第4章~次の登山はどこに行くか
後日、基樹君が満足気に、
「次は、違う山を登頂しようぜ!」
と、言ってきました。
体育会系の進君は、
「そうだね、秋が終わる前にまたどっかの山に行こうか」
と、話に乗ってきました。
その時ぼくは、小学校時代に登山好きの先生が言っていた事を思い出しました。
「八ヶ岳の登頂の景色は最高だぞ!先生は何度も横岳に登ったんだぞ」
「でも、あの山は素人だと登頂は出来ないぞ!」
「何度か登山した奴がいたら、絶対に一回は行って欲しい山だよ」
と、授業の合間に力説していた事を…。
そこで、ぼくは基樹君と進君に、
「次は八ヶ岳なんてどうかな?登頂の景色は最高らしいよ」
と、言うと、進君は、
「八ヶ岳といえば赤岳だよね」
と、言いました。
「えっ!八ヶ岳って山があるんじゃないの?」
「違うよ、八ヶ岳は八ヶ岳連峰っていう20以上の峰が連なる山の総称だよ」
「そうなんだ」
「それで、どの山に行くつもり?」
「横岳ってどうかな?」
「いや、最初は赤岳の方がいいよ、初心者コースもあるからな」
「基樹君は、赤岳でもいい?」
「別にいいよ、そこにしようか」
「じゃあ、次は八ヶ岳連峰の最高峰の赤岳で決定だね」
と、いう話しになり、今秋に八ヶ岳に登山に行くことになりました。
そこで、基樹君が進君に言いました。
「また、亜沙美さんを誘ってくれないかな?」
「登山に詳しい人がいると頼りになるからね」
すると、進君は2つ返事で引き受けてくれました。
「でも、亜沙美さんと行く登山はスパルタ式だぞ、もっと付いて行かないと相手にされなくなるぞ」
「だけど、登頂するにはあのペースで行かないと無理って事だよね」
「それには、今まで以上に鍛えるしかないんじゃないかな」
「あとは、登山経験が豊富じゃないと登頂するのは難しいよね」
「確かに…、あの時亜沙美さんが持っていた酸素缶が無かったら、皆で登頂出来なかったよね」
「でも、次は彼女の都合がいい日程になるか分からないよ」
「それはそうだね、無理そうなら3人で行こうよ」
「こっちも何か揃える物があったら言ってよ」
「OK!それとまた帰りに日帰り温泉に行こうよ、前回は肘を擦りむいちゃって腕から上が浸かれなかったからね」
「じゃあ、サポーターも必要だね」
亜沙美さんとは連絡待ちでしたが、それから3週間後に八ヶ岳に登山に行く事になりました。
八ヶ岳に行く1週間前に、亜沙美から、
「是非、私も登山に参加させて下さい」
という返事を、進君が受けました。
山に行くには登山道迄の移動手段に苦労するので、登山者の車に同乗出来る機会があればとても有り難いとの事でした。
亜沙美さんは富士山を登頂した後、また登山がしたいな~と思いながら、山の本をずっと読んでいたのだそうです。
八ヶ岳登山に行く前日の夜に、皆で集合した時に亜沙美さんは、
「またお誘いしてもらって有り難うございます」
と、嬉しそうにお辞儀をしました。
「いえいえ、今回も帰りには日帰り温泉に入る予定だから」
「はい、それは聞いていますよ」
「前回は、帽子を持っていかなかったんで、凄く日焼けしちゃいましたよ」
「登山には日焼け止めと帽子は欠かせないのよね」
「でも、今回はちゃんと帽子を持ってきましたよ」
「両肘用サポーターもあるからね」
「じゃあ、今回は肩まで温泉に入れるんじゃないかしら」
「うん、そう願いたいよ」
「八ヶ岳連峰の山は登った事あるんですか?」
「いえ、まだ行った事がないんですよ」
「それじゃあ、今回は楽しみだったでしょう」
「ええ、それと八ヶ岳の麓は何本も道が分かれているから迷わないようにね」
「了解、じゃあそろそろ出発しようか」
皆は、ぼくの車に乗り込みました。
その行先きで見たのが、ぼくが将来に渡って忘れられない出来事になるのでした。