者を殺した魔王に、復讐する、と」


 彼女はそういうと、膝をついて目を瞑る。

 ぎゅっと、拳を震わせながら唇を噛み締めると。


「なにを……しているんだ?」


「……全部、私のせいです。あなたと友達になるなんて、そんなことを考えたから」


「ちがう……私は……」


「あなたの言う通り、私はあの日に帰るべきだったんです。だから、これは……私が招いた事態だから……」


 彼女は懐からナイフを取り出す。

 それを、喉元に向けると。


「待て……止めろ……」


「ハインリヒさんには任せろと言われましたけど……やっぱり、私は私が許せません」


 視線が定まらない。

 止めたい。しかし、何と言って止めれば良い?

 考えれば考えるほど、彼女のナイフが喉に近付いていく。


 そして、それは肌を貫き。

 真っ赤な涙のような血が、溢れ出ていた。


「……え?」


「……っ、あああぁぁぁっ!」


 痛い。

 私の手のひらが、熱く燃えるようだ。


「そんな、ソフィア、どうして……」


 私は手のひらを抑えながら、彼女に微笑む。

 といっても、痛みを抑えながらだからかなりぎこちないものになっていただろうが。


「……別に、私はお前を恨んでなどいないよ、フレイヤ」


「で、でも! 私は……」


「お前は、私を思って行動してくれたんだろ? それに、まだ勇者を倒せてはいない。ここで倒れられては困る」


 幽鬼めいた、という表現が似合うほどにゆっくりと立ち上がり、辺りを見る。

 既に先程の兵士たちは出発しており、辺りの草原には私たちしかいない。


「さて、この事態は何とかしなくてはな。戻るぞ、フレイヤ」


「……まだ、私はそばにいても良いんですか?」


「当たり前だ。お前がいなくては、あの仏頂面にイタズラをしかけなくてはならなくなる」


 その仏頂面にイタズラなど、考えただけで背筋が凍るし、恐らくつまらない反応しかされないだろう。


「フレイヤ、この事についてハインリヒは知っていたのか?」


「はい。昨日の夜お話ししたのですが、任せて欲しいとおっしゃっていただきました。でも……」


「協力してくれる人は少ないだろう、ということか」


 頷くフレイヤ。

 恐らく、昨日の夜話していたことはこの事だろう。私に嫌われるかもしれない、と言っていた理由も全て分かった。

 だが、この程度で嫌いになるわけがない、というハインリヒの推論もまた当たっていた。


「……癪だが、な」


「……ありがとうございます、ソフィア。私を、守ってくれて」


「気にするな。お互い様だよ、フレイヤ」


 確かに、私は彼女を守った。

 だがそれ以上に、彼女は私の心を救ってくれた。その対価としてなら、右腕くらいくれてやる。

 もちろん、こんな事は恥ずかしくて彼女には言えないが。


「……さて、行くぞ。これで終わりになんてさせてたまるか」



 ◆



 私たちが到着した頃には、数えきれないほどの魔族と人間が道の真ん中で争っている最中だった。

 剣を振り、爪を食い込ませ、お互いに血を浴びながら。

 怒声と、鉄の音を響かせながら。


「……っ」


 父が殺された時の記憶が蘇り、奥の歯を噛み潰す。

 しかし、今は個人的な感傷に浸っている場合ではない。一秒でも早く、城に戻らなくては。


 だが、その道も争いに巻き込まれ、自分の城に戻る道すら満足に歩くことができなくなってしまっていた。


「くそっ、なんとか巻き込まれずに城に戻れないか……?」


 城の正面には、大勢の魔族と人間。

 その時、背後から突然声をかけられた。


「知っているよ。あの場所を通らず城に戻れる道を」


 振り返ると、そこには以前出会った薄灰色の髪の女性が立っていた。

 あまりにも脈略のない人物の登場に、私は思わず後退る。


「なんで、お前が知っているんだ?」


「ごめん、それは言えない。だけど……嘘をついているつもりはないよ」


 彼女はそれだけ言うと、私の目を呆然と見る。

 まるで、瞳の奥底を見つめられているかのような感覚に襲われるが、首を振って答えた。


「……どちらにせよ、私たちに選択の余地はない」


「話が早くて助かるよ」


 彼女はそう言うと、手をこちらに差し出す。

 そして、微笑んだ。


「本当に、会えて嬉しかったよ。ソフィア……フレイヤ」


 私たちの周囲に光が舞う。

 それの正体を聞く事もなく、私は。私たちは。

 眩しい光に包まれて。


「……っ、ここは」


 気が付くと、私たちは玉座のある部屋にいた。

 天井は見えないほど高く、城のほとんどを占有している広さだが、私にはこの場所を父が討たれた場所ということもあり、どうしても好きにはなれなかった。


 しかし、それよりも。

 部屋の中心には血を流してボロボロのハインリヒと。


「……ぁ、な、で」


 恐怖で声が掠れる。


 そこには、あの日。

 魔王を、倒した。


「あぁ? なんだ、このガキは」


 忘れもしない。

 ボサボサの黒髪に、無精髭を生やした。


 勇者が、いた。

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